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前の愛し子に恋をしている画家

梢は家が薪が要らなくなる条件を調べていたら子どもを出産する必要があると書かれて居てて頭を抱える。

なので、いったん家の改築を保留していると、森の入り口に何者かがやって来たのに気づき、クロウ達と森の入り口に向かう。

その存在は梢の姿を目視するとフードを脱ぎ──





「よし、終わった!」

 畑仕事、聖獣のお世話、畑の整備などを終わらせる。

「もうじき冬だもんねぇ。薪はアルトリウスさん達と精霊と妖精が頑張ってくれたから問題ないし……」

 といって再度思う。

「そういや何で未だうちだけ薪必要なんだ? 他の家は必要ないのに」

 クラフト画面を見る。

 どうやら最上級ランクにならないと我が家から薪が必要な生活は無くならないらしい。

 畜生神様最上級ランクってなんだよ。

 と思ってみると。


 条件

 子ども一人以上出産後

 材料、お好みで


「ファー⁈」

 嫌がらせにも程がある、子ども産んで、その上で改築しないと薪不要の家にはならないらしい。


 もう一度言う、嫌がらせにも程がある!


 当分先じゃねーか!

 そもそも子ども産むのだけが女の幸せじゃねーんだぞ!

 いや、子ども欲しくないかと問われたらこの世界で税金問題とかあれこれないから欲しいけど!


 産む! 勇気が! ない!


「もう、色々面倒くせぇー」

 私は疲れ切った顔で言う。


『愛し子様、お疲れ?』

『お疲れ?』


 妖精と精霊達がわらわらとやって来る。

「ちょっとだけ疲れてるの、そっとしてくれると──」

『愛し子様、ブラッドフルーツ!』

『食べて!』

 とブラッドフルーツを持ってきた。

「じゃあ、いただこうか」

 私は笑って受け取り、切り分けて食べる。

 体の疲れが取れるようだった。


「取りあえず、家の事は保留しよう」


 考えると面倒だからね。


 あれ?

「誰かが来ているな」

 森の入り口に誰かが来ているのが分かった。

 クロウとシルヴィーナに声をかけて森の入り口に向かう。



 フードを目深に被っている人物がいる。

 匂いから吸血鬼と分かった。

 その人物は私を見るとフードを取り、喜色満面の顔になった。


「マリー!」

「え? 誰?」


 身に覚えが無いし、マリーは鞠子お祖母ちゃんのこっちでの名前だ。

「私だよ、レイジ・フェルナンだよ!」

 近づくその吸血鬼に若干身の危険を感じる。


 クロウが割って入る。


「前の愛し子マリーは神に召された、ここにそっくりに生まれた梢という新しい愛し子だ」

「嘘だ! きっとマリーの生まれ変わりなんだ! 僕は信じないぞ!」


 残念、マリーはお祖母ちゃんです。

 とか考えてたらクロウはドラゴンの姿になった。


『愛し子を待つ故に吸血鬼になった画家よ、お前の愛した愛し子はいない、ここに居るのはそれを引き継いだ愛し子だ』

「な、ならマリーの生まれ変わりのはず!」

『マリーは神界にいる、そのマリーから梢は引き継いだだけだ』

「そんな……」

 吸血鬼の方はやっぱりじっと私を見る。


「それでもマリーだ、マリーそっくりなんだ、今度こそ僕が守るんだ!」


 ギャー!

 キマっちゃってる感じで怖い!

