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精神世界で真実を知る

目を覚ますと、いつもの光景だったが、家を出ても村から人の姿が消えていた。

ユグドラシルに声をかけても答えてくれない。

そんな状況にとある人物が姿を現し──





「ん……」

 目を覚ますと棺桶の中だった。

「えーと私は……」

 記憶が曖昧だ。

 何か土っぽい。

 誰も居ない家を歩き、水鏡の魔導器で自分を見ると土で汚れていた。

 ジャージを魔導洗濯機の中にぶち込んで妖精と精霊に洗って貰う。

 そして風呂場に入り髪や体を洗い、お風呂に浸かる。

「あ゛ーしみるー」

 お風呂の温かさに包まれ、シャツとかを身につけて下着姿で家を移動し、自分の部屋で新しいジャージに着替える。


「んー誰も居ないな、なんでだろう?」

 畑や家畜小屋に向かうが居ない。

 果樹園にもいない。

「あれー?」

 アルトリウスさん達が居ない、どうしてだろう。

 村に向かうが、人気がない。

 私は怖くなってクロウの家をたたくが返事がない。

 ユグドラシルの元に行くが返事がない。

「どうなってるの⁈」

 困惑する私。

 すると、声が聞こえた。


「ここは貴方の精神世界だから今は誰もいないのよ」

「誰⁈ って……前の愛し子様?」

 そこに居たのは私と髪と目の色が違うだけのそっくりさんな前の愛し子様だった。

「マリーよ、宜しくね」

「えっと、どうしてこうなってるんですか」

 私は怖々と尋ねる。

「貴方が羞恥心のあまり自分の精神世界の中に閉じこもってしまったのよ」

「え゛?」

「覚えてない?」

 マリーさんに言われて必死に思い出そうとして──

 ぼっと顔が熱くなった。

「う゛ぁー!」

 頭を抱えてその場に蹲る。


 誰にもこんな顔見られたくない!


「誰にも見られたくない、その思いがこの精神世界に影響をしていて誰もいない精神世界になっているの」

「え゛⁈」

 だから誰も居なかったのか。

「それに貴方が無意識だけど強固にそう思ってるから精神世界に閉じ込められちゃってるのよ、自分自身が」

「え゛ー⁈」

 そんな馬鹿な話があるか⁈

「じゃ、じゃあなんでマリーさんはいるんですか?」

「デミトリアス神様に頼んで貴方の精神に入らせてもらったの」

「は、はぁ……」

「それに女の子同士の方が話せるでしょう」

「でも、マリーさん……」

 恋愛しないで死んだんじゃ無いのかな?

「私、貴方に嘘をついたの」

「え?」

「私は神界にいけるけど死んでないの生きた人間なの」

「え⁈」

 びっくりだよ!


「私は神の雷で別世界に転移させてもらい、そこで名前を貰い夫と出会い、結婚して子どもを沢山もうけて、もう孫も居るお祖母ちゃんなの」

「うっそーん!」

「精神世界では若返っているけども」

 マリーさんは茶目っ気たっぷりに笑う。


「その沢山いる孫の一人がふと見ると辛そうな顔ばかりする女の子なの」

「……」

「生き辛いと愚痴る子だったわ」

「……?」

 ちょっと、待って。

 その孫ってもしかして……

「最期に直に会ったときは遺書を私に渡して居なくなったわ」

「ま……」


「鞠子お祖母ちゃん……?」


 私は声を絞り出した。

 マリーさんは微笑んだ。

「梢ちゃん、よく頑張ってきたわね」

「お祖母ちゃん!」

 私はマリー(お祖母ちゃん)に抱きついた。

「よしよし、色々溜め込んでいたんだねぇ」

 優しいお祖母ちゃんの声色になっていて、姿もお祖母ちゃんの姿になっていた。

 大好きな鞠子お祖母ちゃんだった。

「嘘をついてごめんね、神様達と相談して内緒にすることにしてたんだけど、一人思い詰める梢ちゃんのことを考えたら喋るほうがいいとおもって今回明かしたんだよ」

「うう゛ん……神様が言うなら仕方ないよ、あの時だったら私は混乱してるどころじゃないから……」

 お祖母ちゃんが涙を拭ってくれる。

「梢ちゃんからお祖母ちゃんは聞きたいな、どんな事があったの?」

「あのね、お祖母ちゃん──」


 私はこの四年間の話をした。

 神様からこの世界に転生転移させられたことも。


「お祖母ちゃん、梢ちゃんが吸血鬼になったの少しだけびっくりしたけど、梢ちゃんは吸血鬼が昔から好きだったもんね」

「うん! お祖母ちゃんの孫だから愛し子になれたの?」

「それはなんとも言えないの、私が愛し子を止めて普通の人間になったから空席になってたところに梢ちゃんが来たでしょう? 吸血鬼ですろーらいふ? それをするには愛し子という立場が役に立つと思って私にこっそり聞いて私は梢ちゃんが幸せに暮らせるならと許可したの」

