吸血鬼について
クロウがハイエルフの里に脅しに言って居る間、梢は自身のこと。
吸血鬼、この世界の吸血鬼がどういうものか気になりヴェロニカの元へ向かう──
「クロウの馬鹿」
私はふてくされる。
真面目に相談したのに爆笑されたならそうなる。
「くくく……すまんすまん! まさか無自覚に呪い返しをしているとは思ってなくてな! ははははは!」
「だから! 呪い返したつもりはないの!」
「だが結果として呪い返しになったのだろう、あの里はもう駄目だな! 上の連中が使い物にならんし、下の連中はおろおろするばかり! 無能だな!」
「ちょっと言い過ぎだよクロウ」
私は眉をひそめていった。
「事実だろう、実際こちらの森の居住区の方が里の働きをしている。トップであるレイヴン達のお陰だな」
「まぁ、そうかもしれないけど……」
私はなんとも言えない気持ちになる。
「お前が重荷に思う必要はない、奴らは自ら破滅の道を選んだのだから」
「まぁ、うん、そう、だね」
確かに。
言われてみれば、私は自己防衛したにすぎない。
シルヴィーナの件も防衛しただけ。
自滅したのはあっち。
私達何にも悪くない。
「そうだね、悪くないね」
「だろう?」
「にしても笑いすぎだったよ」
「いやぁ、愉快だったのものでな」
「愉快じゃないよ全く」
ハイエルフの里がもう駄目だと思ったら──
「……今ハイエルフの里に残ってるハイエルフ、来るとかあり得るんじゃ無い?」
「まぁ、あり得るな」
「だよねー……」
「よし、我が脅してこないようにしておこう」
「うん、宜しく」
クロウは外へ出るとドラゴンの姿になり飛んで行った。
あっという間に見えなくなった。
「コズエ、クロウ様に報告したらどうなった?」
アルトリウスさんがやって来た。
「こっちの森に来ないように脅しておくって」
「既に出ていた場合はどうする?」
「……クロウとレイヴンさん達に対応して貰おう、私は会いたくない」
気分的に自分を呪った輩と同類の連中には会いたくない。
「そうだな、会いたくないだろう。ではレイヴンに一応話しておく」
「いいの?」
「疲れてるんだろう? コズエ。少しは休め」
「うん、そうする……」
私は家に戻り、ブラッドティーを作り飲んだ。
「美味しい……」
一人ぽつんと家の中にいる。
「なんか寂しいなぁ……でも起こしたくないし、アルトリウスさん早く帰ってこないかな……」
吸血鬼だからアインさんとティリオさんと過ごせる時間は少ない。
夜更かししようとしたけど、それは体に悪いと私が反対したのでちゃんと良い時間に眠って貰って居る。
人間最低八時間は寝ないと駄目って言うしね。
確か元の世界のテレビで見た。
吸血鬼の睡眠時間はどうなんだろう?
朝日が出ている時が睡眠時間だから冬が一番短くて、夏が一番長い。
取りあえず、自分の経験上。
吸血鬼は眠る時間より、月光を浴びている時間の方が重要なのかな?
うーん、よく分からない。
アルトリウスさんはダンピールだから日光少し耐性あるけど、そこんところどうなんだろう?
