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ドミナス王国とイブリス教

作物を収穫している梢はイザベラの知らせが風の精霊や妖精が何もこないから、多分大丈夫だろうと思っていた。


一方そのころ、ドミナス王国の王宮では、イザベラ誘拐の主犯である側妃メリーウェザーの糾弾が行われていて──




 作物を収穫しながら夕焼けの空を見た。


「イザベラちゃん達、元気かなぁ」


 なんか色々陰謀渦巻く王宮に帰ってしまったことが心配でならない。

 イザベラちゃんのお母さんじゃない側妃のこともあるし。


「まぁ、風の精霊も妖精も不穏な噂寄越さないし大丈夫だよね」


 私は一人納得した。





 一方、ドミナス王国の王宮の一室で──

「──という事です。父上。此度のイザベラの誘拐事件の真犯人は側妃メリーウェザー、と」

「そんなのデタラメですわ‼」

「そうよ、お母様がそんなことするはずないわ!」

 そこに、シックなドレスの女性が口を挟んだ。

「だが多数の証言と実行犯の発言からお前以外居ないのだろう?」

「正妃マリア……!」

 厚化粧の側妃メリーウェザーは正妃を睨む。

「我が子が可愛いのは分かる、だが愛し合う二人を引き裂こうとまでして自分の子をムーラン王国に嫁がせようとするのには同意しかねる。アルフォンスどう思う?」

「此度の問題は側妃メリーウェザーの行動にある。イザベラの乳母を脅し、家族を人質に取り、人さらい達に大金を叩きイザベラ達を誘拐させた──もし『愛し子』が居なかったらイザベラの命はなかった」

 国王アルフォンスは静かに事実を述べる。

「側妃メリーウェザーを塔に隔離、二度と公には姿を見せることは許さぬ。メリーは知らなかったとは言え母を庇った、二年間修道院で修行せよ」

「そんな‼」

「酷いですわお父様‼」

「酷い? 酷いのは其方だメリーウェザー。側妃クレアがイザベラが人さらいに攫われ、行方も分からぬと聞いて涙に暮れぬ日があったのを知っていてもう死んでいるだろうと余計に苦しめたのは誰だ」