「そうなの?」

「愛し子を止めても権利は私にあるからね、だから孫である梢ちゃんに譲渡したの」

「じゃあ、お祖母ちゃんもう愛し子になれないよ?」

「いいのよ、梢ちゃんの夢の為なら」

「お祖母ちゃん……」

 罪悪感が湧いた。

 愛し子の権利をお祖母ちゃんから奪ってしまったようで。

「梢ちゃん」

「何、お祖母ちゃん?」

 お祖母ちゃんは私を抱きしめてくれた。

 優しい白檀の香りがした。


「私は梢ちゃんにあげたの、梢ちゃんは奪ったわけじゃ無いのよ」

「でも……」

「死んだら次は神界で梢ちゃんをずっと見守ることにしているの」

「お祖父ちゃん寂しがるんじゃない?」

「まさか、溺愛してた梢ちゃんの様子を私が一人だけ見れるのに嫉妬するわよ」

 お祖母ちゃんはカラカラと笑う。

「それで、三人の旦那さんとの関係に悩んで居るんだっけ?」

「うん……好きなんだろうけど、いざそう言う行為とか考えると恥ずかしいし、怖いしできないし……」

「今回も口にキスでこういう事になっちゃったもんね」

「うう……」

 恥ずかしい。

「でも気持ちは分からなく無いよ」

「本当?」

「だってお祖父ちゃんとキスした時、私は二日はお祖父ちゃんの顔まともに見られなかったからね」

「お祖母ちゃんもそうだったの⁈」

「梢ちゃんの初心さは私のを悪化させたものかもねぇ」

 お祖母ちゃんはしみじみと語る。

「初夜なんて何もしないで終わっちゃって子ども作る行為するのに丸一年はかかったもの、梢ちゃんも初夜は何もないでしょう?」

「それどころか棺桶とかベッド別々で寝てる……」

「あらあら」

 お祖母ちゃんはぎゅっと抱きしめた。

「ちょっと大変だけど、梢ちゃんは自分から一歩歩みよる勇気が必要ねぇ」

「歩み寄る勇気」

「棺桶で寝なくてもちょっとは平気でしょ?」

「一緒に寝るってこと?」

「相手さんは生殺し状態だろうけど、其処は我慢して貰わないと」

「?」

 私は首をかしげる。

「梢ちゃん、自分でできるところから初めて見るの」

「お祖母ちゃん、体透けてる⁈」

「そろそろ戻らないと私も死んじゃうからね、また会えるからね」

「うん!」

 お祖母ちゃんが居なくなり、空を見る。

 空が光って崩れる。


 眩しい──





「コズエはまだ起きないのですか!」

「神が前の愛し子の説得が完了したからもうじき起きる」

「本当ですか? クロウ様」

 クロウはシルヴィーナの言葉に頷き、棺桶で二日程微動だにしない梢を見つめる。

「ん……」

 梢は身じろぎをして目を開けた──





「……お、おはよう?」

 私がそう言って体を起こすと、アルトリウスさん達三人が抱きついてきた。

「わわ……!」

「もう起きないかと思った……!」

「心配させないでください!」

「本当です、コズエ様!」

「……うん、ごめん、次はないように努力するね」

 そう言って三人の頬にキスをした。

 目を丸くする三人。

「ごめん、自分からはこれが精一杯だから……」

 三人は破顔して再度私を抱きしめた。

「ぐ、ぐぇえええ助けてクロウ、シルヴィーナ」

「少しはそうしていろ」

「クロウ様いいのですか?」

「圧死はないだろうからな」

「ひ、非常だぁ」

 そう言う私に、クロウはやれやれといった表情を浮かべていた──







梢にネタばらし回です。

前の愛し子マリーは梢の祖母で、鞠子という名前です。

お祖母ちゃん子だった梢は鞠子に会えたことで気持ちに少し整理を付けられました。

まぁ、その結果三人に抱きしめられるんですが。

鞠子も長時間居られるわけじゃありません、まだ生きているのですから。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。

次回も読んでくださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
まずは前回の返信ありがとうございます。そうです、親です。いつも作者様の作品をニマニマしながら見てますので、そろそろ読む部屋を変えようかと思ってるところですね笑 まさか精神世界に無意識で閉じこもってたと…
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