シルヴィーナについて~呪い返し~
春になり、色々とやることが増えた梢。
シルヴィーナが手伝えない分やることが増えたのだ。
そこにアインが手伝おうと言ってきて畑の方は順調に進む。
そこで梢はティリオが何をしているか問いかけると──
ゴタゴタしていたが、春になったので色々やることがまた増えた。
種を植えるとか聖獣のお世話とか色々と。
シルヴィーナが手伝えない分私がやるところが増えた。
「あー疲れた」
私はため息をつく。
シルヴィーナに頼り過ぎてたなぁと今更ながら思う。
「どうしたのです、コズエ」
「ああ、アインさん。ちょっとね、今までシルヴィーナに頼り過ぎてたなぁって思ってたの」
「一応私達もカバーしてますが、それでもシルヴィーナの働き具合は凄かったというわけですね」
「日中全部カバーしてたもん」
私吸血鬼だから夕方以降しか活動できない。
「本当、こういう時吸血鬼って不便だわ」
「……そうですね、大人の方々にも協力してもらって私が指揮を執りつつ日中はやりましょう。聖獣のお世話は私もできるようになりましたし」
「本当? アインさん? 助かるわー……」
私は微笑む。
アインさんは嬉しそうに微笑んだ。
次の日──
畑等の状態はシルヴィーナがやっている時と同等になっていた。
「アインさん、これ……」
「昨日言った通りやってみました。コズエの畑はこの村で最重要なので村の方々も心よく協力してくださりました」
「良かった……」
安堵の息をつく。
「あれ、ティリオは?」
「ハイエルフと村の薬師と薬作りに勤しんでいるので誘えませんでしたよ」
「何を作ってるの?」
「体に塗る薬だそうです、妊娠した時に腹に塗ると良いそうで」
「へぇ」
「村中にシルヴィーナが妊娠した件が伝わっているので、色々考えているようですよ」
「ほへー」
色んな薬もこの世界にあるもんだと感心する。
「アイン様、コズエ様、遅くなりましたがお手伝いをさせてください」
「うん。ティリオさん、有り難う」
「コズエ、聖獣の二度目の世話は終わったぞ」
聖獣のいる家畜小屋からアルトリウスさんが出て来た。
「有り難う、アルトリウスさん」
それから私達四人で畑などの整備や残った野菜の収穫、種を植える等を行う。
「なんとか無事に終わったね、良かった」
「それなら良かったです、では私は寝ますね。コズエ、お休みなさい」
アインさんが頬にキスをして立ち去っていった。
「では私も先に休みますね。お休みなさいコズエ様」
ティリオさんは手の甲にキスをして立ち去った。
「どうしよう?」
「ゆっくりするのがいいだろう。最近畑仕事等に追われていたしな」
確かに、追われてて夜遅くまでやってぐったりしてたな。
「じゃあホットミルク飲もうかな」
「いれよう。俺はブラッドティーでも飲もう」
そう言ってアルトリウスさんはミルクを温め、ブラッドティーを自分のカップに注いだ。
魔導ケトルでお湯が温かいままでいるからできるのだ。
ちなみにこんなものなんだけどーとハイエルフさんに相談してできたものである。
「できたぞ」
「有り難う」
自分のカップを受け取り、ホットミルクに砂糖を入れてかき混ぜ飲む。
ほっとする味だった。
「シルヴィーナにずっと手伝ってもらっていたね、本当」
「そうだな、彼女には幸せになってもらいたい」
「うん、そうだね」
アルトリウスさんの言葉に私は微笑む。
何せこの異世界で初めて出会ったのがシルヴィーナだった。
そしてシルヴィーナをきっかけに色んな出会いがあった。
だから私は彼女に感謝している。
そうだから──
「絶対呪いで不幸になんてさせない……!」
「ああ、そうだな。シルヴィーナを呪うなんて碌でもない奴らだハイエルフの里の老害共も」
「本当にそれよ」
私はイラッとした。
自分達の思い通りにならなかったシルヴィーナを追い出して。
それで自分達の若い物達が出るきっかけを作ったシルヴィーナを勝手に恨んで。
その上呪う。
全部自分達が悪いのに。
何で反省できないのだろう。
年をとると反省ができにくくなるのだろうか?
