四度目の夏きたりて~国王来訪~
砂糖楓の木からシロップの素をとり、メープルシロップを作ることに成功した梢。
それを使ってホットケーキ作りを堪能する。
そして季節は夏が近くなり、いつも通りイザベラ達が来る手紙かと思いきや──?
砂糖楓の木が一晩経ったらかなり太い木になっていた。
私は穴を開けてバケツを繋げると水が出て来た。
「うわすっげぇ、本当にできてら、冬じゃねぇのに」
と本音を漏らす。
大量のメープルシロップの素となる樹液が集まったのでクラフト小屋に行ってメープルシロップを作る。
大量の瓶入りのメープルシロップができた。
ちっちゃなボトルサイズだった。
私は早速ホットケーキを作る。
ケーキには蜂蜜を入れるのが私流。
砂糖でも可。
甘くしたホットケーキにメープルシロップをかける。
「ん~~! これよ、これ!」
ホットケーキの甘さとメープルシロップの甘さがちょうど良くマッチしていてパクパクと食べた。
「まだ生地あるし、皆の分も作ろう、あと私のおかわり」
と思ったがその前に呼びに行くのが先決だ。
「アルトリウスさん、お茶にしよー」
「分かったすぐ行く」
「アインさん、ティリオさん、お茶にしましょー」
「分かりました、すぐ行きます」
「コズエ様、畏まりました」
ティリオのコズエ様呼びについては、何度直そうとしたけど直らなかったので諦めた。
世の中諦めも肝心。
「お茶のお供にホットケーキ作ったよ」
「この瓶に入ってるのが昨日言ってたメープルシロップとやらですか?」
アインさんが瓶を持って言う。
「蜂蜜と違う甘さなので是非かけてください」
「なら、お言葉に甘えて……」
アインさんがふかふかのホットケーキにメープルシロップを垂らす。
そしてかかった部分を切り取り、口に運ぶ。
「これはまた、上品な甘さだ。蜂蜜とはまた違う甘味ですね」
「そうでしょうそうでしょう」
「私も試していいか?」
アルトリウスさんが言うから勧めることにした。
「はい、どうぞ」
「私も試して宜しいでしょうか?」
「ええ、勿論」
ティリオさんも言うので勧めた。
皆メープルシロップとホットケーキの相性に舌鼓を打つ。
私ももう一度、食べる。
「うーん、やっぱり美味しい!」
「ですが、これは貴重なのでは?」
「あ、まだまだ瓶詰めあるから大丈夫だよ」
「そ、そうですか」
ティリオさんがちょっと引いた笑顔を浮かべる。
失礼な。
まぁ、本当はもっと少ない量なんだろうけど、私と妖精と精霊の力の合わせ技で沢山作れたんだと思う。
だって砂糖楓の木からあんなに沢山の樹液が取れるとは思わなかったんだもん。
あ、ちなみに、穴は塞いでおいた。
妖精と精霊の力を借りてちょちょいっと。
「そう言えば、まだ余ってるイチジクメープルシロップに漬け込んでみるか、蜂蜜で漬け込んだのもあるけど」
色々と作っているから、思い出すのも大変。
アイテムボックスからイチジクを取り出し、煮沸消毒した瓶に綺麗に洗ったイチジクを入れてメープルシロップをドバドバ注ぐ。
はい完成。
アイテムボックスにしまっておけば、長期間持つからね。
「さて、まだ春だけど……」
「夏が近いですよね」
「……イザベラ様達来るよなぁ」
「おそらく」
「そうでしょうね」
「なーんか嫌な予感するんだよね」
「何でですか?」
「いや、何となく」
悪い予感というか、私の胃袋がきゅうっとなるような予感がしていた。
そして翌日手紙が届く。
なんと今回はマルス王子は来ず、アルフォンス国王が来るとのこと。
何で⁈
そして季節は過ぎた。
出産とか、色々重なり過ぎてて頭パンクしそうだったけど、イザベラちゃんの件は頭から離れなかった。
『夏ですよー』
『夏ですよー』
夏が訪れ、少しして、ドミナス王国の馬車がやって来た。
夕暮れ時私達が出迎えると馬車からイザベラちゃんが飛び出してきた。
「コズエ様!」
「イザベラ様!」
抱きついてきたイザベラちゃんをぎゅっと抱きしめる。
あー癒やされる。
そして馬車から出てくる正妃マリア様と、側妃クレア様、そして結婚式以来の顔合わせ──国王アルフォンス陛下だ。
「マリア様、クレア様、ようこそいらっしゃいました」
「うむ、すまぬな。アルフォンスが自分も行きたいと駄々をこねてマルスが降参した、まぁ政治を任せても問題ないだろう、マルスも王太子妃達も賢い」
「はぁ……」
「此処が噂の始祖の森か! 初めて見るな!」
わくわくした表情のアルフォンス陛下。
「アルフォンス陛下、特に見るような物はこの村にはありませんが……」
「何を言う愛し子様。愛し子様である其方が作ったこの村に見所がないだと? 多種族が暮らしている村で何もない、だと」
ひぇええええ!
