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成人についてと、一二三の尾

神森の復活を終えた梢は雪が降る始祖の森で雪かきをしていた。

その中でかまくらを作ってみると、極東出身の奈緒が反応する。

この年は大雪で大人達で雪かきの大変さを共有すると、元気がないロドノフの事が気になり──





 神森復活が終わったのでやることが一つ減った私達は雪かきをしていた。

 温室の上の雪を払い、そして、雪を一カ所に集めると少し大きな山ができた。

 アレだ、かまくら作ろう。

 と穴を掘って入り口と中を作ってかまくらを作ってみた。

「おや、かまくらじゃないですか」

「ええ、雪がこんなに降るんで試しに作ってみたんですよ」

「かまくら?」

 シルヴィーナが首をかしげてから、ああと頷いた。

「極東の文化にあるものの一つですね!」

「冬しか作れませんが、かまくらです」

 奈緒さんがやって来てそう言う。

 続けて──

「雪の家ですね、雪洞とも言います。中に水の精霊を奉る場所を作るんです」

 あっちの世界だと水の神様だけど、こっちだと水の精霊なのか。

 勉強になるー。

「祭壇を作って良いですか?」

「はい、どうぞどうぞ」

 奈緒さんがかまくらに入り、祭壇を作った。

 祭壇はあっちの世界とおんなじ感じ。

 不思議ー。


 まぁ、普通にかまくら作るときは祭壇は作らないけどね、そこまで詳しくないから。


「それにしても、今年は大雪ですねぇ」

「そうですね」

「道を確保するのも大変」

 私がそう言うと皆が頷いた。

「子ども達は楽しそうだけど、大人達は大変ですよねぇ」

 と運動公園ではしゃいでいる子ども達を見て私は遠い目をした。

「本当そうですね」

「子どもが元気なのは良いことじゃろ」

「そうですね」

 元気じゃないといえば……

「ロドノフさん、ここ最近ため息ばっかりですよね。仕事はしっかりしている用ですけど」

「コズエ様には敵わんのぉ、実は……」

 一人娘のジェリカさんが恋人のガンツさんと結婚したいと言ってきてるのだ。

 ガンツさんもガンツさんで、ロドノフさんに認められるよう努力していたし、ジェリカさんと結婚したいと同じように言ってきて憂鬱だそうだ。

「儂はまだ早いと思ってるんじゃガ、他の職人の連中は遅い方だからそろそろ認めてやれって五月蠅くてのぉ」

「親だからまだ心配なんですね」

「不満はないが、結婚してしまうと思うとどうも寂しくてのぉ……、コズエ様の時はどうでしたか?」

「外堀埋められまして拒否れませんでした」

「コズエ様のはちょっと特殊すぎて参考になりませんのぉ」

「デスヨネー」

「ロドノフさん、ジェリカさんが『お父様が全然首を縦に振ってくれないからコズエ様に相談しようと思ってるの、もしくはクロウ様に』ってぼやいていたわよ」

「ぐむっ……其処まで思い詰めとったのか……しかしじゃな」

「ロドノフさん、でも、だって、しかし、とかじゃなくてジェリカさんとガンツさんはもう子どもじゃないんですよ。二人は立派な大人で、まっとうな方々です。結婚して不幸になることはないでしょう」

「そ、そうじゃな、それは分かってるんじゃが……」

「あーもー! うだうだしすぎです、行きますよ!」

 私はロドノフさんを引きずってジェリカさんとガンツさんが居るであろう来賓の館へ向かった。


 ロドノフさんが何か言ってたが知るもんか!


「ジェリカさーん、ガンツさーん」

「はい?」

「何でしょうか」

 館の入り口で、紅茶を飲んでいる二人に声を掛ける。

「ロドノフさんが結婚認めてくれないって本当ですかー?」

「本当です、お父様、ちっとも認めてくださらないの!」

「はい、親方は認めてくれてない以上結婚はできないですし……」

 ガンツさん真面目だ。

「ロドノフさんーこのままだとこの二人どっかの街に駆け落ちしてもおかしくないですよー」

 と私は目配せする。

「そうよね、その手があったわガンツ!」

「ジェリカ、でもそれは最終手段だよ」

「今使わなくてどうするの!」

 ロドノフさんの顔は真っ青だ。

 さぁ、言え。

 認めろ!