 そう思ってると、アルトリウスさん、アインさん、ティリオさんがやって来た。


「な、なんだお前ら!」

「コズエの伴侶だ」

「レイジ・フェルナン。生涯、愛し子マリーの絵を描き続けていた画家と聞きましたがまさか吸血鬼化してるとは」

「コズエ様、下がってください」


「愛し子は僕のものだあああああ!」


 襲いかかってきた。

 ティリオが粉のような物を拭きかけた。

 アルトリウスさんは私を抱きかかえて距離を取る。


「ぎゃああああああ!」

 吸血鬼は地面に転がりもだえ苦しみ始めた。

「ティリオ、何したの?」

「吸血鬼とダンピールに効く毒を拭きかけただけですよ、皮膚からも浸透するので逃げられません」

「Oh」

 吸血鬼は血涙を流してこちらを見ている。

「ぎいぃいいい!」

 それでも襲いかかろうとした時、アインが何か合図らしき物を送るとアルトリウスさんは黒い布で私達を覆った。

「ぎゃああああああああ!」

 何が起こってるのか分からない。

「ねぇ、何が起きてるの⁈」

「光の精霊と妖精達に命じて陽光を再現しているのですよ」

「うわ……」

 えげつない。

「その布は陽光を完全遮断するから出てくるなよ」

 クロウが言っている。


「疑似的な陽光だが、吸血鬼には猛毒だ、分かっているなら梢には関わるな」

「ぎぃいいいいやだ!」

 文句を言っているようだ。

 どうすりゃいいんだ。

『レイジ、梢に付き纏うのは止めて頂戴』

 あれーお祖母ちゃん……マリーさんの声が聞こえるぞ?





『レイジ、梢に付き纏うのは止めて頂戴』

 透けている前の愛し子の登場に全員が驚愕する。

 クロウも驚いていた。

『妖精と精霊の愛し子さん、光を消してくれる?』

「あ、ああはい」

 前の愛し子(マリー)はアインにそう頼むと光は消えた。

 焼けただれたレイジに、マリーは近づく。

「あ、ああ! マリー! 僕のマリー!」

 レイジは手を伸ばすが、透けている体を掴むことはできなかった。

『デミトリアス神にお願いして来ているから死んでいるのは変わりないのよ』

 マリーは首を振る。

「マリー……」

『クロウ、久しぶりね』

 マリーはクロウに微笑みかけた。

『それとレイジ、梢は私とまるっきり別存在なの、だから付き纏おうとか考えないで、家に戻って頂戴』

「マリー、どうして、どうして……」

『あの日、処刑された日に私はこの世界に愛想が尽きたの、だから今は梢に託すの』

「私にも愛想が尽きたのかい……?」

『そうは言ってないわ、でも世界全体で見て嫌になったの』

 クロウは嘘だと分かっていた。

 マリーは今も世界を愛している事を理解できている。

 それが表情から分かった。


 ただ、レイジに諦めて貰う為になんとか喋っているようだった。





「……」

 お祖母ちゃん嘘つくの上手だなぁ、私は全然できないけど。

 布を取って眺めている。

「……本当にそっくりだな」

「うん、びっくりするくらい」

「ええ、そうですね」

「これほど似てると厄介ですね」

 三人三様なんか色々言ってる。

「マリー、なんでどうして……」

『貴方はもう自分の人生を歩んで欲しいのよ、私を忘れてとは言わないわ、でも梢と私を同一視するのは止めて欲しいの。梢には三人も旦那さんがいるのよ』

「な⁈」

『私はどこの国の王族とも貴族ともそういう関係になりたくなかったからそれでいいの、愛する人はいなかったから。でも梢には愛する彼らがいる、それを邪魔しないで頂戴』

「前の愛し子もそう言って居る、帰るがいい」

「うう……」

 泣きながら吸血鬼の方は帰って行った。

『では、私も帰るわ、梢を宜しくね、皆さん』

 そう言ってお祖母ちゃんも帰っていった。

 私は手を振って見送る。

「じゃあ帰ろっか」

「そうだな」

 六人で村へと帰っていった。







結構前の話で出た、稀代の画家レイジ・フェルナンです。

愛し子が前の愛し子そっくりという情報をどこかから仕入れてきたようです。

また、愛し子との再会を夢見て吸血鬼に変貌しています。

前の愛し子──マリーに心の底から恋をしていて、愛していて、だからそっくりな梢にもそれを向けたんですが、梢はお断りしてます。

だって、アルトリウスやアイン、ティリオが居ますから。

そもそも、前の愛し子に似てるからという理由で好かれても嬉しくありません。

クロウは梢とマリーを別人と捉えてその上で梢を気に入ってますし。

アインとティリオにボコボコにされても諦めないフェルナンでしたが、前の愛し子マリーの言葉で諦めて帰って行きました。

きっと此処にくることはない……のかもしれません。

唯一人の画家として来る可能性はなきにしもあらず。

取りあえず、ゴタゴタはマリーのお陰で終わりました、梢の祖母は演技が上手いですね。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。

次回も読んでくださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
子ども1人以上出産で(笑)。神様も何気に楽しみにしているんでしょうかねぇ?(^^; それにしても梢ちゃんのおばあちゃんに会いたくて吸血鬼化するなんてなんかすごいですね。わたしとしても、もうこれから梢ち…
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