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カインド帝国の負の遺産

温泉を改良し、色々と使い勝手の良くなった温泉を堪能した梢。

マリアとレイヴンの会話を聞いて家に帰り、その翌日の夕方マリア達に叩き起こされた。

どうやら「聖女」がロランの母国ムーラン王国に現れ、イザベラと婚約破棄を迫っているとのことだった。

それが真実か確かめる為、梢はクロウとムーラン王国へ向かう──





「え、温泉に家族で入れるお風呂を作ったんですか?」

 村人さん達は驚いた顔をしていた。

「まぁ、こちらだと家族で入る風習があるか分からないので需要は定かじゃないですが」

「極東ならありました家族風呂!」

 一二三ちゃんが言う。

「ああ、コズエ様は極東出身ですものねぇ……」

「あーまぁ、そうです」

「他のお風呂とは違って家族で入るお風呂なので家族で入浴中は他の家族が入れないようにしてます。男女の風呂の応用です、やったのはクロウですが」

 男風呂には女は入れず、女風呂には男は入れずそういう風になっている。

 そういう仕組みをクロウが作ってくれた。

「有り難うございます、梢様! これでお父様と温泉入れます!」

「確かに村に悪い人はいないとはいえ、子ども一人を温泉にいれるのは親として不安だね」

「そういう文化もあるんですね」

 文化の違いがでるなぁ、まぁ仕方ない仕方ない。


 ただ温泉の家族風呂を利用する客は予想より多かった。

 小さな子を夫に任せるのが不安なママさん。

 王族でゆったり浸かりたいマリア様達。

 それから極東出身の善狐の皆さん。


 吸血鬼の皆さんには関係のない話なので吸血鬼の方々は除外。

 だって温泉(流れ水)だし。


 流石にアルトリウスさん達と家族風呂に入る勇気はまだない。

 それは伝えた。

 そもそもアルトリウスさん温泉苦手だし、ダンピールだから。


 私等が一緒にお風呂入るのは遠いだろうな。



 今は温泉の管理は善狐の方にお任せしている。

 本場だから掃除とかもやって来たらしく整備もお任せできる。



「ふぅ、久々の温泉すっきりしたぁ」

 やはり温泉はいいものだ、普通の吸血鬼じゃないから楽しめる。

 愛し子様々だよね!

 そんな事を思いながら歩いているとハイエルフさん達の居住区に来ていた。

 レイヴンさんとマリア様が会話中。

 何だろうと思っているとマリア様がこっちへ来た。

「やぁ、愛し子様。どうしたのだ?」

「マリア様がこっちまで来るのは珍しいですね」

「そうだな、ちょっと頼みたい事があってな」

「?」

「魔導器の作成を依頼したのだよ」

「なるほど、どんな?」

「映像と音声を遠距離と繋げられる魔導器をな。各国にあるのが古くなって使い物にならなくなりそうだからその前に新しいのに交換したいのだ」

「なるほど」

「古くなったのは引き取ってくれるようだしな」

「レイヴンさんの行商ってそういうこともやってるんだ」

「そうだぞ、知らなかったのか?」

 マリア様が驚く。

「気にしたこと無かったので……」

「信用しきっているというべきか信頼が厚いと言うべきか、それとも危機管理が抜けているというべきか……」

「あははは……」

 視線をそらし頬をかく。

「まぁ、レイヴンさんとは長いお付き合いなので信用してますし」

「なるほど」

「では私はお家に帰りますね」

「ああ、ではな」

 私は家に帰る事にした。



 翌日──

「愛し子様、大変なのだ! 起きてくれ!」

「んあ⁈」

 棺桶がたたかれる音に目を覚まして私は棺桶の蓋を明けた。

 すると血相を変えたマリア様と、泣きそうなイザベラちゃん、イザベラちゃんを慰めるロラン王子とどういうこっちゃという状況になっていた。

「ムーラン王国に稀代の聖女が現れたらしくその聖女の父である侯爵がイザベラとの婚約を破棄して娘と婚約させるよう迫っているらしい」

「えーなんか胡散臭い!」

 私の勘が働く。

 急に現れるなんてありえない!

