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梢の初心すぎる乙女心

梢の初心さの深刻具合にクロウが女性陣と話合う。

羞恥のあまりに棺桶にはいり、棺桶で暴れるというある種のポンコツっぷりに女性陣もお手上げ状態。

解決策が出ないまま、クロウはシルヴィーナと梢の様子を見に行こうとする──





「クロウ様、どうなさいましたか?」

「シルヴィーナを借りるぞ、梢の件で話がある」

「分かりました、レーム行ってくるわね」

「ああ」

 クロウはそう言って既婚の女性陣を集めた。


「梢の初心さはかなり問題だ」


「どうなんですか?」

「手を繋いでるのを見られそうになれば即座に手を離すし、口にキスされたら一日使い物にならん」

「男性に馴れらっしゃらないのですね」

 シルヴィーナが困ったように言う。

「普通に接するだけなら問題無い、恋愛感情を巻き込むとポンコツだ」

「エンシェントドラゴン様、愛し子様をそこまで言う必要はございますか?」

 ヴェロニカが反論するように言う。

「お前達は恋愛沙汰でポンコツになる梢を見ていたいか?」

「それはちょっと見たくはありませんね……コズエ様のプライドもありますでしょうし見られたくないでしょう」

「だから慣れて貰わねばならん」

「しかし、どれほどポンコツになるのですか?」

「奇声を上げて棺桶まで逃げて頭棺桶の中に打ち付けてのたうち回る位ポンコツだ」

「……それポンコツというか羞恥心では?」

「まぁ、それも当てはまるが……丸一日使い物にならなくなるんだぞ?」

「確かにそれは重大ですね……」

「今は我が梢が抜けた穴を埋めているが、どうなるか分からん」

「もしかしてコズエ様は……」

「今棺桶の中で暴れているぞ」

 女性陣は頭を抱える。

「これ、絶対当分コズエ様ポンコツな予感がしてます」

「愛し子様には言いたくないが、ここまで初心でポンコツだとは」

「ポンコツと言うか、羞恥心が度を過ぎているように思えるな」

「梢がこのまま使い物にならないのは困るのでちょっと話してくるか」

「私が話しましょうか?」

 クロウにシルヴィーナが言う。

「どちらかと言うとついてきて貰いたい」

「畏まりました」

 クロウはシルヴィーナを連れてその場を後にした。





「はぁ……」

 私は棺桶から逃亡してユグドラシルの根元にいた。

『どうしたの梢?』

「ちょっと自己嫌悪に陥っているだけ」

『自己嫌悪? どうしてです?』

「いや、結婚したらそういう事する可能性は高いのは理解してたけど……」

『生殖行為ですか?』

「いやいや! 其処までいってない!」

 慌てて否定する。

 生殖行為って生々しいななんか。

『これは失礼しました、何せ木なので』

「だよねぇ……」

 なんで木に愚痴りにきてるのだろう。

『ちょっと待ってくださいね』

「?」

 ユグドラシルから緑の髪に白い肌、緑の目の白い衣の女性が出て来た。

『これで少し話しやすいでしょうか?』

「ゆぐ、どら、しる、さん?」

『はい』

 女性元い「ユグドラシル」は笑った。


『口づけだけで何もできなくなる自分が嫌なんですね』

「ほっぺあたりまではやっていたけど、口となるとどうしても無理っぽい」

『でも、嫌いという訳で無く、ただ恥ずかしいという訳なのですね』

「そう」

 私は「ユグドラシル」と話をしている。


 どうやら彼女は精霊化しているそうだ。

 これができるのは世界樹ユグドラシルだけらしい。

 他の世界樹はできないっぽい。


『本当に愛しているのですか? まず大前提として』

「え?」

『梢、貴方はあの三人が死ぬ運命を知って受け入れたから其処に愛はないと思います』

「……それはそうだけど」

『別れた方が良い場合もありますよ?』

「いやいや! それは止めて! あの三人が居ないのは考えられない‼」

 そう言うと「ユグドラシル」はにっこり笑っている。

『愛してらっしゃるじゃないですか、ちゃんと』

「うぐー……」

『梢、貴方は愛しているけど、それを自分で表現するのも苦手で、相手から表現されると恥ずかしくてたまらないんですね』

「ハイ、ソウデス……」

『ユグドラシルで単一生殖の私が言うのはアレですが……』

「?」

『此処で結婚式を上げた乙女達のように、彼らの事を考えている貴方は愛と恋を知る乙女の顔をしてますよ』

「どういう顔⁈」

 私は顔をむにむにと触る。

『貴方は無自覚に恋をして、無自覚に愛する故に自覚すると恥ずかしくなるのでしょう』

「なんか難しい……」

「無自覚だから自覚すると、羞恥心が出てポンコツになるのだろう」

「クロウ!」

「ちょっと聞いてましたすみません、コズエ様、好きなのに好きを刺激されると羞恥心で駄目になるんですか?」

「シルヴィーナまで……」

 自分の恥を見られているようで、恥ずかしくなってくる。

『あまり梢を言うのはやめてさしあげて、梢は乙女なのですから』

「年齢は乙女じゃないんですけどね……」

 もう29歳過ぎてるし……確か30歳位か?

