吸血鬼だけども
毒味なしで料理を食べる国王の姿に戸惑う毒味役など。
料理を食べている王族を見ていると、正妃マリアに話しかけられ、梢は料理に制限をかけて作っている事を話す──
「うむ、このスープも肉も美味いな!」
「……」
王様ー。
毒味役っぽい人が青ざめた表情してるんですが?
「へ、陛下。せめて毒味を……」
ほらぁ。
「要らぬ! 愛し子の作りし物と、その庇護にある者達が我らを害なして何がある! 何もなかろう!」
「そういうことだ、お前もここでは普通に食べると良い」
アルフォンス陛下の言葉に同意するようにマリア様も言う。
「わ、分かりました……」
毒味役の人も、一口スープを飲んだら、貪るように食べていた。
毒味役って命がけだもんね、本来。
あ、焼いた肉も凄い嬉しそうな顔で食べてら。
「マルス殿下大丈夫かなぁ」
「大丈夫だ。何かあれば連絡をするよう言ってある」
マリア様はそう言った。
「梢様、このスープとっても甘くて美味しいわ!」
「ああ、トウモロコシのスープよ」
「トウモロコシ! あの甘い野菜ね! 私大好き!」
「それは良かった」
「相変わらず料理人としても素晴らしいですね」
「結構制限されてるんですけどね」
「そうは見えないが……」
私は苦笑いを浮かべて言った。
「私は愛し子だから平気なんですが、他の吸血鬼やダンピールの方を考えるとニンニクが入った料理は作れないんですよ」
「ニンニク? ああ確かに吸血鬼の弱点だからな」
「食べ過ぎると体に悪いんですが小量だと良い調味料になるんですが……吸血鬼のいるこの村で育てる訳にもいかず」
「やれやれ、大変だな」
「お陰でケチャップという調味料は作れないんですよ」
「けちゃっぷ?」
マリア様が首をかしげる。
「トマトを加工した調味料です、ニンニクとハーブ等を使うんですよ」
「良かったら作り方を教えて頂けないだろうか」
「少々お待ちを」
私はクラフト画面を開く。
よく見たらニンニク抜きのものもあった。
今度作ろう。
ニンニク入りのケチャップの作り方を紙に書いて渡す。
「調べたらニンニク抜きもありました」
「神の知識、という奴か」
「ちょっと違いますけど」
「ふむ、良ければニンニク抜きも教えてくれ」
「はい」
大蒜抜きのレシピも書いて渡す。
「では、こちらを料理長に渡そう、ところでケチャップはどんな料理に合う?」
「オムレツ、オムライス、チキンライス、ナポリタン……」
「待て待て、私が知る料理は一つもないぞ?」
「あ、すみません。じゃあ居る期間にお作りしましょうか」
「良いのか?」
「良いですよ」
私はにこりと微笑んだ。
「お母様、このシャーベット美味しいです!」
「本当、甘くて美味しいわ、ポミュエの実なのにこんなに甘いなんて……」
リンゴのシャーベットを食べながらクレア様はイザベラちゃんと微笑ましそうにしている。
ロラン君は──
「本当に、イザベラとは何もないんだね?」
「ねーよ!」
「ルフェンには別に好きな子いるからないよー」
「ミズリーお前黙ってろ!」
「ラカンも好きな子いるし、僕もいるからね」
おおう、初めて聞いたぞ。
まぁ、君達も14歳になっているんだもんね、後二年で大人になるんだものね。
時間が経過するのって早いねぇ。
私が死んだの……25位だからもうすぐ30か……早いな。
年を取っている自覚がない、吸血鬼だから。
家に戻り、ニンニクを使わないケチャップを作る。
使うのはトマト、玉葱、ショウガの絞り汁、砂糖、お酢だ。
これならアルトリウスさんも食べられるケチャップになるはずだ。
ショウガは駄目だってきいたことは無いからな。
レシピ通りに作るとケチャップができた。
煮沸消毒した瓶に入れ、アイテムボックスで入れておく。
