無自覚な誘惑
ベアトリーチェから貰った夜真珠でブローチを作った梢。
そんな梢をアルトリウスが呼び、アルトリウスのところに向かうと夜真珠を使った髪飾りを渡される。
どうしたのかと梢がアルトリウスに問うと──
ベアトリーチェさんから貰った夜真珠のおっきいのはブローチにすることにした。
うん、蝶をモチーフにしたけどなんだか良い感じ。
「コズエ、いいか?」
「アルトリウスさん、何ー?」
ブローチを仕舞い、アルトリウスさんがいるリビングに向かう。
「渡したい物がある」
「?」
と出されたのは夜真珠を飾りにした髪飾りだった。
「どうしたの⁈ これ⁈」
こんな高価な物、何処で。
「ベアトリーチェ氏の元で夜真珠の養殖の手伝いをしていたのだ、夜真珠は吸血鬼かダンピールの血が必要だからな」
「でも、こんな綺麗な髪飾り……」
螺鈿のような細工もされている。
「もう少し身なりに気を遣って欲しいからな、せっかくそんなに愛らしく綺麗なのに」
「愛らしく綺麗なのかどうかはさておき、畑仕事と家畜の世話だもん、仕方ないよ」
「それ以外の時つけてくれ、例えば結婚式とかな」
「確かにおめでたいことだもんね、いいよそういう時に付けるね。有り難う」
そう言ってアイテムボックスにしまうと、アルトリウスさんははにかむように微笑んだ。
顔が良すぎるからその表情に少しときめく、あとそれが自分だけに向けられるのが嬉しいと思う私は性格がちょっとアレだと思う。
うん、でもアルトリウスさんやアインさん、ティリオさんが格好良くて素敵すぎるからどうしてもそうなっちゃう。
「我ながら性格が悪くなってきたな」
と呟くと──
「性格が悪い? 何処がだ⁈」
「ちょっと性格悪いとはどういうことです⁈」
「何処をどう取れば貴方の性格が悪いんですか⁇」
ぎゃー!
どっから出て来た!
私は内心汗だくだくで挙動不審になる。
「いや、その。皆の特別な表情を自分一人独占してるのが性格悪いなぁって……」
「「「……は?」」」
ひー!
呆れられたー!
「何でコズエはこちらの我慢を壊しかねないことを言うのか」
「ええ、本当に、なんでこんなに愛おしいんでしょうかね?」
「どう育てばこの無垢さが生まれるのでしょうか?」
なんでだ。
どうしてこうなった。
理解が追いつかない。
私の現状、寝室で何故か改築したら置いてあったでかいベッドに皆で横になっていた。
私は皆に抱きしめられているような体勢。
なんじゃこりゃ⁈
神様ー!
『んもぉ、恋愛下手なんだか、男を煽るのが得意なんだかわかんなくなって来ちゃったわ』
頭の中に声が響いた。
もしかしてディーテ様⁈
『そう、恋愛と豊穣と出産の女神ディーテ、覚えてくれてて嬉しいわ』
ディーテ様、何故こげなことに⁈
『それは貴方が三人を無自覚に煽ったからよ、でも三人は我慢して添い寝で落ち着いてるの』
我慢って何⁈
『性行──』
わー‼
そこから先は聞きたくないー!
『それくらい煽る行為をしたんだから』
そんなに⁈
『この無自覚小悪魔ちゃんは……』
なんか色々とひでぇ!
『色々と無自覚に誘惑してる貴方も相当よ?』
無自覚ってどゆことー!
『呆れた、全くもう』
呆れられても分からんがなー!
