冬の一日~梢、シルヴィーナの妊娠を漸く知る~
冬の一日、梢はどう凄そうかと悩んでいた。
すると、アインに抱きつかれ手料理を食べたいと言われる。
そこで台所に移動して──
「さて、冬はどう過ごすか……」
と、日課の聖獣のお世話と、温室の果物等の収穫。
それを保管室へと持って行く、あと自分の魔導冷蔵庫という名の小型保管庫。
「よし」
「コズエ」
「うわ⁈」
抱きつかれて私は驚く。
声でも分かるが振り返るとアインさんがいた。
「たまには、コズエの手料理が食べたいですねぇ」
「晩ご飯まだでしたか?」
「まだですよ」
「じゃあ、今から作るので待っててください」
「はい」
そう言って台所へ移動する。
ケチャップも大蒜抜きで作れるのが分かったから、オムライスにしよう。
ふかふかとろとろのオムライスに。
デザートは卵ということでプリン。
固めのを冷やした奴。
「ティリオさんと、アルトリウスさん呼んでー」
「分かったよ」
アインさんはそう言って家を出て行った。
しばらくして三人で戻って来た。
「コズエ、何を作ったんだ」
「オムライスにプディング! プディングが後で出すから先にオムライス食べてね」
「オムライスか、私は好きだな」
アルトリウスさんが言った。
「うん、私も!」
「私も好きですよ」
「私もです」
「なら良かった」
と言ってオムライスを出す。
ケチャップはお好みで使用して貰うことに。
「うん、卵がふわふわでとろとろなのがいい」
「コメでしたか、ケチャップとの相性もいいですね、中のフォレストチキンの肉とも愛称が抜群ですし」
「ええ、調和してますね。美味しいです」
「なら良かったよ」
と言いながらオムライスを食べる、うん、なかなかの出来。
その後のデザートのプリンも美味しく四人で頂き、ゆったりと暖かい飲み物を飲む。
私は紅茶を堪能、アインさんとティリオさんはホットミルク、アルトリウスさんはブラッドティー。
最初はアインさんとティリオさんも紅茶がいいって言ったんだけど、紅茶を夜遅く飲むと寝付き悪くなるかもしれないといったらホットミルクに変えた。
聖獣の銀牛であるシロガネのミルクは寝付きが良くなるし、お腹壊すこともないから有り難いだよね。
「さて、今日は何をしようかな?」
「私達と寝ましょうよ」
「や、この間ベッドで寝させられたじゃん」
アインさん、不服そう。
「服も作りたいし、アクセサリーも作りたいの」
「仕方ありません、我慢しましょう」
「そんかわり、私今日からベッドで寝るから、昼寝とかするさい、ベッドに来ても良いよ。それ以上は無理だけど」
「分かりました、そうさせて貰いましょう」
アインさんはそう言って立ち去った。
「おい、コズエ大丈夫なのか?」
アルトリウスさんが不安そうに言う。
「神様のお墨付き貰ってるし、具合悪いようなら棺桶で寝るから平気」
「そうか……」
「コズエ様、無理はなさらず」
「しないよー」
と言ってクラフト小屋に向かう。
起きてからやった黄金羊のゴルドの毛をクラフトしていたのだがどうなっていることやら。
フワフワの布と、滑かな毛糸等になっていた。
「よし、マフラーを作ろう、あとネックウォーマー」
家に帰り、クラフトでマフラーとネックウォーマーを作る。
フワフワの毛は布団に加工した。
「あー疲れた」
私は何となく外に出ることにした。
雪が降っている。
吸血鬼さん達がすんでいる居住区はどうなのだろうと足を向ける。
すると雪かきしている姿が。
「雪かきですか?」
「ええ、この森は豪雪ですからね」
着込んでいる吸血鬼の方々がそろって言う。
雪を避けて暮らしていたのですか?