そしてオムライスを作る。
私とアルトリウスさんのご飯。
チキンライスを作り、その上に卵で形を作った奴を切る。
ふんわりとろとろのオムライスの完成。
「コズエ、これは?」
「オムライス」
「おむらいす?」
「まぁ、食べてみてよ。大丈夫だと思うから」
と言って私はオムライスを食べる。
優しい味、懐かしい味のするオムライスだった、美味しい。
「うん、美味い」
「なら良かった」
「半熟の卵は初めて食べるが、美味いな」
「そう? 良かった」
「明日二人にも食べさせてやるといい」
そう言って私達はオムライスを完食した。
その後、色々とお仕事をして泥のように眠った。
王族の方が来るとやはり疲れる。
「イリス、頼むから孫を抱かせてくれんか?」
「二歳の子どもは爺には重いと言っているだろう!」
イリスさんと、今回も来ていたロッズさん、サフィロ君のことで口論中。
サフィロ君はてとてととイリスさんから離れてお父さん、グレイスさんのところに行き抱っこして貰って居る。
「サフィロ、お祖父様は嫌か?」
「やーちらない」
ロッズさんその言葉に撃沈。
そりゃそうだ、サフィロ君からすれば祖父であるロッズさんは一年に一度会う程度の人。
つまり知らない人だ、人見知りするに決まってる。
あ、そこイリスさん、めっちゃ「ざまぁ」って顔してる、止めようね。
「イリスさん、実父相手でも容赦ないですね」
「コズエ様、当然です。身内だからこそ容赦はしません」
「お手柔らかに……」
「それは無理です」
「ですよねー……」
私は息を吐き出しサフィロ君のところに行く。
「サフィロくん元気?」
「げんき!」
「おやつは食べた?」
「おやつないない」
「あれー?」
「実は今日のおやつ、ロシアンクッキーでしたっけ、イリスは失敗してしまって……その原因でもあるロッズ氏を怒っているのです」
「もしかしてお菓子作り邪魔した?」
「ええ、私はその時眠っていたので……」
「そりゃ怒るわ」
「おやつないない、かなしい」
私はアイテムボックスからブラッドフルーツのジャムを使ったロシアンクッキーが入った瓶を取り出した。
「じゃあ、今からおやつにしようか、少しだけよ」
「おやつ!」
渡したクッキーをサクサクと食べていく。
「おいちおいち!」
「良かった」
「もっとちょーらい?」
「後二枚だけだよ、もう少しで夕飯だから」
「むー!」
グレイスさんを見てサフィロ君むくれてる。
それが可愛くて笑ってしまう。
グレイスさんが妥協して三枚食べたサフィロ君は満足した。
「離乳食は何を食べているのですか?」
「ブラッドフルーツのゼリーですね、あとブラッドティーに砂糖を入れたものを」
「なるほど」
「この村の砂糖は上質です、それを無償で下さるコズエ様には感謝しかありません」
「いえいえ」
「グレイス、サフィロ、夕飯にしよう」
「ロッズ氏は?」
「あんな糞親父知らん」
未だ、わだかまりは解けず。
その後、私は王族の方々にオムライスを振る舞って好評を戴き、料理番の方の一人がレシピを欲しがったので書いて渡した。
王族の方々の夕食後、私達は夕食でオムライスを食べ、アインさんとティリオさんも舌鼓を打ってくれた。
ケチャップ使えるだけで色々幅が広がるなぁ。
あ、そうだマヨネーズも作ろう。
私はそんな事を考えながら夜の畑や果樹園の整備に勤しんだ。
梢は愛し子だから平気ですが、他の吸血鬼やダンピールにとってニンニクは毒。
なので梢は料理でも畑でもニンニクは無しの方向で頑張っています。
梢のレシピはクラフトでも確認できるので、梢の料理スキルは神様、元いクラフト能力様々です。
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