『貴方が自分達の特別を独占しているのが意地が悪くて嫌ってところにも、彼らの男心は思いっきり動いたのよ』
いや、だって事実だし。
外での笑顔と、家での笑顔ではアインさん、ティリオさんは思いっきり違う。
アルトリウスさんは私以外ではお母さんであるリサさんにしか微笑まない、でも私に対する微笑みとは違う。
『異性に対して独占欲を抱いたことがなかったから、なんか嫌と思っちゃう貴方の無垢さにもね』
だって、異性は私のこと無視したり、いじめてきたから正直関わりたくなかったよ前の世界では……
『なるほど、前の世界では相当男運が無かったのね』
ですね……
『まぁ、そういう訳だから、もう少し発言に気をつけないと大人の階段六段飛ばしする羽目になるわよ』
怖っ‼
『いいこと? じゃあね』
ディーテ神の気配は無くなった。
無理矢理抜け出すこともできるが、それをやると目を覚ますだろうし、仕方ないので私も寝ることにした。
『まったく、ディーテの奴が言うように危機感は強いくせにそっちの危機感は弱いの?』
何故か神界にいた。
「どういうことですか?」
『お前さんはあやつらの我慢で貞操がなんとか保持されとるんじゃ』
「生々しいの止めてください。セクハラです」
『事実なんじゃからしかたないじゃろ!』
『そうよ事実なんだから!』
ディーテ様が出て来た!
どこに居た一体⁈
「いつの間に⁈」
『こっちきて直ぐよ』
「マジか……」
『梢ちゃん、貴方の伴侶達の夢に出たけどねー……即効で別人ってバレたわ』
「何してんです? もう一回いいですか、なにしてんです?」
『試そうかなって貴方の振りしたら即座にバレて仕方ないから正体明かす必要があったわ、じゃないと大変な事になってたもの』
「大変……?」
何だろう大変って。
『私の玉の肌に傷がつくの!』
「おい!」
思わずツッコんじゃったよ。
『梢、ほっとけ。ディーテはこういう面倒な奴じゃ』
『ちょっと主神様~~?』
「夢の中で切られるとか痛いんだから!」
「……ディーテ様って夢魔?」
『あー眷属にいるのぉ』
「いるんかい」
『恋の橋渡しをするように言ってるだけよ』
「本当?」
私は疑う。
『本当よ!』
『本当じゃよ、疑わしいかもしれんが』
「えー……」
面倒くさい女神様に目を付けられたよ本当。
『面倒くさいは余計よ!』
「事実じゃ無いですか」
『もう! 貴方には恋愛の理論が通じないからアドバイスしてるのにー!』
「恋愛って理性的じゃ無いから理論もクソもないんでは?」
『あるのよ一応!』
「へー……」
信じられない。
『もう、この子は!』
「サーセン」
『こら!』
『ディーテもその辺にせんか。梢も』
『はぁい』
「了解です」
『梢そろそろお前さんは起きた方がいいぞ、四人で寝てるのをシルヴィーナに見られておる』
「はい⁈」
ちょっと待ってくれ!
『あ、シルヴィーナとアインとティリオが出て行った、起きるならいまかの、じゃあの』
「ちょっと待ってー!」
最後まで言う前に、暗転した。
「……」
ちょっと体が怠いが目が覚めた。
まだ隣ではアルトリウスさんが私に抱きついていた。
「アルトリウスさん、起きてください」
「ん……」
アルトリウスさんは綺麗な薄い金色の目を開けると私をベッドに引きずり込んだ。
「ちょ、ちょっとぉ!」
「眠い……」
確かに眠いけど、棺桶で寝て欲しいという私の願いは叶えられなかった。
結局夕方まで起きてくれなかった。
梢、無自覚にアルトリウス達を煽る。
神々の愛し子とは言え、特に身分がない自分が他の人から見ても素敵な男性に見えるアルトリウスやアイン、ティリオを独占していることに自分性格悪いなぁと感じています。
何せ、そんな素敵な男性の笑顔を自分が独占しているからです。
ベタ惚れの三人からすると「何可愛いこと言ってるんだ? 絶対抱く」という状態になってるんですが、性行為はまだ許可が出てないので添い寝で我慢しました。
神様達も梢の仕草には呆れてます。
まぁ、梢の異性への苦手意識があるからなんですが
ここまで読んでくださり有り難うございました。
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。