梢の行動~添い寝~
クロウと会話する梢。
祖母の事だが、クロウは知っていただろうと指摘するとあっさりと肯定。
その中で夫婦間のやりとりについて色々話合う二人。
また、梢の初心加減は祖母由来という事を話したりする。
そんな会話の中で、梢は添い寝だったら平気と言いだし──
「なるほど、六百年前の愛し子はお前の世界に転移して髪色も目も変わり、名前も新しく貰って暮らしていたお前の祖母だった訳か」
「とか言ってるけどクロウ知ってたでしょう」
私はジト目で見る。
「バレたか」
「そりゃあクロウは神様から色々聞いてるだろうから知っててもおかしくなかったのよ」
「で、久々の祖母との対話はどうだった?」
「うん、落ち着いた。お祖母ちゃんと話せたのは気が楽になった」
「それは何よりだ」
クロウは満足そうに紅茶を飲む。
「まぁ、精神世界の時間の流れがこちらより遅いのは分かったが二日も寝込んでいるとは思わなかったな」
「それはスミマセンデシタ……」
「謝るのは我じゃなくあの三人だぞ」
「ソウデシタ……」
あの日以来中々離してくれなくて、畑仕事や聖獣の世話でも監視され、クロウの家に行くと言ったらついて行くと言ったので「クロウにしか話せないことだから分かって」と、怒鳴ったら漸く自由になった。
過保護が過ぎると疲れる……
でも、その原因全部私なんだよな。
いや、その前に口にキスしたのが原因なんだけどもっと根本的に言うと。
お祖母ちゃんと話したから冷静になれる。
でもまぁ、またキスしたら奇声を上げて逃げない可能性は捨てきれない。
「少しずつ慣れないとなぁ」
「自覚は出たのか」
「お祖母ちゃんに言われてね、私がそういうの苦手なのはお祖母ちゃん譲りを悪化させたものだって思う事にした」
「確かに前の愛し子は恋人を作らなかったな」
「そうなんだ」
「聞いたら、そういうの恥ずかしいからと言っていた」
お祖母ちゃんもお祖父ちゃんに会うまでは恋人作らなかったんだなぁ。
そう言えば、お祖父ちゃんお祖母ちゃんにかなりアプローチしてその上で結婚申し込んだって言ってたな。
お祖父ちゃん、お祖母ちゃん奥手でその上気付いてくれないから大変だったって言ってた。
まぁ生前言ってたしな、お祖父ちゃん死んじゃったしお祖母ちゃん置いてぽっくり。
あの時泣いてたお祖母ちゃんみたの初めてだったな。
お祖母ちゃん、それだけお祖父ちゃんの事が好きだったんだろうな。
とか考えていたら。
「お前の祖父母の件は置いておけ、あまりあてにならん」
「むぅ」
このドラゴン人の思考でも読み取ってるのか?
「神からお前の思考は大体聞いている」
「ちょっと神様ー?」
ここに居ない神様に文句を言う。
「さて、お前と奴らの今後の関係所為だが、どういう夫婦生活にしたい?」
「それは一緒にいるだけでいい夫婦生活?」
「それだと奴らに我慢を強いるぞ、奴らお前が愛しくて仕方ないみたいだからな」
「むぅー」
ちょっと困る。
前回の出来事もあるし、段階をもっとゆっくり踏んで欲しい。
「まぁ、段階は踏む必要はあるだろう、かなり遅いペースでな」
クロウが言う。
「取りあえず、口にキスはしばし止めろと言っておいた」
「ねぇ、お祖母ちゃんに言われたんだけど、棺桶じゃないところで一緒に寝るとか駄目」
「それは平気なのか?」
「うん」
「キスは駄目で添い寝は平気とは、やはり血は争えんな」
「はい?」
「いや、こっちの話だ」
「まぁ、その件は我から話しておく」
「え?」
「お前はちょっとイリスのところでも行ってサフィロの面倒を見るのを手伝っておけ」
「はーい」
私はクロウの家を出ると、三人がクロウに捕まって家に引きずり込まれていた。
若干ホラーだな。
「──と、いう話をしていた」
クロウは三人に話していた。
「「「……」」」
「キスは駄目だが添い寝は平気だそうだ」