「コズエ様、年齢で乙女が決まるものではないですよ。心が乙女なら乙女ですよ!」

「……」

 シルヴィーナよ、乙女にも年齢制限があると思うぞ。

 でも……

「……このままじゃ駄目なのは分かってるんだけど無理なんだよなぁ」

 恥ずかしくて。

「梢の乙女心は厄介だな」

『梢の乙女心は厄介なのではないのですピュアなのですよエンシェントドラゴン様、それでは梢の心を否定するようなものです』

「そうですよ、クロウ様」

「む、悪かった」

「でも、今はあの三人の顔を見るだけで思い出してちょっと冷静に居られない」

 ぶっちゃける。

 キスの感触を思い出してちょっと冷静ではいられない。

 ちょっとじゃねぇや、平常心無理だわ。

 奇声上げて棺桶に入ってもだもだするわ。

『そんなに恥ずかしいのね』

「ええ、顔を見たら棺桶に突撃する勢いで入って蓋して中で暴れるよ、多分……」

「相当だな」

「コズエ様」

『でも、此処に棺桶はないですよ?』

「……土掘って埋まる」

「おい」

「流石にそれは止めましょう」

 クロウとシルヴィーナが止める。

 だってしゃーないじゃん!


「コズエ!」


 アルトリウスさんの声に硬直。

 ぐぎぎと首を動かすと三人の姿が。


「ヴァー‼」

 地面に穴を掘って埋まる。

 息苦しいとか無いから平気だけど、情けない。

 ぐすん。





「お前達本当にタイミングが悪いな」

 クロウは呆れたように梢が埋まった場所を見てからアルトリウス達を見る。

「そこまで嫌だったとは……」

 アルトリウスは傷ついたように言う。

「違うんです! コズエ様は恥ずかしいんです! 乙女心が純粋すぎて恥ずかしいんです」

『ええ、梢は貴方達を愛していますよ』

「この女性は……?」

『私はこの世界樹ユグドラシルですよ』

「「「は⁈」」」

 三人は素っ頓狂な声を上げる。

「ユグドラシルはこのような姿を取れる、世界樹の中でただ一つな」

 クロウは説明する。

『梢とは話していました、自分の至らなさを嘆いているようでしたが、見てみると貴方達を愛しているから恥ずかしい顔を見られたくないんですね』

 そう言って「ユグドラシル」は笑う。


「そんな風には見られなかったが……」

「私達の一方通行かと……」

「はい……」

『梢の伴侶達、梢は間違いなく貴方達を愛してますよ、だから恥ずかしいんです、初心だから』

 微笑む「ユグドラシル」と困惑する三人。


「まずは潜った梢を引きずり出すべきか」

 クロウはそう言って梢が埋まった土に手を突っ込み、梢を引きずり出す。

「ギャー‼ クロウの馬鹿ー!」

「其処に埋まったのが悪い」

 暴れる梢だったが、三人を見ると顔を真っ赤にして手で覆い、大人しくなった。

「みっともないから見ないでください……」

 土まみれのままそう梢は言った。

 三人は肩をすくめ、梢を抱きしめた。

「嫌だ、漸く見つけられたんだ」

「そうですよ」

「コズエ様、どうか私達を見てください」

 梢は顔を真っ赤にして目を回して倒れかけた。

「……許容範囲を超えたようだな、棺桶で眠らせておく」

 クロウは梢を脇に抱えてその場を後にした。


 他の四名は慌てて後を追い「ユグドラシル」は手を振って見送り、姿を消した。







梢の初心&ポンコツ具合が分かる話です。

ちなみに梢がユグドラシルのところに居たのは三人の目をかいくぐって家から逃亡したからです。

ユグドラシルは精霊の姿「精霊体」というもの取ることができますが、めったにやりません。

梢の視線と合わせたかったのです。いつも見下ろしていましたから。

ピュアすぎる梢。

その結果土に埋まる、でも引きずり出される。

やって来た三人に抱きしめられキャパオーバーして倒れます。

梢は大丈夫なんでしょうかね。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。

次回も読んでくださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
まずは一言。ありがとうございますっっ!!土に埋まる梢ちゃん可愛すぎか!?脳内で勝手に作った梢ちゃんの埋まるシーンを想像して前話同様ニマニマしてしまい、今回は気持ち悪いとストレートに言われました。解せぬ…
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