季節は春になり
始祖の森にも春は訪れ雪は溶ける。
そして梢はさっそく新しい作物を育てようとする。
そんな梢の言葉を聞いていた妖精と精霊達はすぐに行動に移して──
雪が融けてきた。
春がやって来たというか──
『春ですよー!』
『春だよー!』
季節の妖精と精霊がわちゃわちゃと飛んできた。
季節の妖精と精霊もいるんだなと黄昏れる私。
だが、そんな風に黄昏れている場合ではない、植える作物を増やし冬の間開墾し畑にした場所に植える物や、広げた果樹園部分に植えるものを選ばねば。
が、冬の間にリスト化済みだ。
ノートのリストのほしい作物リストに入れてある。
そして、念願の温室も冬の間に神様のお供えをしたおかげで格安で手に入った。
これで温室果実が作れる!
広くなった自分の敷地を見渡しふぅと息をする。
「よし、やりますか」
ジャージ姿の私は早速取りかかるのだった。
野菜の苗を植え、種を植え、新しい果実の苗木を植え、水と肥料をやる。
「早くおーきくなーぁれ♩ たくさんたくさん、実りますようにー♩」
歌いながら気分良く作業をするが、眠気がやって来た。
「だめだ、朝が近いから眠い……」
自分の家に戻り、「作物が実ってたら収穫してください、お願いします」の板をドアノブにかけ、ジャージを脱いで、お風呂に入って、ワンピースに着替えて棺桶のある寝室に向かい横になり、目を閉じた──
『愛し子様が早くおーきくなーぁれ、だって!』
『たくさん実りますようにだって!』
『よしやっちゃおう!』
『やっちゃおう!』
精霊と妖精達が作物達に近寄り手を出していた──
「コズエ様! コズエ様‼」
バンバンバンと棺桶を叩く音がした。
「うー……ちょっと待って眠いぃ……」
棺桶をのろのろ開けるとバンと叩かれた。
「痛い」
「も、申し訳ございません‼」
「んー……気にしてないよーそれより何?」
「作物が! 実ってます!」
「だよねー」
あんな歌歌ってたんだから妖精と精霊が聞いて無い訳がない。
家を出て畑と果樹園を見ると巨大果実や、巨大野菜がわんさか実っていた。
「オゥイエ」
奇声が上がるが仕方ない。
「村人も呼んで収穫手伝ってもらえないかな?」
「はい!」
シルヴィーナは村へと走って行った。
「さて、収穫しますか」
私はそう言ってジャージに着替え、軍手をして収穫を開始する。
村の人達には巨大な果実と、トマトなどの実るタイプの野菜を収穫してもらい、私は収穫できなそうなカブやダイコンジャガイモなどを収穫した。
「また、苗買って植えよう」
私はそう呟いた。
収穫した作物は山のようになり、これ一人じゃくえねぇなと遠い目をする。
「うひょー、すごい作物ですな」
ドワーフの方々もやって来て作物の山を見て目を丸くする。
「これ、どうするんですかな」
「どうします?」
「食べれる分は食べるけど、残りは加工食品とかにするかな、ワインとかのお酒にもなるし」
「「酒!」」
ドワーフだけじゃなく獣人達も食いつく。
「取りあえず、これを──」
「みんなで分けよっか」
巨大野菜ででかすぎるものは私がナイフで空中で細かくして各家庭に持って行けるサイズに切り分けた。
まな板でやるのはできんからね。
果実はみんなで分け合って食べた。
どれも甘く濃厚で、活力が湧いてくる。
後で、神様達にもお供えしようと思いながら食べた。
まぁ、分け合った後、宴会が始まったので私はこっそり抜け出した。
陽気な雰囲気はちょっと私には明るすぎる。
ブラッドフルーツは薬師のおばあちゃんが少し欲しいと言ったので分けた。
「さて、お供えしますか」