「どういう基準ですか?」
「同感です?」
「何かおかしいんじゃないですか?」
三人は梢の危機感に疑問を持った。
「失礼な発言だが、彼奴の祖母がそうだったらしくその特質を梢はばっちり受け継いでいた」
「ただ添い寝をするだけですよね?」
「そうだ、それ以上の行為は禁止だ」
「生殺しにも程があります」
「ですがそれは我慢しないといけないんですよね」
「そうだ」
「「「……」」」
「本人はそれには乗り気だが、お前達が嫌なら──」
「受け入れますよ、コズエに触れたいですから」
「同感です、私もコズエに触れたい」
「私もです、コズエ様に触れたい」
触れたいというのは三人とも同じだった。
「分かった、では梢にやってもいいと伝えてくる」
「はい」
「キスは頬までなら大丈夫そうだと予測する、口はまだアウトだ」
「分かりました……」
「ではな、家に戻っていろ」
クロウはそう言ってイリス達の屋敷へと向かう。
「すーぷないない?」
「あるよー」
「たべる?」
「たべりゅ!」
サフィロ君は器をばんばんとたたいてスープのおかわりをおねだりする。
イリスさんは苦笑して器を持ちスープを入れる。
サフィロ君は前掛けに垂らしながらスープを口にしていた。
「梢はいるか?」
「はいー、クロウどうしたの?」
「ちょっと来い」
「うん、じゃあイリスさん、グレイスさん失礼します」
「いや助かったよ」
「助かりました」
「いえいえ」
「ばいばい?」
「またねだよ」
「またにぇ!」
私はサフィロ君に微笑んで屋敷を後にした。
クロウの家に行き、椅子に座らされる事無く告げられる。
「添い寝の件だが三人はいいそうだ」
「本当? よかったー……」
私は安堵する。
「まぁ、最初はアルトリウスになるだろうな、狭い棺桶で」
「アルトリウスさんの棺桶かなり広いよ?」
「……そうか」
何か言いたげだったけど分からず。
取りあえず、いつも通りの畑仕事や整備などをして家に帰ってお風呂に入った。
「……」
アルトリウスさんの棺桶を開けるとアルトリウスさんが寝ていた。
なので隙間に入って棺桶を締めて目をつぶった。
自分の体温とは違って普通のダンピールの少し冷たい体温が心地よかった。
朝、起きるとアルトリウスさんはいなかった。
朝食を取ろうとしたにいくと、アルトリウスさんやアインさん、ティリオさんが手を組んで何か考え込むような姿勢を取っていた。
「おはよう、みんなどったの?」
「! ……おはよう、コズエ」
「コズエ、ご機嫌よう」
「コズエ様、ご機嫌よう」
声をかけると皆いつもの態度に戻った。
「何考えてたの?」
「いや、何も?」
「それより、今日の食事はイチゴつきジャムとパンとミルクだ」
「苺のジャム好きー!」
食い気の方が買ったので早速ジャムつきのパンを食べてミルクを飲み一息つく。
「じゃ、ちょっくら畑に行ってくる!」
と言うと三人とも快く送り出してくれて。
「──で、どうでした」
「どうもこうも聞くな。途中で目覚めて絶叫しなかった自分を褒めたい」
「でしょうね……」
「多分近いうちにお前達のベッドにも侵入するぞ、コズエは」
アルトリウスは少しクマのある目で二人に言った。
「……心構えはしておきましょうか」
「そうですね……」
アインとティリオは静かに頷いた。
どうやら梢はちょっと恥ずかしい内容の部分がずれている様子。
口にキスは恥ずかしいが、添い寝は恥ずかしくない、寧ろ歓迎。
旦那勢は生殺しに状態ですが、梢に触れたい為それを受け入れます。
が、やっぱり途中目覚めた時に自分の側でのんきに寝ている梢を見ると眠気がぶっ飛ぶ様子。
さて、これからどうなるのでしょう。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。
次回も読んでくださると嬉しいです。