イブリス教の終焉と冬の梢
太陽神イブリスから加護を貰った梢、だが朝になると眠たくなるのは変わりないので寝ることに。
そんな最中、イブリス聖王国基イブリス教を国教として信仰する国に大きな異変が起きていた──
『なんか加護増えてるがどうしたんじゃ?』
「なんか押しつけられたー」
私は少しげんなりして言う。
「日中が大丈夫っていっても、眠くなるのは代わりないし……」
私はそう言って欠伸をする。
「じゃあ、お休みー」
『じゃあの、儂も帰るか』
クロウは人間の姿になって出て行ったのを見て私は寝室に向かい棺桶に横になる。
「うーん、厄介ごとはこりごりだよぉ」
そう言いながら目を閉じた。
「何事だ⁈」
教皇は声を荒げた。
「各地の神殿のイブリス像が崩れ、奴隷達の隷属していた隷属の首輪が砂のようになり、各地で暴動が起きています‼」
「何⁈」
大司教の言葉に慌てて神殿へ向かう、そこには崩れた像があった。
『聞け、今のイブリス教の信者よ。我らは汝等を見放す。陽光は汝等を苛む者となり、罰を与えるものになるだろう。己の罪、よくよく反省するといい』
そして声が響き渡った。
「イブリス神⁈」
「そんな訳があるわけ無かろう‼」
「ですが──」
「教皇様、イブリス教の信者達は太陽の下に出ると肌が焼け焦げ出れなくなっています」
「何⁈ で、では神は我らを見放したと……⁈」
教皇はがくりと膝をついた。
『神様が呪っちゃったならいいか』
『そうだね、神様が罰を与えたならいいよね』
『もし、また悪い事をしたらやっちゃおう』
『愛し子様に手出ししたらやっちゃおう』
神殿の中を妖精と精霊がふよふよと移動しながらそんな事を話していた──
「ふぁーあ」
夕方いつも通り目を覚ます。
畑は休みだし、家畜──元い聖獣の世話くらいしか仕事が無い。
のんびりできる。
今のうちに春に植える野菜とか色々考えなければと思いスマホとにらめっこ。
『おーい、梢やーい』
「はいはい、クロウおじいちゃん、なぁに?」
小さな竜の姿のクロウを家に招き入れる。
『ちょっと妖精からの情報なんじゃが』
「何?」
ホットミルクを出してちびちび飲む様を眺めながら話を聞く。
『イブリス教、潰れたらしいんじゃ』
「あー……」
神様何かするっていってたもんな……と遠い目をする私。
『奴隷にされていたエルフやドワーフなんかは皆解放されて暴動を起こしてるそうじゃ』
「わお」
『特にイブリス聖王国はその暴動が酷いが誰も手出しできん、何せイブリス神からの呪いで太陽の下を歩けなくなったそうじゃからな』
「……イブリス様ェ」
やり過ぎじゃありませんか?
『まぁ、他のイブリス教を信じている所でも同じ事が起きてて、皆イブリス神に許しを請うているからな』
「ははー……」
取りあえず、神様には謝っとくスタイル。
それ神様の逆鱗触れるから余計止めた方がいいよ。
「で、奴隷達は?」
『皆馬車とかを奪って自分の故郷へと帰っているらしい』
「さよかー……ん? この国にもイブリス教あるよね」
『あるにはあるんじゃが、この国は主神デミトリアス様を信仰するのが国教じゃ』
あのお爺さんそんなすげぇ名前の持ち主だったの。
『獣人はデミトリアス以外に精霊や妖精信仰が主じゃの』
「へー」
『まぁ、愛し子のおぬしは引きこもりが基本だから関係無いじゃろうな』
「へーへーその通りですよ」
『そこまでふてくされんでもいいじゃろ』
文句を言いながら服を縫う。
自分用の服だ。
ロリータとかゴシックロリータも購入したミシンとかつかって作ったりしている。
クラフト能力様々だ。
「よっしできた!」
冬用の厚手のワンピース!
元いパジャマ!
せっかくだから、可愛い服きたいもんね!
『ずいぶん可愛らしい服じゃの』
「ふっふーん、漸くできた寝間着。春、秋、冬用。夏は別に作ってるよー」
それ以外にも、フリルが可愛い某ブランドの服と靴を作っている。
ヒールが高いけど、私用にヒール低めに。
まぁ、仕事すると汚れちゃうからめったに着ないけどね……イザベラちゃんが来たなら、綺麗な格好で出ないといけないし。
『……』
クロウは遠い目をしていた。
作っている服や靴、靴下、タイツやストッキングという物達全てにえげつない加護が付いていた。
梢のワンピース:梢の加護(強大)
破れ防止
よれ防止
対魔法防御
対物理防御
etc……
何より「梢の加護(強大)」がえげつない。
どうえげつないかと言われても説明のしようがない位に。
「クロウおじちゃん、どったの」
何か物思いにふけるクロウおじちゃんに話しかける私。
『いんや、なんでもないぞ? それより、儂葡萄酒とチーズ欲しいのぉ』
「全く、赤い奴でいい?」
『おお、それじゃそれじゃ』
呆れつつ、堅い蔓で編んだ籠にチーズと赤ワインを入れてあげる。
『じゃ、儂は帰るぞ。良い夜を、じゃなー』
「ええ、良い夜を」
扉を開けて飛んで行くのを見送る。
見上げると月が煌々と輝き、星々は煌めいていた。
「綺麗な夜空……でもちょっと寒いわ」
私はそう言って家に引きこもる。
「さて、服作りとか続けよ」
私はそう言って朝まで作り続けた。
「んあ?」
気づいたら寝落ちしていた。
そして目の前には大量のマフラー。
寒いから無意識に作りまくっていたのだろう。
「……」
やることは一つ。
「こ、これ黄金羊の毛で作ったものですよね⁈」
色は染めているが毛糸で作っているということで村人にバレた。
「貰っておいてください、冬しか使いようないですけど」
自分用の青いマフラーをして私は村人に微笑む。
「どうぞ、使ってくださいな」
「有り難うございます、コズエ様には本当に頭が上がらない……」
「ははは……」
大げさだなぁと思いながら私は村人とクロウおじちゃん、シルヴィーナさんに、リサさんに配り終わるとアルトリウスさんを探した。
ブラッドフルーツの木の所に居た。
「アルトリウスさん」
「コズエ、どうしたんだ。ブラッドフルーツは冬は実らないぞ」
「宜しければ……」
「これは、襟巻き?」
「はい、マフラーっていいます。冬は寒いですから」
「私にか?」
「うん、あ……迷惑でした?」
元々の引っ込み思案が此処で出てしまう。
吸血鬼になってハイテンションになっていたが、私の素は根暗だ。
「いや、感謝する。有り難う」
「ふぅ、良かったです」
私は安堵の息を吐き、アルトリウスさんと別れて家に帰った。
「次は手袋作ろうかな?」
もうそんな案が浮かんでいた。
楽しくて仕方ないの!
イブリス教の信者ほぼみんなイブリス神に呪われています。
なので夜しか動けなくなるでしょう。
ただ、これで大人しくなるイブリス教の連中なのでしょうか?
梢は冬を満喫中。
色んなものを作って冬を楽しみ、村人達とも交流中。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。