梢の件と、シルヴィーナの抜けた穴
梢が畑仕事に勤しんでいる間、アルトリウス達三人は、正妃マリアと会話をしていた。
子どもを作らない事を不思議がってるマリアに対してクロウが割って入り──
アインさんやアルトリウスさん達と話して気分が大分軽くなった私は畑仕事などに勤しんだ。
余計な事は言わせない、今の私は子どもが欲しいと思えない。
そもそも性行為が怖くてできないんだ。
添い寝が精一杯。
でも、三人はそれで許してくれる。
甘えなのは知っている。
でも、これが私の精一杯、三人はともかく、他の人に文句は言わせない。
「愛し子様の伴侶達、聞きたいのだが」
正妃マリアは三人集まっている、コズエの伴侶達に声をかける。
「愛し子様とはどこまで?」
「添い寝まで」
「それだけ?」
「それだけだ」
アルトリウスが平然と答える。
「抱きたいという欲求はないのか?」
「あるが、全員我慢だ。コズエはそういうのに恐怖意識を抱いてる」
「何故?」
「知らない、だが添い寝だけで私達は十分だ、正妃マリア」
「正妃マリア、私はコズエの負担になるようなことはしたくないのですよ」
「正妃マリア様、私達はコズエ様に愛されているだけで今は十分幸せなのです」
「……愛されているのか?」
「正妃よ、子どもを作る行為をするだけが愛ではないとわかっていよう」
エンシェントドラゴンであるクロウがマリアと三人の会話に割って入った。
「それはわかっている、だが不安はないのか?」
「此奴等にはない、先ほどまでコズエは子どもを今すぐ作らないといけないのかと不安になっていたが、今はその考えは捨てている、親になる自覚と欲しいという思いが一致した時そうなればいいとな」
「愛し子様は親になる自覚がない、と?」
「ああ、コズエは自身の精神を酷く未熟に捉えているだから親になる気は今のところない」
「子を持てば自覚など後に続くものでしょう?」
「梢は、親になる覚悟も無く子を産んでできた悲劇を多く知っている」
「……どのような?」
「我の口から言えるのは子殺しとだけ言えよう、他にもあるが悲惨なののでわかりやすいのはそれだろう、後は子を自分の道具として育てるなどだ、愛情を与えず蔑ろにし続けるなど」
「愛し子様がそんな事をなさるだろうか?」
「しないだろう、だが子どもを産むと色々と変わってくる、妊娠もな」
「確かにそれはそうだ」
「梢は子どもには幸せになって欲しいし、家族も幸せになって欲しいと願っている」
「ふむ……」
正妃マリアはクロウの言葉に首をかしげた。
「愛し子様は妊娠をしたことはないのか?」
「かなりツッコんだ事を聞くな、梢は生娘だぞ」
「……」
「知識が豊富故、子作りが怖いというのもある、まぁぶっちゃけると性行為が怖いのだ」
「なるほど」
「結果梢は、まだ子どもは産めない、という状態だ。まだ妊娠はできないという状況だ」
クロウは疲れたように語った。
「やれやれ村の連中にも同じように聞かれるから我がぼかして伝えたり、ぼかさず伝えたりで大変なのだ」
「クロウ様、申し訳ないです」
「クロウ様、お手数おかけします」
「クロウ様、申し訳ございません」
アルトリウス達がクロウに謝罪する。
「お前らの謝罪は要らん。とにかくお前達がすることは、梢が負担にならないように気を遣うことだ」
「分かっています」
「分かっていますとも」
「分かって下ります」
「クロウ様、貴方はどう思っているのだ?」
マリアがクロウに問いかけようとしていた。
「何がだ」
「クロウ様、貴方は梢が子を身ごもることを望んでいないと?」
「それは梢が決めること、求める事だ。我が欲するのは梢の心の平穏だ」
「……」
「正妃マリアよ、あまり梢を追い詰めるな、梢はなんとか決めたとしても脆く弱いのだからな、精神面は」
「……」
「だから人殺しなどできはしまい、同族殺しもできはしまい、異種族殺しも出来はしまい、できるのは精々魔物殺し程度だ」
「でも、その魔物殺しも一度のみと聞きましたが?」
「その通りだ、だが今はさせない」
「……」
クロウは笑う。
「梢はあの性質が良いのだ、だから神々から愛されている」
「それは分かるが……」
「話は以上だ、我はシルヴィーナに果実のジュースを届けに行くところだ、梢に頼まれて」
「愛し子様はどうしている?」
「畑仕事の真っ最中だ。だから手が離せないとな」