 と。

 本当にそうなら神様が知らせるだろうし、そんな予兆無かったし。

「王家は何かうさんくささを感じているが妖精や精霊を使役しているところが何か怪しいとみているから愛し子様のお力を借りたいと」

 私は服を着替えてティリオさんが持ってきた濡れタオルで顔を拭く。

 そして髪をとかして、ローブを羽織る。

「マリア様、宜しければご同行を!」

「勿論だ!」

 私はクロウの家に向かうと既にクロウは準備していた。


『早くいくぞ』

「うん!」

「分かっております」


 マリア様とクロウの背中に乗り飛んで行く。



 一時間もしないうちに、赤い風車と城が目印見たくなっている都市に到着した。

 王宮の前で着地し、私はローブを脱いでアイテムボックスに入れる。

「マリア正妃殿下! ……こちらの御方はもしや⁈」

 兵士達が駆け寄ってくる。

「始祖の森の愛し子だ、神々の愛し子に見定めて貰おうではないか!」

「聖女と名乗る人物は何処に?」

「今は広間に居ます!」

「こちらです!」


 案内され、広間に到着する。

 クロウも人の姿になりついてきた。


 冠を被る二人の男女──王様とお妃様。


 そして豪奢な服装の娘と、壮年の男性。


 娘の右手首の辺りには黒い靄が見えた。

 何だろう。


 広間の視線が一斉に私達に注がれる。

「マリア正妃殿下! もしやそちらは神々の愛し子様ですか!」

「その通りだ、ムーラン王国の国王陛下」

「ねぇ、クロウ。あの女性の右手首辺りに黒い靄がかかっているんだけど──」


『愛し子様だ!』

『やった僕らは開放される!』


 先ほどまで女性の周りに居た虚ろな妖精と精霊は私の出現に会わせるかのようにそう言って私の方に全員逃げてきた。


「ちょ、ちょっと何処へ行くの⁈」


『あの女が腕輪で僕らを隷属させてたんだ!』

『そうなんだ!』


「腕輪で隷属?」

 私ははてと首をかしげる。

 するとクロウが歩き出し、女性の見てを掴んだ。

 するとドレスで隠れていた腕輪が露わになった。


「精霊と妖精を隷属させる忌まわしき腕輪だな。我が全て壊したと思ったが一つ残っていたか」

「止めて! その腕輪に触らないで!」


「つまり、その腕輪の力で奇跡を演出してた……ってこと?」

「ち、違うわ! 私の力で……!」

「嘘は無駄だ、お前には何の力もない。妖精と精霊の愛し子でもない、聖女でも聖人でもない、ただの人間だ」

「娘を離せ! 無礼者!」

「エンシェントドラゴンの我に意見する気か貴様」


 クロウが顔に黒い鱗を出現させ、火を吐いて睨み付けた。


「ひぃ⁈」

 男性は腰を抜かした。


「さて、さっさと腕輪を壊すとするか」

 そうだね、それが一番。

「止めて、止めて、止めて!」

 知りませんよ。

 女性がわめいてるが皆冷たい視線を女性に向けているし。


 バキン


 腕輪が壊れた。


『今までよくも僕らをこき使ったなー!』

『呪ってやるー!』

『許さないからなー!』

『呪うぞー!』


「ああああああ! 痛い痛い痛いぃいいい‼」

「誰か、誰かたすけてくれぇえええ!」


 二人はのたうち回る。


「今頃、家でのんきにしているこの娘と男の身内も呪われてるだろうな」

 クロウが壊れた腕輪を見ながら忌々しげに呟く。

「カインド帝国の作った忌々しい腕輪をよく見つけて、使おうと思ったものだ」

 その言葉に広間はざわめく。

 何か話合いが始まる気配を察知したクロウは私を言ったん追い出した。

 しばらくして広間から出て来たクロウは言った。


「帰るぞ」


 どこか冷たい声だった。






温泉は善狐達の極東が日本と似たような感じです。

そしてマリアとレイヴンのやりとりに入った梢は、マリアに地味にチクチク言われてます。

梢、お人好しというか信じられると思ったらとことん信じてしまいます。

ムーラン王国の件、クロウに取っては寝耳に水。

壊したと思った物体が残ってたんですから。

ただ、聖女が偽物だったということで、イザベラとロランの婚約は続けられるものになるでしょう。


クロウの声が冷たいのは、忌まわしいカインド王国の事を思い出したからです。

つまり不機嫌になってます。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。

次回も読んでくださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
梢ちゃん、お人好しすぎて騙されないか不安です…。周りが気づいたりしてくれるのでしょうが、迂闊に1人にはできないですね。騙す側は敢えて真実も話し、嘘と真実を混ぜ合わせるので梢ちゃんがころっと騙されるかも…
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