「乾き」の吸血鬼
吸血鬼関係で問題は起きないだろうと思っていた梢。
そんな梢の元にグレイスが「乾きの吸血鬼」という吸血鬼の助けを求めてやって来た。
どんなものか知らない梢にクロウが──
ニンニクを使わない調味料や料理にはまりそうになったが、誰が食べるのかと聞くと私や、アルトリウスさん達なので、レシピだけ村人に教えて村で流行らせて貰った。
ニンニクは万能らしいが、この村では禁止のものとしている。
何故か。
私や吸血鬼の方が居るからだ。
「吸血鬼関連で問題とか起きてないし、よしとしよう……」
とか思って紅茶を家で飲んでいるとグレイスさんが扉をバンと開けた。
「コズエ様、お助けを‼」
「何⁈ 何⁈ どったの⁈」
「乾きの吸血鬼の知り合いから手紙が……!」
「かわきの吸血鬼?」
「そうか、梢は知らんのだな」
「うわ⁈ クロウ⁈」
いつの間にかクロウが居た。
「乾きの吸血鬼とは血を好んで吸う吸血鬼ではない吸血鬼だ。喉の渇きが血でしか癒やせないという飢えを持って居る」
「私にどうしろと?」
「お前のブラッドワインなら奇跡が起こるかもしれん、と言いたいのだな、グレイス」
「その通りです……」
「ちょちょちょ、ちょっと待って! 私のブラッドワインで其処までいくかなんて──」
スマホが鳴る。
「ああ、もう! こんな時に!」
影に隠れて通話ボタンを押す。
「ハイもしもし!」
『我だ、闇の神だ』
「闇の神様⁈ こんな時にナンデ⁈」
混乱する。
『乾きの吸血鬼は好んで血を吸わぬと聞いたな』
「そうですが、それが」
『其方のブラッドワインはその乾きすら癒やす、乾きという「呪い」から救える』
「え、ちょ」
『後は任せた』
一方的に会話を切られた。
「……」
いや、これ受け入れろってこと。
「この吸血鬼さん、何処にいる?」
「もうすぐ森の入り口に……」
「ふぁーっきゅ! 仕方ねぇ、ブラッドワインとコップもって行く。グレイスさんは付き添い宜しく! クロウも!」
「シルヴィーナは?」
「呼んで!」
とクロウに叫ぶとクロウはシルヴィーナを呼び、グレイスさんと四人で森の入り口に向かう。
森の前には馬車があった。
馬車からずるりと人が崩れ下りる。
「ミカエル!」
「シャルロット……近づくな……」
「ミカエル・リンク。乾きの吸血鬼です」
「よし、分かった」
ブラッドワインの入ったコップを持って近づく。
「乾きの吸血鬼」
「愛し子様……貴方でも、この乾きは癒やせ──」
「つべこべ言わず飲めや!」
無理矢理飲ませる。
女性──シャルロットさんは困惑している。
最初は少ししか飲んでいなかったが、口にした途端コップを奪うように飲んだ。
ブラッドワインを飲んだ彼は肩で息をしながら言った。
「乾きが収まった……⁈」
「ミカエル!」
シャルロットさんがミカエルさんに抱きつく。
「ああ、君に触れても乾きを感じない……! 奇跡か⁈」
「ネロ神の加護を持つ梢が作ったブラッドワインがお前の『乾き』の呪いを解呪したのだ」
「乾きが……呪い?」
「ああ、そうだ。吸血鬼という名故血を吸うことに狂ったような吸血鬼の血筋をお前は引いている、その吸血鬼は『乾き』の呪いを受けている、お前はその罰で『乾き』の呪いを受けていたのだ」
クロウ、そういう説明なんでいまするん?