「なるほど……」
「後、レイヴンに聞いて、宴をやっていいか聞きに行く。何せシルヴィーナが妊娠しているからな。初めての妊娠だしな」
「なぜ?」
「シルヴィーナの抜けた穴を誰が埋めるかが重要なのだ、シルヴィーナは村では欠かせない存在だったからな」
「確かに……」
「ではな」
クロウはその場を立ち去った。
「……愛し子様が今妊娠しないのは計画性もあるのかもしれないな」
「どういうことです?」
「シルヴィーナだけで無く、自分も妊娠すれば畑仕事などが立ちゆかなくなる」
「ああ……確かに」
「それに愛し子様あってのこの村だ、それも心配しているかもしれない」
マリアはそう言ってその場を後にした。
「へーマリア様がそんな事を」
アルトリウスさん達からマリア様との会話内容を伝えられ、まぁ納得いく箇所もあった。
何せこの村の作物は全部私の加護がある。
その加護であんなに巨大な作物ができるのだ。
沢山の食材ができるのだ。
逆に言えば、加護を失えば普通のになってしまう可能性がある。
そうなったら、村の生活が立ちゆかなくなる可能性がある。
それくらい私の加護と畑達に村人達の暮らしは依存している。
「……」
ますます子どもを持つなど考えられなくなった。
村が壊滅するのは避けたいし。
「梢どうした、そんな顔をして」
「クロウ?」
突然クロウがやって来たので私は驚いた。
「どうしたの急に?」
「お前が悩むだろうと思ってやって来た」
「……まぁ実際悩んで居るけど」
「お前の畑や果樹園、田んぼ等は全てお前の加護の元にある」
「加護の元にある?」
「つまりだ、数年お前が手を出さなかったとしてもその数年は加護の元今のまま巨大な作物が実る、それ以降は作物が頻繁に実るだけだが」
「いやいや、それが分かっただけでも十分悩みは解消された」
本当。
もし子どもを妊娠しても一、二年は休んでいられる。
「ただ、妖精と精霊にはお前が直接話す必要がある」
「あ、そこはあるのね」
「妖精と精霊は必須だからな」
やっぱり。
「まぁ、お前が妊娠したと分かれば何倍もの働きをしよう」
「そ、そうなの?」
「それで村人が疲れるかもしれんがな」
「うへぁ」
そこは注意して言わないと駄目だなぁ。
まぁ、取りあえず妊娠したとしても村に大打撃が来ることは無いと分かった。
それだけで十分有り難い。
「コズエ様?」
「どうせ此奴は自分の抜けた穴の事を心配する必要がないと安堵しただけだ」
「い、いいじゃない!」
「それよりも、シルヴィーナの抜けた穴の対処を頑張れ」
「言われなくても頑張っている」
「シルヴィーナは王族達の相手もしていたぞ」
「え⁈」
「コズエ様、それは私が対応しましょう」
ティリオさんがそう申し出た。
「アイン様が適任かもしれませんが、あの性格なので。ですので私が対応して参ります」
「お願い」
ティリオさんはそう言って家を出て行った。
「……仕方ない、我も手伝うか」
「え?」
クロウも手伝ってくれるの?
「シルヴィーナは良く働いてくれていたからな」
そう言ってクロウも出て行った。
「まったくティリオは……でも事実ですしね。コズエ、皆で協力してシルヴィーナが働けない間は頑張りましょう」
「うん!」
「私も協力しよう」
「ありがとう!」
抜けた穴を埋めたつもりだったがまだまだ未熟だった。
頑張って行かないとね。
皆で梢の事を守っているのが分かる感じになっていたらなと思います。
あの三人は特に梢を大事に思ってますから、そしてクロウとシルヴィーナも。
また、食料事情も大丈夫そうなのが分かりました。
梢は三人と皆に支えられながら決断していくでしょう。
えー……本当は昨日更新予定だったのにもうしわけございません。
疲労困憊でこちらの更新がすっぽ抜けて下りました、どうして疲労困憊かはいえませんが、色々あったんです。
病院とか病院とか、病気悪化とか、体調崩れて動けないとかまぁ色々です。
取りあえず、明後日の更新になると思いますが、忘れないようにしたいです……更新されてなかったら疲労困憊でパンクしてると思ってください、ごめんなさい。(土下座)
ここまで読んでくださり有り難うございました。
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。