吸血鬼差別について
残った孤児の対応に悩んで居る梢。
孤児達は吸血鬼である梢に怯えている。
そんな中マリアがドミナス王国の孤児院で受け入れるような話になり、クロウは書状を持ち孤児達を連れていった。
それを聞いたイザベラは怒り、不満を訴えた──
奴隷達の対応が終わると、クロウが各国へと連れて帰っていった。
残ったのは孤児だけ、孤児達は私に怯えている。
どうしたものかと悩んでいると──
「愛し子様、どうした?」
「マリア様、実は──」
事情をマリア様に説明すると、マリア様は頷き。
「では我が国の孤児院へ送ろう」
「え、良いんですか?」
「ここに居ても不和の種にしかならぬ、ならば我が国に連れて行ったら良い。王都の孤児院に書状を書いて送らせよう」
「有り難うございます」
「では、しばし待って欲しい。書状を書くから」
マリア様は来賓の館に戻った、しばらくすると書状をもってきた。
それを私はクロウに渡した。
クロウは受け取り、ドラゴンの姿に戻る。
「クロウ、お願いね」
『任された』
子ども達を背中に乗せ終えるとクロウは飛んで行った。
「コズエ様のお声がなかったら助からなかったのに、酷いわ!」
イザベラちゃんが色々とマリア様から聞いたらしくぷんぷんと怒っていた。
可愛い。
「いや、助けたのはクロウだから。私は関係ないよ」
「吸血鬼、だから怖い? 私はそんな事なかったわ! 奴隷の首輪を壊してくれて、綺麗な服を着せてくれて、美味しいものを食べさせてくれて、とっても優しい方だと思ったわ!」
「まぁ、でも吸血鬼を忌避するのは普通らしいからしかたないですよ」
納得してくれないようだ。
「この話はまた別の機会にして、お夜食タイムにしますか?」
「おやしょくたいむ?」
「ホットケーキを作るんですよ、それに甘いメープルシロップをかけて食べるんです」
「美味しそう!」
「食べますか?」
「食べたいわ!」
イザベラちゃんと来賓の館に向かいホットケーキを作り、メープルシロップをかけて出した。
フォークとナイフを置き。
「さぁ、どうぞ」
「いただきます!」
イザベラちゃんはナイフで切りフォークで刺して頬張った。
「おいひい!」
「それは良かった」
私はそれを眺める。
「コズエ様は食べないの?」
「後で食べるから気にしないで」
と私は言う。
「本当?」
「本当です、だから食べてください」
「ええ、分かったわ」
またイザベラちゃんは美味しそうにホットケーキを頬張る。
そのあと、後片付けをしてから来賓の館を出て、自宅に戻りホットケーキを作ろうと思ったが、ふっかふかのパンケーキを作りたくなりそっちにすることに。
ごめんイザベラちゃん。
生クリームを角が立つほど泡立て、イチゴを切り、ふかふかのパンケーキを焼き、飾りをして食べる。
「ん~~!」
ああ、これはたまらない。
あっという間に完食し、一息つく。
すると、ティリオさんが戻って来た。
「王族の方々がお休みになるというので戻って来ました」
「お疲れ様」
「いえいえ、そう言えば先ほどクロウ様がお戻りになられましたが、何処に?」
「ああ、それは──」
私は事情を説明した。
「……やはりコズエ様が吸血鬼というだけで怯えるのは非常に辛いです」
「あははは、吸血鬼だもん、しゃーないよ」
「ですが……」
ティリオさんも不満そう。
そんな不満がられても、仕方ないよ。
この世界の吸血鬼はそういう存在なんだから。
血を吸わなくても忌避される、そういう存在。
まぁ、そういう存在なの知ってても、吸血鬼になってただろうね、私は!
何せ吸血鬼大好き人間だったからね!
ただ……その気になればデイウォカーとして対処可能、心臓に杭を打たれても死なない、流れ水平気、雨も平気、温泉も大好き、血を飲む必要全く無し!
なので吸血鬼要素何処は何処へいったのだ、と言われても仕方ない状態ではある。
それでも私一応吸血鬼なんだからいいじゃん別に!