「そ、それは……」

「メリーもだ、母親に同調し、側妃クレア達を苦しめた。それに比べれば軽いものだ、連れて行け!」

 兵士達が二人の親子を連れて行く。

 母子は甲高い耳障りな声を上げていた。


『どうする、やっちゃう?』

『やっちゃおう‼』


 黒い霧がメリーウェザーとメリーを包む。

 兵士達が何事かと慌てふためく。


「痛い痛い痛い痛いぃいいいい‼」

「助けて、助けて、誰かぁあああ‼」


「何事だ⁈」

 部屋から出て来た国王達は目を見開いた。

「これは妖精と精霊の呪い⁈」

「何故メリーウェザーとメリーが……⁈」

 全身黒く茨の棘の紋様が入った二人を見て目を見開く。

「イザベラが一緒に居た愛し子が原因では?」

「愛し子が呪ったと?」

「いいえ、愛し子に大切にされていたイザベラを苦しめた二人に妖精と精霊が罰を与えにきたのでしょう。愛し子たる女性は人を呪うとは無縁そうでしたし」

「ふむ……」

「イザベラが会いに行きたいと言っていますが、どうでしょう。ロラン王子も一緒に行かせてみては、この間会った時に二人そろって行ってみたいと」

「では、マルス。お前も護衛付きで──」

「アルフォンス、私も行くぞ」

「マリア⁈」

「その愛し子とやら是非この目で確かめたい」

「ううむ……仕方ない、マリアは言い出したら聞かないからな……」

「さて、その二人を連れて行け」

「はっ!」

 慌てていた兵士達は通常通りに戻り、呪われた二人を連れて行った。





『この事はどうする?』

『多分勝手にやったって怒られるから内緒にしとこう』

『でも、多分バレちゃうよ?』

『だよねー、その時はその時だよ』


 等と、精霊と妖精が会話していたのを知るものはいない。





『風の噂じゃが、ドミナス王国の第六王女イザベラを誘拐させた側妃メリーウェザーは塔に一生隔離、娘のメリーは修道院送りになったそうじゃ』

「よかった、ちゃんと罰受けてて、娘もってことは娘も何かしたの?」

『イザベラの母側妃クレアを不安にさせた罰らしいぞ』

「なるほど」

 私はサンドイッチを食べながらクロウと会話する。

「他になにかある?」

『んー……何もないぞ』

「そっか」

『おっと、あった。イザベラを来年の夏此処に寄越す予定だそうだ』

「マジ?」

『今度はムーラン王国の第一王子を連れて』

「うへぇ」

『それとイザベラの兄も同席する』

「うぐおおお」

 私は頭を抱える。

「なんなの、神様スローライフさせてほしいのに、させてくれないの?」

『そういえば、神様が「そろそろお供え物ほしいのー」と言ってたような』

「あ」

 しまったお供え物すっかり忘れてた。

 私は葡萄酒の瓶を取りだし、チーズも取り出して、お供えモードでスマホで撮る。

 すると二つは綺麗さっぱりなくなった。

 電話がなる。

「はい、もしもし」

『ほっほっほ、すまんの』

「いえ、お供え忘れててすみません」

『いいんじゃよ、強制するものじゃないんじゃから』

「はぁ……」

『では大事に食べさせて貰うかの』

「はい」

 通話を終える。

『そのよく分からん板で神様と会話しとるのか』

「ええ」

 クロウの言葉に私は苦笑いを浮かべて帰す。

『それはお前さん以外持ってても意味がないもんじゃな、儂はたまーに神様からの神託と言う名前の呟きを貰うが』

「へー」

『それはそれとして、そのパンに肉と野菜を挟んだ奴くれんかの』

「はいはい」


 この食い気ドラゴンめ。


 と、思いながらクロウの口にサンドイッチを運ぶ。

『うむ、うまいのぉ』

「ところで聞きたいんだけど、イブリス教ってどんな宗教?」

『んー光の神兼太陽神イブリスを奉り、多種族を迫害する宗教じゃ、ま人間至上主義ってやつじゃ』

「うげ、太陽神イブリスもそんな奴なの?」

『それは知らんの』

 と会話をしているとスマホが鳴る。

「はいはいー」

『太陽神イブリスについてなのだが、その奴をあまり悪く言わないでほしい』

 闇の神様からの電話だった。

「どうしてですか?」

『太陽は万物等しく光り与えられるもの──奴は博愛主義だ、だが人間共が曲解した結果人間至上主義になってしまった』

「うへぁ」

 そんな曲解ある?

『今太陽神に代わる』

「へ」

『申し訳ございません梢さん‼』

「オウイェ」

 若々しい男性の声に代わった。

『ああ、初めまして、私太陽神イブリスと申します。光の神も兼任しています』

「はぁ」

『最初は色んな種族がいたのですが、人間達が私の神託を独占するようになり、結果今の状況になってます。人間が他の種族を排他してからイブリス教の信者の人間達には私一切神託を卸していません!』

「はぁ」

 かなり必死だなこの神様。

『ですが、人間達は態度を改めるどころか他の種族──特に吸血鬼を排他し、殺して回ってます』

「それがミストリアさんちだったんですね」

『はい……申し訳ない限りです』

「今イブリス教の連中はどうしようと?」

『愛し子が吸血鬼であるなど許されざる! という事でこの森に頻繁にアタックしてますが、迷いの森になったこの森で疲弊している最中です』

「え、今もアタック中?」

『ですね』

「うー、困るなぁ。行商さんやイザベラちゃんが来るかもしれないのに」

『……仕方ありません、私は彼らを突き放しましょう』

「え」

 私は声を上げる。

『今まではいつか考えを改めてくれると信じていましたが、そうじゃないと貴方が気づかせてくれました』

「はぁ」

『ですので、突き放し。加護や神殿を破壊します。神像も』

「ちょちょちょ、そんな事したら──」

『自分の不始末は自分で蹴りをつけます。あ、今までご迷惑をおかけしたので私の加護を授けましょう、これで日中でも動けるはずです』

「オウイェ」

 いいんか?

 マジそれでいいんか?


 私の疑問はぐるぐると巡っていた。






イザベラを誘拐させた側妃メリーウェザーと、イザベラの母である側妃クリスを不安にさせた娘のメリーは、妖精と精霊達に呪われました。

愛し子である梢には内緒にしようと暗黙のやりとりがされました。


そしてイブリス教の信じる神イブリス、善人でお人好しすぎたのでこんなことになったので、責任を取る発言。

イブリスはどのように責任を取るつもりでしょうか?

そしてますます吸血鬼離れしてる梢、まぁスローライフを送るには良いでしょうが。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

次回も読んでくださると嬉しいです。

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