家に帰るとテーブルに果実の一部と残っていた苺とサクランボのワインを置き、スマホをお供えモードにして撮影。
カシャ
果実達は綺麗に消えていた。
スマホが鳴る。
「はい、もしもし」
『梢や、すまんのう。こんなにたくさん』
「いえいえ、精霊と妖精達が実らせてくれたので」
『そうじゃな』
「はい」
『そう言えば蜂の巣を見に行ったらどうじゃ? 蜜がたっぷりになっとるはずじゃぞ』
「え、もうですか?」
『そうじゃよ』
「あ、あと聞きたい事が」
『何かのう?』
「……神様ってデミトリアス様って名前だったんですね、じゃあ闇の神様は?」
『あーそっちの世界じゃ儂はそう呼ばれてる、闇の神はネロじゃ』
「なるほど……」
『それにしてもイブリス教の信者が迷惑をかけたのぉ』
「いえ、勝手に迷子になって帰ってるし、それにイブリス様からの呪いもあるのでもう日の目は見られないんじゃないかと」
『そうじゃなぁ、太陽神は我慢に我慢を重ねておったからのぉ』
「ははは、でしょうね」
『しかし、梢や。お前さんは彼奴の加護を貰って居るが昼間はちーとも外にでんのぉ』
「眠いんで」
『じゃろうな』
わたしは苦笑いを浮かべる。
『まぁ、緊急事態にお前さんが出るなら問題なかろうて』
「そんな事態来ないことを祈ります」
『お前さんの目的はスローライフじゃからの』
「ええ」
私はスローライフをしたいんじゃ!
ゴタゴタなんてまっぴら御免じゃ!
と心の中で強く叫ぶ。
『そういえばフェンリルの小屋にはいったかの?』
「いえ、まだです」
『良い物がみられるぞ』
「はぁ」
ぷつっと電話が途切れる。
私はフェンリル達の小屋に向かい声をかける。
「白亜ー」
『コズエ様でしたか、どうぞお入りください』
そう言われて小屋の中に入ると、石榴のところに小さな二匹の犬の赤ちゃんみたいなのが居た。
「かわいいー! 何これ、石榴と誰の子?」
『玉髄です』
「石榴がんばったねぇ」
頭をわしわしと撫でる。
「何か必要な物ある?」
『そうですね、良ければ銀牛の乳が欲しいのですが』
「OK」
私はそう言うと、銀牛のミルクをアイテムボックスから取り出し、瓶の中に入っているのを器に注ぎ、石榴と赤ちゃんの中間におく。
ミルクの匂いを嗅ぎ取った赤ちゃんは石榴から離れ、ミルクを舐めだした。
「良かった飲んでくれて」
『はい、実は石榴の乳の出が今日から急に悪くなり、代用品を探していたのです』
「そっか、じゃあ手助けできてよかったよ。あと、もっと早く言って欲しいな」
『すみません、コズエ様は忙しく畑仕事等をされていたので』
白亜が謝ったので、私は頭を撫でた。
「こう言う時は気にしない」
「コズエー」
小屋の外からアルトリウスの声が聞こえた。
「ちょっと待っててね」
私は小屋から出て。
「どうしたの?」
「ちょっと外に行ったらオークが居たので、シルヴィーナと狩って来た。肉にしてるから食ってくれ」
「おーく⁇ あの、食べられる⁇」
「高級食材だ」
「そ、そう」
どさっと肉の山を置いていってアルトリウスは帰って行った。
その後、肉を焼いて白亜達と食べる事にした。
出産などをした石榴は特に食べていた。
ちなみに、肉はびっくりする程美味しかった、カルチャーショック……
妖精と精霊、即行動ですが、梢は村が豊かになるからいっかの精神で受け入れてます。
石榴と玉髄の間に二匹の子どもが生まれました、梢はもっと頼ってもくれても良いのになと思ってます。
アルトリウスが狩って来たオークは二足歩行の豚さんです。
梢はなんかヤバそうな生き物とイメージしています。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。