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親になる覚悟がない~梢の思い~

コズエはシルヴィーナから妊娠した事を聞きぽけーっとしていた。

そしてアルトリウス達に聞くと、既にレームから聞いていたらしく阻害感を感じる。

そんな中クロウが家にやって来て──





 その日、私は夕方からぼけーっとしていた。

「コズエ、どうした?」

「コズエ、どうしたのです?」

「コズエ様、どうなされました?」

 そんな私に不安になった三人が声をかけて来た。

「いやぁ、シルヴィーナ妊娠したんだなぁって」

「ああ、そういえばにレーム氏から聞いたな」

「私もですね」

「私もです」

「三人は既に知ってたのかー……」

 ちょっと仲間はずれな気分でしょんぼりする。

「仲間はずれにした訳では無いですよ」

「シルヴィーナが自分から言いたいとレーム氏から言われたので」

「そのような思いをさせて申し訳ないです」

「いや、そう言う事情ならいいよー」


 シルヴィーナ、漸く安定期に入ったっぽいしね。


「コズエいるか」

 そんな事を考えてるとクロウが来た。

「クロウ」

「シルヴィーナのところまで行くぞ」

「へ」

 妊婦さんのところに何度も行っていいのか?

 とか思って居ると首根っこを掴まれて連れて行かれた。


「あ、クロウ様、コズエ様、どうなされたのですか」

「シルヴィーナ、コズエに腹を撫でて貰え、良い加護が貰えるだろう」

「え、でもそんな」

「良いから」

「加護があるならいいよね、シルヴィーナ、ちょっとお腹撫でさせてくれる」

「はい」

 私は服越しにシルヴィーナの腹を撫でた。

 妊娠していて、お腹ももっと大きくなるだろうと言う感じがした。

「よし、要件はそれだけだ、きっと安産だろう」

「それなら、良いのですが」

「安産のはずだ」

 クロウはそう言って私の首根っこを再度掴んで、外に出て行った。

 そして小屋へと移動する。

「よし、ここなら誰にも聞かれんな」

「何? 一体?」

「神からお告げがあった、あのままではシルヴィーナは母子ともに命を落とす」

「ハァ⁈」

 寝耳に水とはこの事だ。

 シルヴィーナも、赤ちゃんも、死ぬ?

「何で⁈」

「長老共が呪っているからだ」

「ハァー⁈」

「あの馬鹿共こうなった原因は全てシルヴィーナにあると決めつけて呪っているらしい、結果シルヴィーナも出産に耐えられず死亡し、赤ん坊達も死ぬ未来が見えると言っていた」

「クロウ! ハイエルフの里に連れてって締める!」

「それはいらん、お前の加護のお陰でシルヴィーナは無事に安産で出産でき、子ども達も元気に生まれてくることになった」

「呪いはどうなったの?」

「跳ね返ったに決まっている、今頃ハイエルフの里は長老達が瀕死になって大騒ぎだ」

「ざまぁ!」

 心の底から思った。

「全く、改善せよと言ったのに呪うとは愚かな奴らだ」

「でもどうして今になって?」

「シルヴィーナが妊娠したからだ。妖精も精霊も伝えていないが、ハイエルフは妊娠すると呪いへの耐性が極めて下がる、この始祖の森でも同様だ」

「マジかぁ……」

「あと一年くらいたってから妊娠だったら完全に呪いを跳ね返せていたんだがな」

「どして」

「お前の作物の影響で」

「Oh」

 それでも後一年かよ、大変だなぁ。

「だから呪い返しの呪術者がいるのだが、ここに居る者まだ未熟者で長老達の呪いは跳ね返せぬ、故に緊急処置をとった」

「なるほど……ていうかさ、もう四年近く居るのにそんなに呪力? 耐性落ちるの?」

「落ちる、底辺レベルまで落ちる、だから後一年は欲しかったと言っていたのだ、五年目なら確実に跳ね返せたと」

「そうだな」


 ぐむむ、ハイエルフも大変だなぁ。

 だが、シルヴィーナはこれで問題無し!

 ……だよね?