「ええい! 分かった! 認める! 結婚を認める! だからジェリカ出て行くのはやめてくれ!」

「やったわガンツ」

 ジェリカさんがガンツさんに抱きつく、ガンツさんちょっと嬉しくも複雑そうな顔。

 きっとロドノフさんの立場で考えているんだろうな。

「親方、いえロドノフさん。俺はジェリカさんをこの土地で大切にすると誓います」

「う、うむ」

 色々とガンツさんはロドノフさんに話しかけていたが、これは私の関与するとことではない。


「コズエ様、私達春になったら式を挙げたいと思いますの、だから私も飲めるお酒を用意してくださいませんか」

「え、ドワーフの酒職人にお願いするんじゃないの?」

「住んでいる地域で一番の酒職人ならコズエ様です! ドワーフは一番の酒職人にお願いするので、相手がドワーフじゃなくても認めているのなら問題ないんです」

「コズエ様のお酒はドワーフ達皆が認めていますからね」

 あれ、クラフトで自動製造してるんだけどなー。

 なんて無粋なことは言わない。

「そういうことなら引き受けましょう! で、何のお酒を造れば?」

「ビールとシードルを作って下さい」

「シードルは甘口?」

「はい!」

「了解把握。用意しておくから」

「有り難うございます!」

 ビールとシードルか。

 両方とも結構作ってあるし、大丈夫だろう。

 でも、少なくなったら困るし、余分に作っておこう。


「そういえば、ドワーフってお酒何歳になったら飲めるの?」

「ドワーフは16歳の成人の儀にお酒を飲むんです、その時のお酒も住んでいる場所で一番の酒職人が作るんです」

「へぇ……16かアルスさんのところはどうなんだろう?」

 と思って聞きに行くことにした。


「私達の村も16歳になった時にお酒を飲ませるんですよ祝いの酒として大人になった証という形で」

「ここでも16歳……白狐と吸血鬼はどうなんだろう」


 という事で聞きに行くことに。


「白狐の里では尾が増える度に祝いをやるので特にありませんよ?」

「大人になった証とか……」

「初めて尾が一つ増えた時ですね、年齢はまちまちなので天狐様に祝いの証を貰う事でしょうか?」

「なるほど……」


「吸血鬼は?」

「ブラッドワインを飲めるようになったら祝いです」

「随分年齢低いですね」

「血を吸う必要は無いですから飲まずは」

「ナルホド」


 色んな場所から来た人達なので大人になる祝いも様々。

 この中で大変そうなのは白狐さん達かな?

 一度村に戻らなければならないから。


 あ、クロウに頼めばそう大変では無いかな?


 と思いながら雪の日を過ごしていた。





「大変ですコズエ様!」

「な、何です?」

 奈緒さんがやって来た。

「一二三の尾が一本増えました!」

「目出度いことじゃないですか?」

「目出度いのですが、この豪雪状況で一二三を里に戻すのは危険だと思いまして……」

「あー……」

 やっぱりそれか。

「私もついていきますが、それでも不安なのです」

「じゃあクロウに送って貰えばいいじゃないですか、何日滞在するか言えばクロウはその日に迎えに行きますよ」

「よ、宜しいので」

「ちょっとクロウに言って見ます」





「お前達が食ったケーキ、それを我にも寄越せ」

「誰から聞いた?」

「神から」

「神様ー!」

 余計な告げ口止めてよもぉ!

「仕方ない、作ります、一個でいい?」

「二個だ」

「はいはい」


 交渉成立したことを奈緒さんに伝えると驚いていた。

 何故驚いていたのかは聞かないことにした。

 とにかく、出掛ける準備をした奈緒さんと一二三ちゃんを見送る。


「なるべく早く帰って来てね」

「はい、梢様!」

「奈緒さんはしっかりして下さいね!」

「は、はい!」

『では行こうかの』

 飛び立つクロウを見送りふぅと息を吐いた。

「さて、ケーキ作ろう」

 私は自宅へと向かった。


 二つのケーキは、あっという間にクロウの胃袋の中に入ったのは言うまでも無い。







神森復活後は大雪の始祖の森でかまくら作りをした梢。

子ども時代を懐かしんでいたのでしょう。

そしてジェリカとガンツと件、ロドノフにちょっと腹黒モードで接してジェリカを唆すような言い方で二人のロドノフに結婚を認めさせました。

二人の結婚に反対してる訳じゃ無いのでやりました、反対してたら話合いの場を設けますので。

そして一二三が尾が幼いながらも一本増えた事で故郷に帰る事に。

クロウに依頼して奈緒と一二三を送り出します。

そしてクロウは食い意地がはってますね。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

次回も読んでくださると嬉しいです。

イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。

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― 新着の感想 ―
一二三〜!尻尾増えたんかぁ!!おめでとう! ふーん、(飲まずの)吸血鬼はブラッドワイン飲めたら一人前なのね。 そして、いつから梢ちゃんは酒職人になったんだ笑 まさか他のドワーフからも地域一番の酒職人に…
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