マリア様なんで怒ってるの⁈
「正妃マリアよ、そう梢を怒るな。梢は全て無自覚でやってるから自分の価値が分からんのだ。それでいいと我が許可している」
なんかムカつくなクロウの言い方。
へいへい、好き勝手に村作ってますよーだ!
と心の中でクロウにあっかんべーと舌を出しておく。
「コズエ様、行きましょう?」
「ところでロラン様は」
「はい、こちらに」
後ろから出て来た、やっぱりついてくるのか。
イザベラちゃんと一緒がいいんだなぁ。
「結婚したら、イザベラは中々ここには来られなくなりますから」
「大丈夫よ、ロラン様が国王になるまでは始祖の森へ行くのを許可するとロラン様のお父様とお母様が仰っていたでしょう?」
「そうでしたね、イザベラ」
そうだ、イザベラちゃんは将来的に別の国にお嫁に行くのだ。
だから、会えなくなるのも仕方ない。
あと何度イザベラちゃんと会えるのだろうか、と考えていると少し寂しくなった。
「ルフェンや、ラカンやミズリーは元気にしてますの?」
「元気元気、今日も元気に遊び回ってるよ」
「わぁ、楽しみだわ!」
ロラン君、少し複雑そう。
分かるよ、同性じゃなくて異性の友達に不安を持つのは。
ロラン君に対して、イザベラちゃん達は大丈夫だよ。
とは言えない。
村へと案内すると、イザベラちゃんを見たルフェン君達が駆け寄ってきた。
「イザベラ! 元気にしてたか⁈」
「勿論よ! コズエ様の村から送られてくる食料のお陰で前にも増して元気だわ!」
「はは! だよな!」
送られてくるじゃなくて、販売してるらしんだけどね。
「その件に関しては感謝です。あれだけの高級な食料をあの値段で王宮と兵士達の料理に使わせて頂いてます」
「?」
「梢気にするな、この村では過剰に毎日収獲できてるからできることだ」
いや、どれ位の量か教えてくれないの?
ハイ分かりました、教えてくれないんですね。
全くもう。
確かに私の作った畑で取れる作物は保管庫からももう余る程毎日のように取れる。
それをマジックボックスに入れたレイヴンさんが売りに行ってるのも分かる。
「とにかく、どれ位の量売っているのか気にするな、月に一度早馬でドミナス王国に行き販売しているのだ」
「ふーん」
やっぱり。
「コズエ様、宴をやりましょう!」
「そうだ宴、宴!」
「俺父上に言ってくる」
ルフェン君が家へと走って行ってしまった。
「仕方ない、宴にしましょうか」
「わーい!」
「暑いからアイスとかも用意しないと」
「わーい!」
「嬉しいわ!」
「なぁ、マリア、クレア。あいす、とは何だ?」
「冷たいデザートですよ陛下」
「そうだ、アルフォンス」
村初心者なアルフォンス陛下は村にある見たこともないものにはしゃいでは、マリア様にたしなめられていた。
マリア様大変そう。
と、思いながら、冷たいアイスがあるなら暖かいスープが良いだろうと思い鍋の準備をするのだった。
梢はメープルシロップという調味料を手に入れました。
まぁ、村人皆に分けるし、村の特産品の一つになるでしょうしね。
蜂蜜と違った甘さですから。
そして、夏になったら、なんとマルス王子達ではなく父であり、国王のアルフォンスがやって来ました。
梢もなんでだよ、という気持ちです。
アルフォンスは自分だけこれなくて寂しかったんですよ。
妻や子等が楽しげに始祖の森の話をするのに自分は入れないからのけ者にされた感じがして寂しかったんですよ。
マリアはそんな夫に頭を痛めてますが。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。
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