「……コズエ様は吸血鬼であることを嬉しく思っているようですね」
「そりゃ望んでなったからね! 神様に頼んで!」
うん、嘘は言っていない。
「エルフとかドワーフになるとかは無かったんですか?」
「いやー? 別にー? 吸血鬼になりたかったから、これでいいよ私は」
「はぁ……」
「まぁ、結果大半の人に忌避される存在になっちゃったけどね!」
「きっと正解だったのでしょう、コズエ様が吸血鬼になられたのは?」
「正解?」
私は首をかしげる。
「ええ、善人を選別する為に」
「ふむ?」
善人でも吸血鬼を忌避する人はおるぞ絶対。
それくらい差別って根強いんだよ、私知ってる。
差別は根強い。
無くすのは困難だ。
でも、それでもいい。
私なりにやっていけば良い。
吸血鬼で神々の愛し子の私が。
一歩ずつ着実にこなしていけば良い。
「まぁ、頑張るよ」
「何を、ですか?」
「差別が少しでも減るように」
そう言うとティリオさんは微笑んだ。
「クロウ様、申し訳ございません」
クロウはシルヴィーナの家に来てシルヴィーナが飲食できるものだけを持ってきていた。
「倉庫から持ってきたものだ、レームの奴がお前から離れずにいるのだから我が持ってくるのが必然だ」
「すみません、クロウ様」
シルヴィーナの世話をしていたレームが頭を下げる。
「レームは本当過保護なのです」
「仕方あるまい、お前はまだ若い上、初産になるのだから」
クロウはシルヴィーナを宥める。
「色々と不安はあります、私がやっていた仕事はどうなっているのですか?」
「他の連中がやってるぞ、主にアルトリウス達がな」
「ああ、コズエ様にご迷惑を……」
「いや、コズエは通常通りだから寧ろそれしかできない自分ですまないと思ってるぞ、お前が重荷に思う必要はない」
「ですが、それではコズエ様とアルトリウス達の時間が減るでしょう?」
「それはきっちり確保している」
クロウがそう言うとシルヴィーナは胸をなで下ろした。
「良かった……」
「まぁ、梢が妊娠することは当分なさそうだがな」
「やっぱりですか」
「梢は性行為を恐れてるからな、子どもができる訳がない」
「ああ……何かあったんですね……」
シルヴィーナは重い表情をした。
「いや、耳年増過ぎて知識があるから怖くてできないだけだ」
シルヴィーナはぽかんと口を開けた。
そして信じられないものをみるような表情をして──
「何ですかそれ⁈」
「そういう性行為が怖いのもあるということだ」
「あるのですか……」
「だから出産が終わり落ち着いた時、梢が相談したらのってやれ」
「わかりました」
「それまで大事にな」
「はい!」
クロウはそう言ってシルヴィーナの家を後にした。
「あー差別に子どもに、問題が山ほどあるー」
私は突っ伏した。
そんな私の頭を誰かが叩く。
叩くような奴は一人しか居ない。
「クロウ~~?」
「また悩みを抱え込んでいるのか」
「言ってから悩みが増えたのよ」
「取りあえず、今は悩みを放置して仕事などに勤しめ」
「何よそれ」
「あと、アルトリウス達との交流は忘れずにな」
「それは毎日してる!」
「ならいい」
クロウが出て行くと、私は悩んで居るのは良くないと判断し、畑の整備に向かう事にした。
「あ、温泉に家族風呂作ろうかな、作ってなかったし」
整備中ふと思いついて温泉の改良を行うことにした。
巨大化した温泉だが、まぁいいかと納得した。
何処にでもあるんですよ、差別って。
梢も諦めて受け入れているのが現状。
でもイザベラはそれを認めたくない、梢は良い吸血鬼だから。
そして、シルヴィーナとクロウは梢について話してます。
負担になってないか、など。
まぁ、負担になってないけどシルヴィーナのありがたさを噛みしめている感じですね梢達は。
そして梢の妊娠しない理由の一つに驚くシルヴィーナ、まぁそういうのもあるんですよ。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。