「夜の都は雪が降らんのでな」
「へー」
「そして雨も降らん、だからブラッドフルーツの栽培は夜の都の外の村に任せていたのだ」
「あー、なるほど」
此処で新事実発覚。
「夜の都は年間を通して過ごしやすいが天気は変わらぬ夜の結界で覆われている」
「なるほど」
「愛し子の結界だ、ほころびること無く今にも至る」
「……でも、雪かきとか大変じゃあ無いですか」
「大変だが、子ども等が雪を楽しんでいるしな」
ヴェロニカさんは子ども達を指さす。
子ども達は教えて貰ったかまくらを作ったり雪だるまを作ったりしている。
「ここは子ども達の遊ぶ場所がある、交流する場所がある、吸血鬼の血を引いているからという事で差別されることがない」
「夜の都も……ああ」
「あの頃は子ども等はブラッドワインを不味いと飲みたがらなかったからな」
「なるほど」
「それにアエトス家の者という立場が邪魔して他の子と遊べなかったからな」
「あー……」
「家柄を幼い頃からそうだったよ、アエトスという家だけで皆が恐れ、敬う」
「それは辛いっすね」
「今はアルマだし、夜の都でもない」
「そうですね」
「ただ外出が天候に左右されるのだよな、雪はいい。雨の日は外出するなと子ども等にも言っている」
「雨?」
「ああ、愛し子様には関係ないのだな。吸血鬼は流れ水、雨も苦手だ」
「……」
道理でアルトリウスさんが雨の日外出したがらないのが今更ながら分かった。
私雨の日でも関係なく作業してるもんな。
「愛し子様も、あまり雨の日は平気とは言え無理はせぬようにな」
「はーい」
私は吸血鬼住居区を出て行った。
「コズエ様、こんな良い糸を下さり有り難うございます」
「これで布が織れます」
「梢様有り難うございます」
獣人や人、白狐さん達が集まっているところに頼まれていた布を織るための糸を渡しに来た私にそう言った。
集会場で皆がわいわいしていた。
吸血鬼の方々は布を織るというのがよく分からないので、教えて貰うことになっている様子だった。
「梢」
「なに、クロウ」
「シルヴィーナのところへ行ってやれ」
「?」
そう言えばここ最近シルヴィーナが姿を見せないなぁと思っていた。
それに少し前からゆったりとした服を着ているのも気になった。
私はハイエルフの居住区にいってシルヴィーナとレームさんの家の扉をノックする。
「はい! ああ、コズエ様でしたか」
「シルヴィーナは⁇」
「聞いて下さい、シルヴィーナ妊娠したんですよ」
「え?」
やることやってたんかこの二人。
じゃなくて、ハイエルフって中々子どもできないイメージだったけど⁈
「おめでとうございます。でも、ハイエルフってもうちょっと子どもを作るのに時間がかかるのでは?」
「其処は愛の力で!」
「レーム! 適当な事言わないの! ここは精霊と妖精が沢山いるから妊娠しやすい空間なんですよ私達ハイエルフにとって」
「そうなんだ!」
シルヴィーナのお腹は結構膨らんでいて、二つの光がぼやけて見えた。
「もしかして双子かな?」
「! 本当ですか⁈」
「いや光が二つ見えたから……」
「クロウ様も双子か、と言い残して立ち去ったのですよ」
「じゃあ、双子だね」
流石に男子女子は分からぬ。
「元気に大きくなってね……」
「と、言うことでシルヴィーナは体を大事にする為に安静にしていたのです」
「わかった、出産するまで体を大事にしてねシルヴィーナ」
「コズエ様、有り難うございます。ですがその間の護衛は?」
「クロウだけで十分でしょう」
「確かに……」
「だから体を大切にね」
「はい」
私はそう言って家から出て行った。
「シルヴィーナが妊娠かぁ、目出度いなぁ」
幸せそうなシルヴィーナとレームさんを思い出して心の中が暖かくなる気分だった──
進展はあまりないけど家族仲良く過ごすのが心地良かったみたいです。
これが梢とアルトリウス達の夫婦の形の一つ。
外に出てヴェロニカと会話をすると夜の都の事情をしれ、また吸血鬼の苦手なものを再確認します。
そして、村人達に頼まれていた布を織るための糸を渡すと、クロウからシルヴィーナのところに行けと言われます。
そこで妊娠を梢は知りますが、読者の方々は既に作中で一年弱近くに妊娠は発覚していた事を知ってます。
何故今梢が妊娠したのをしったのか、それはハイエルフの妊娠期間が長いからです、だから教えるまで一年近くかかりました。
でも、まだ産まれません。
お楽しみにして頂けると幸いです。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。