嫌だな、そんな年の取り方は。
「梢様、ちょっと宜しいですか?」
「レイヴンさん、どうしたんです?」
レイヴンさんがやって来た。
手紙を手にして。
「どうしたレイヴン、何かあったのか?」
「一応里の方で何かあったのでちょっと伺いたくて」
「はぁ」
「里っていうとハイエルフの里のほうかな?」
「長老連中が全員呪いにかかって死にそうだからハイエルフの里が存続の危機らしいので戻ってこいと連絡が……まぁ、戻るつもりはないんですが」
「どうしてコズエに聞きに来た?」
アルトリウスさんが問いかける。
「いや、呪いに心辺りがあるかな、と」
私は少し考えて答えた。
「あります」
「何をした、コズエ?」
「クロウがシルヴィーナに呪いが向けられてるから腹を撫でて加護を与えろって言ったからそれかもしれない」
私はそう答えた。
「あー……でしょうね」
レイヴンさんも納得した様子。
「で、返事返すんですか?」
「しらねーよ、の一言を返しますよ。面倒ですし、いつもいつも一方的に手紙送ってくるからそろそろうんざりしてたのでついでに『いい加減手紙送ってくるの止めないと愛し子様に呪って貰うように言うぞお前ら』って返してきます」
そこで私を使うんですか、いやいいけど。
「そこでコズエを使うのか……」
「一番有効だと思うのですが……」
「うん、確かに有効だ。流石に私を呪うなんて馬鹿やる奴はいないだろう」
「……どうでしょう、長老とか残ってる連中、馬鹿しかいないので呪い返しを喰らうでしょうね、呪って」
「其処まで馬鹿なのか……」
「馬鹿しかいません、年をとると賢くなるといいますが、それは大昔の話。今の長老達や年老いた者は馬鹿しかいません」
「レイヴンさん、それ自分の親御さんも入ってる?」
「ええ、入ってますよ」
辛辣な言いようだ。
「しかし、どうしてハイエルフが其処まで馬鹿になったんだろう?」
「六百年の間、愛し子がいなくなり自分達だけが世界樹と対話できるという特別性から愚かになっていったと、私が知っている賢い長老が言っていました」
「その長老さん、亡くなってる?」
「ええ、私が子どもの頃に。このままではハイエルフも愚かな道をたどるだろう、と嘆いてましたよ」
レイヴンさんが肩をすくめる。
「ある意味、予想通りになったな」
「ええ、本当です」
『愛し子様ー!』
『愛し子様ー!』
そんな話をしていると、妖精と精霊達が飛び込んできた。
「どうしたの? 一体?」
『ハイエルフの里の連中が愛し子様を呪えって言ってきた!』
『呪いたくない!』
嫌そうな顔をしている妖精と精霊達に触れる。
「たぶんこれで大丈夫」
『わーい! これで連中を呪える、ありがとー!』
『よーし、呪っちゃうぞー!』
「え、ちょっと」
妖精と精霊達は飛んで行った。
「……どうしよう」
「取りあえず、手紙の内容をちょっと変更しつつ縁切りの方向で進めます」
レイヴンさんが苦笑いを浮かべる。
「呪い返す気なんて無かったんだけどなー……」
本当。
嘘じゃ無い。
「まぁ、結果そうなっただけだから後でクロウ様に報告しよう」
「うん……」
アルトリウスさんの言葉に気弱な返事しかできなかった。
ちなみに、報告したらクロウの奴腹抱えて爆笑しだした。
許すまじ。
人がこんなに悩んでるのに。
シルヴィーナの抜けた穴と、シルヴィーナの為に色々村でやる梢達。
アルトリウスも聖獣達の世話になれてきている様子。
シルヴィーナは梢にとってもとても大切な存在だと認識しました。
そこへレイヴンが里がヤバいことになってるという内容の手紙を持ってきて、また妖精と精霊も梢を呪うよう差し向けられてきました。
しかし、梢の一撫でで呪いは向こうへ帰って行きました。
多分、かなり重い呪いになってるかと。
呪い返す気は無かったのは本当です、なのでクロウの爆笑に梢は結構頭にきてます。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。