「……シルヴィーナ大丈夫だよね」


 でもやっぱり不安になって聞いちゃう。

「うむ、お前の加護で安産だし、産後の肥立ちも良く、子ども達もすくすくと育つだろう」

「よかったー」

 ところで、其処まで効果ある愛し子の効果ってなんじゃ。

 と、自分の加護に謎を久しぶりに持った私であった。


「なら、シルヴィーナの赤ちゃんの為に服の用意しなきゃ!」


 私はそう決め、家に戻り自室でハイエルフの赤ん坊の産着等をクラフトで制作。

 そしてそれをアイテムボックスにしまった。

「プレッシャーになっちゃうもんね」

「そういう物か?」

「そういう物なの!」

 理解してくれないクロウに私は怒る。

「ところで、お前はまだ子作りをしないのか?」

「そういうセクハラ発言やめーや!」

 ずびし! とデコを突く。

「痛いぞ!」

「セクハラ発言するクロウが悪い!」

 ぎゃーすかと、言い争いに発展。

「クロウ様、コズエを刺激するのはおやめください!」

「そうです、クロウ様。コズエはその件に関しては敏感なんです」

「クロウ様! コズエ様をそう言ってあまり刺激しないでください!」

 部屋に入って来たアルトリウスさん達が私達を止めるというか、クロウを止める。

「なんだ、お前達。コズエとの子は欲しくないのか?」

「欲しいですが、コズエが初心なのはご存じでしょう? 無理強いしたら夫扱いされずに虫けら扱いされそうです!」

 アルトリウスさん正解だな、好きな相手からだからこそ無理強いはされたくないんだ。 もししてたら絶縁だぞ、私は。

「コズエにそんな事をしては絶縁ものです、コズエが良いと言うまで私達は待ちます。その為の『血の契約』でもあるのでしょう?」

「まぁ、そう、だな」

「クロウ様、コズエ様は不安なのです。子どもを持ってよいのかどうか分からず」

「む? 分からない、とは?」

「コズエ様は親になる自信がないのです、子どもを育てられるか不安なのです」

「育ててみない限り分からんぞ?」

 クロウが言う、私はムカついて。

「心構えってもんがあるのよ」

 と言い返した。


 そう、私には心構えがない。

 子どもの親になれるかどうか自信がない。

 産んでみなければ分からないというけれども、生んだ結果子どもに辛い思いをさせたくない。

 だから私は──


「私、子どもを不幸にはさせたくないの。だから今はまだ妊娠できない、そういうこともできない」

 性行為が怖いのは子どもができるかもしれないからだからね。

「若干理解できん思考だな」

「クロウに理解されなくてもアルトリウスさんやアインさんやティリオさんが理解してくれるなら平気だもの」

 べーっと舌を出す。

「……我は早くお前の赤子を抱きたいのだがな」

 アンタの願望かよ!

「クロウ、悪いけどそれは我慢して、私親になる自信まだ全然ないんだからね!」

「だが、村の子達も言ってるぞ、早く梢の子どもをお守りしたい、赤ん坊をお守りしたいと」

「ヴァー⁈」

 思わず奇声を上げる。


 お願いだから私の知らない間に話とか勧めないで!

 外堀埋めようとしないで!


 私は頭を抱える。

「コズエ、周りがどう言おうと私は君を尊重する」

「アルトリウスさん……」

「そうだともコズエ、君を大事にできないならおしまいです」

「アインさん……」

「コズエ様、貴方は貴方のままで」

「ティリオさん……」

 三人が私の肩を抱きしめる。

 安心できた。

「仕方ないな、ここまで言って勇気が諦めるように言っておこう」

「本当そうして……」

 私はつかれたように呟いた。

「ただ、梢も相手の行為にあぐらをかきすぎるなよ」

「うん、それは肝に銘じておく」

「ならいい」

 クロウはそう言って家を出て行った。

「ごめんね、三人とも、いつも我慢させて」

「いいんだ、君は私達を救ってくれたからな」

「そうですとも、コズエ」

「コズエ様、お心をしっかりと」

「うん」

 異世界だもん、結婚したら子どもは必ず持つものなんだろうね。

 でも、元の世界はそうでない空気が出て来ていたから、私はそれに染まっているのかもしれない。

 だけども──


 本当は、私も子どもが欲しい、我が子を抱きしめたい。

 そんな思いは未だ言えないままだった。







シルヴィーナ実は呪われていました。

なので服とかは呪い返しの服を実は着ていましたが、それでも用が足りない為梢の加護をクロウがシルヴィーナに与えました。

結果ハイエルフの里は大混乱です、実は。クロウの言う通り。

そしてクロウの梢へのセクハラ元い子ども作らないのか発言。

この世界では子作りはよほどのことが無い限り行われますが、梢はそれが怖い様子。

性行為も怖ければ、親になる勇気も覚悟もできていない。

けれども、子どもは欲しいという矛盾。

それを言うことができないので、梢は梢なりに自分で自分の首を絞めてます。

ふっきれれば楽なんですけど、それがまだできないんですよね、梢は。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。

次回も読んでくださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
本当に長老たちは碌なことしませんね!梢ちゃんの呪い返しでずっと苦しんでればいいんだ!ああいうのは大体懲りたりなどしないって決まってます(?)からね。大打撃を受けたとしてもまた何かしてきそうで少し怖いで…
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