この世界の吸血鬼事情、忌避されている以外全然分からない。
「ちょっとヴェロニカさんに聞きに行こう」
私はそう思い立ち、書き置きを残して家を後にした。
「吸血鬼の生態について知りたい?」
ヴェロニカさんは私にブラッドティーを出してそう聞いて来た。
「いやぁ、私吸血鬼が忌避される以外全然知らないんですよ」
「そうなのか、てっきり知っているものと……いや余計な詮索はクロウ様から禁じられているしな。よいだろう、愛し子様。私が知っている限りの事をお話しします」
「有り難うございます」
私は頭を下げる。
少しヴェロニカさんは慌てた。
「頭を下げられるような事ではない、ですから頭を下げないでいただきたい」
「はぁ」
顔を上げると、ヴェロニカさんはふぅと息を吐き出した。
「私達吸血鬼は夜の光、つまり月光を浴びる事が健康の秘訣。睡眠時間は関係はない」
「なるほど」
「なので夜の短い夏は普通は体調が悪くなりがち──なのだがここに来てからはそういう兆候はみられぬ。おそらく愛し子様のブラッドフルーツから作られたワインとお茶が理由かと」
「そうなんですね」
「これに関してはクロウ様に確認したので断言できる」
クロウ何処まで色々知ってるんだろう。
「そして愛し子様はともかく普通の吸血鬼は陽光と流れ水と雨と大蒜が弱点だな」
「その二つ?」
「あと、聖水とかだがこちらは作れる者が限られているので……」
十字架は無いんだ。
そう言えばそうだよね、この世界で十字架のアクセサリー作った時、変わった形のアクセサリーですねって言われたもん。
「シンボル的な物は苦手じゃないの? イブリス神を奉るシンボルとかないの?」
「確かにあるが……シンボル的なものは別に脅威ではないな」
「なるほど……」
やっぱり元の世界の吸血鬼のイメージと結構かけ離れてる。
「日を浴びるとどうなるの?」
「火傷を負う、その火傷は一ヶ月以上治らず吸血鬼を苛むことになる」
「そうなんですね」
「なので私達は梢様と違い夕方ではなく完全に夜になってから外にでている」
「目覚めるのが夕方でも?」
「ああ」
「なるほど……」
じゃあ夕方から活動できる私はめちゃ異常だった訳ね……
「ただ、陽光に耐えうる存在として聞いた御方がいる。私は会ったことはないのだが……」
「え、陽光の下歩ける吸血鬼いるの?」
「はい『真祖』と呼ばれる御方だ。その御方だけは夜と昼共に平気で行動できるらしく……」
真祖、真祖、あれ?
こっちでも聞いた事あるぞー?
なんだっけ?
忘れた!
思い出せないので放置しておこうと思うと。
「もしかしたら愛し子様は真祖なのかもしれぬ」
「えー? 私夕方から活動するからそれまで寝ているよ?」
「ですが、陽光を浴びても大丈夫なのだろう? クロウ様が仰っていた」
「そういやそんなこと言われたことあるような」
「愛し子様は鈍感なところがおありのようだ、他の吸血鬼達とは比べものにならないのに」
「そうかな?」
「そうだ」
そんなこんなで会話を終えて家に帰宅するとアルトリウスさんが戻っていた。
「ヴェロニカ殿に吸血鬼について聞きに行っていたのだと?」
「うん、今更ながら気になってね」
「だが、コズエは普通の吸血鬼と違う、参考になるか?」
「まぁ、参考になったよ、ところでレイヴンさんとの会話はどうだった」
「どうやら村に残っていた老人連中がこっちに来ようとしているから追い払いたいと」
「あー」
嫌な予感的中ー。
「クロウはまだ戻って来てないのかな」
「戻って来たぞ」
タイミング良く扉が開かれた。
「ついでに話も聞いてある」
本当用意周到というかなんというか。
「呪われた老害共はこの森に足を踏み入れないだろう」
「でしょうね」
クロウが脅したんだろうし。
「呪いがあまりにも酷くまともに外に出られないとわめいていたが、呪った貴様等が悪いの一言で黙らせた」
「で、既に出発しちゃった連中は?」
「途中で見かけたのでドラゴンの姿で脅してやった」
「そうなの?」
「そうしたら里へと戻っていったぞ」
「良かったー来たらレイヴンさん達の負担増えるし、シルヴィーナも安心していられないしね」
「だろう?」
「うん、有り難うクロウ」
クロウは自慢げな顔をした。
「我を褒め称えるついでに菓子を献上しても良いのだぞ」
「それ普通にお菓子食べたいだけでしょう……」
クロウの言葉に私は苦笑しつつ、クッキーを作った。
イチゴジャムのロシアンクッキーとチョコチップクッキー。
クロウはホットミルク片手に美味い美味いと食べていた。
やっぱり平穏が一番だね。
ヴェロニカから吸血鬼について聞いた梢。
ただし、苦手なものは梢には無効です、何せ梢は神々の愛し子ですから。
その作物であるブラッドフルーツも凄い効果を持ってます。
クロウは、村や梢の為にハイエルフの里の連中達を脅しにいってましたドラゴンの姿で。
エンシェントドラゴンの姿で脅せば、怖がって近づかないからです。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。
また、今度から二日に一回の更新に諸事情で切り替わります、申し訳ございません。
それでも、次回も読んでくださると嬉しいです。