「……」
「確かに私の曾祖父は血狂いの吸血鬼と呼ばれていました……」
「心辺りはあったか」
「ですが、私は血を吸うまいと我慢してきました」
「本当です、ミカエルは私の父が私を取り戻そうとする追っ手達の血を一滴も飲んでいません」
「相当苦しいものではないか?」
「ええ、地獄のような苦しみでした、ですが私はシャルロットが居れば良かったのです……」
「ねぇ、クロウ。この二人も迎え入れていい?」
「それはお前が決めることだ、お前が良いなら良いだろう」
「ミカエルさん、シャルロットさん、宜しければこの始祖の森で暮らしませんか」
「ですが、私は……」
「喉が渇いたらブラッドワインを飲めばいいだけですから」
「ネロ神もそう言っておる」
「貴方は?」
「こちらは愛し子の梢、我はエンシェントドラゴン、クロウだ」
「エンシェントドラゴン様……!」
「ミカエル、逃げるのはもう止めて此処に定住しましょう? ここならお父様達の追っ手も手が届かない」
「……シャルロット……分かった、君の言う通りにしよう」
「では準備してきますので、案内をお願いします」
私はそう言って、村の吸血鬼地区へと走って行った。
「吸血鬼の『乾き』の呪いはかなり重い。しばらくは続くだろう……」
「……やはりそうですか」
クロウは歩きながら会話をしていた。
「クロウ様、本当に大丈夫なのですか?」
シルヴィーナが不安そうな顔をする。
「梢のブラッドワインを七日程飲み続ければ呪いは完全に解けるだろう。それまではブラッドワインを貰うといい」
「はい、分かりました」
シャルロットとミカエルが頭を下げる。
「気を遣ってくださり感謝です……」
「まぁ、その七日間は屋敷から出ない方がいいな、ミカエルとやら。何か起きたら大問題になりかねない」
「では、私がブラッドワインを貰いに──」
「いや、我が持って行こう、其方が側にいたほうがミカエルも乾きにも耐えられるのだろう」
「分かりました、エンシェントドラゴン様」
クロウはにやりと笑った。
「お屋敷建てたよー!」
「「……」」
唖然とするミカエルさんとシャルロットさん。
「相変わらずお前のクラフト能力は末恐ろしいな」
「ほっといてよ」
クロウの言葉にむくれる。
「こ、この様な立派な屋敷で暮らして良いのですか?」
「いいんですよー?」
「ミカエル、ここは愛し子様に甘えましょう」
「……分かったシャルロット」
「じゃあ、お祝いのブラッドワインをどぞー」
とブラッドワインを七本程アイテムボックスから取り出す。
「有り難うございます……」
ミカエルさんは頭を下げて、シャルロットさんと屋敷に入っていった。
「ミカエルさん、どうやって自分の乾きに耐えてきたんだろう?」
「自分の腕に噛みついたりして、それで耐えているのは見てきました」
グレイスさんが言う。
「相当堪え性なんだったんだろうな」
「乾きの吸血鬼は大抵がハンターに寄って殺されてしまいますから、飲む吸血鬼同様」
「だから、母方の名前を名乗ったのだろう。父方のシュヴァンツだと乾きの吸血鬼と思われるからな」
「ええ……」
「親の因果が子に報いるとは言うけど、これはちょっと酷いよ神様」
私はぼやく。
「確かにそうだな」
クロウも同意する。
それから七日程たったら、ミカエルさんとシャルロットさんは仲よさげに夜の森を散歩するのを見かけるようになった。
それまでは諸事情で屋敷にこもってたんだって。
大変だなぁ。
でも喉の渇きが無くなって安全になってるからミカエルさんも村人と交流するようになったよ。
シャルロットさんも奥様達との会話に混じって居る。
いつか結婚式を挙げたいと言っていたので今度ドレスを着せてあげよう。
本人が好きなデザインが良いから聞いてみようっと。
祝福されたいもんね。
あと、着の身着のままで家から出て来たらしいからワンピースとか服を何着か作ってみよう、気に入ってくれると嬉しいな。
そういえばワンちゃんとも一緒に来たらしい。
どんな犬かな。
新しい住人ややって来ました。
乾きという呪いを受けた吸血鬼でしたが、梢のブラッドワインで呪いが解呪されていき、結果ミカエルは恋人のシャルロットと定住することとなりました。
ちなみに乾きの呪いは無差別に吸血するような吸血魔に罰として現れます、子孫にも続く罰です。
ミカエルがシャルロットの血を吸わなかったのはかなりの精神力の持ち主だったからです。
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