神森復活とクリスマス
49日かけて49カ所の神森を復活させた梢。
疲れた彼女に届いたのはブリークヒルト王国からの手紙で、その内容は──
秋が終わり、冬になった。
当の私は──
「これで49個目! 終・了!」
49個もの特別な苗木を、枯れ果てた神森に植える作業を49日間も続けた。
疲れた。
精神的に。
まぁ、名前をつける必要は無かったから良かったけど。
雪に埋もれながら作業するのはちょっと大変だった。
神森は何故か雪が積もるし、しかも瘴気まみれでばっちぃし。
終わったら温泉で身を清めるのが定番。
いや、苗木が一瞬で世界樹になって浄化されるから必要無いのだけど気分的に。
「コズエ様、漸く終わりましたね! 偉業の達成ですよ‼」
とシルヴィーナが言うが私は手を振る。
「偉業ちゃう、ただ苗植えただけ」
温泉に浸かりながら言う私に、顔は見えないが何か不満そうなシルヴィーナ。
そういえばシルヴィーナの服装今までと違うな、冬だから?
それとも何かある?
あと、49日も経過すれば体調も良くなっている。
ブラッドワインを一日三杯を二日続けると元に戻っていた。
それから空腹感が増し料理を食べるようになった。
ブラッドフルーツ丸かじりもするし。
私フルーツ丸かじり。
ブラッドフルーツ以外のフルーツも丸かじりして食べる事もしばしば。
蜜柑は皮をむいて丸まんまひょいっとくちに放り込む。
ただし、子ども達の見ていないところで。
お行儀が悪いからね。
「あーさっぱりした」
温泉から上がり、体を拭いて着替えて珈琲牛乳を飲む。
「これよねー……」
ほっこりしながら温泉場の入り口からシルヴィーナと出るとクロウが待っていた。
手紙を持って。
「えっと、この印璽ブリークヒルト王国の王族の物だよね?」
「その通りだ、中を見てみろ」
ちょっと嫌な予感を抱えつつ、移動してクロウの家に入り手紙を開ける。
内容端的に言えばこうなる。
各国が、各地域の神森が復活したことへの感謝を述べている。
なので、可能であるならばブリークヒルト王国へ来て感謝の言葉と報償を贈りたい。
来るのが無理なら報償を森に持って行く。
「めんどくせー!」
報償なんか入らんから、関わらんでくれ。
と言うのが本音。
「ならば報償は貰っておけ、此度は各国に神の啓示が下りた、お前達を害するしなものは来ないだろう、出したならその国が呪われる」
「んーじゃあ、外にでるのは無理と伝えて」
「分かった」
クロウは家から出て行った。
「……なんか気配すると思ってたら来てたのか……わざわざこんな雪の日に」
「そうですね」
そんな話をしていると、クロウが戻って来た。
「春になったら色々贈り物を届けに来るそうだ。今のうちに厳選しておけと言っておいた」
「そっかぁ」
冬だもんね、普通は来ないよね。
……わざわざ確認しに来たけども今回は。
ブリークヒルト王国の人も大変そうだね。
と他人事のように思う私であった。
「それにしても、たって49日で六百年間枯れ果てていた神森全てを復活させるとはな」
「面倒くさいのこの上なかったですがね」
「お前は乗っかってるだけだろう、飛んで移動するのは我だ」
「はいはい、分かってますよ」
クロウの言葉にややふてくされて言う。
植えてるのは私なんだけどねー!
「まぁ、ただお前が前にでてあれこれするのは止めておくべきだ」
「願ったり叶ったりだけど、どうして?」
「梢、お前大勢の前であれこれするのが苦手だろう、マルスの結婚式の時見ていたぞ」
「うぐ」
あの時はヘマしないように必死だったの!
「だから人前に出るのはなるべく避けるぞ」
「はぁーい」
少しげんなりした風に言う。
なんか疲れちゃって、神様に電話してみた。
「もしもし、神様」
『儂じゃよ、神様じゃよ。いやーよく枯れた神森を復活させてくれたのぉ!』
「はははは……」
『いやぁ、言って見るかいがあったわい!』
「もしかしてそこまで期待してなかった?」
『期待してないと言うよりも49日間続けるのは大変じゃろうなぁと思っての』
「畑仕事とかの方が大変です」
『そうじゃな』
いやまじで、スローライフだけどスローライフじゃないから。
「でも、贈り物で何か戦争勃発したらいやだなぁ」
『それはないぞ、皆此度の愛し子が吸血鬼であると知っているし、もしそれを不快にさせる物を贈ったらエンシェントドラゴンに国は焼き尽くされるからのぉ』
「全然嬉しくない」
『世の中そういうもんじゃよ』
物騒すぎる!
『まぁ、エンシェントドラゴンの怒りを買おうなんて馬鹿はおらんじゃろ』
「神様それフラグにしか聞こえません」
『そうかのぉ?』
「フラグだったとしても止めますからね?」
『クロウの奴がとまるかのぉ?』
「止まってくれないと困ります」
いやマジで。
『まぁお前さんがおれば大丈夫じゃろ』
「はぁ……」
クロウだけでも大変だけど村の人達もいるからなぁ。
筆頭がシルヴィーナ。
私に危害を加える物入れていた国にクロウと一緒に攻め込むんじゃ無いかと戦々恐々だよ。
シルヴィーナ私の過激派なところあるから。
やれやれ、どうにかならんかな。
『そう言えば梢』
「なんですか?」
『向こうの世界ではクリスマスじゃよ、今までは連絡が無かったから言わんかったが』
「あ……」
久しぶりに聞く言葉。
そうだケーキを食べよう。
生クリームを作り、スポンジにたっぷりとつけ、甘くした果実をはさみ、上には苺をたっぷりとのせて完成。
サンタクロースの人形があればよかったんだけど、こっちにはクリスマスなんて習慣ないからね。
「なんかケーキ作りたくなってケーキつくったの、食べる?」
「ケーキかいいな」
「ケーキですか、良いですね」
「コズエ様の手作りですか?」
「一応」
「それは楽しみです」
そう言うアルトリウスさん達の前にクリスマスケーキもどきを出す。
「これは……」
「美味しそうですね、白いのはクリィムですか?」
「うん、生クリーム」
「赤いのはイチゴですねこんなに沢山」
ちょっとイチゴが大きいのでカットしてるけど気にしない。
「じゃあ、食べようか四人で」
「いいんでしょうかこんな贅沢……」
「たまには良いでしょう」
「そうだな」
今は冬で寒い時期。
夜は冷え込み誰も出たがらない。
だから──
私達だけの秘密の時間。
「紅茶にする?」
「お願いします」
「ああ、頼む」
「お手伝いします」
紅茶をティリオと一緒に入れて、皆の分を配り、砂糖を各自入れて、四等分のケーキと共に味わう。
生クリームの優しい味と、スポンジの柔らかさ、それから中の果物の甘さと、苺の甘酸っぱさ。
全てが懐かしかった。
そう言えば、お母さん達この時期シュトーレン買ってきて毎日ちびちび食べてたっけ。
来年か再来年にはシュトーレンも作ろう。
私はカットされた苺を頬張りながらそう思ったのだ。
梢は健康に戻り、そして49日間かけて神森を復活させました。
神森に特別な苗を植えることの繰り返しです。
またブリークヒルト王国からの手紙にはちょっと雑な返し方、イザベラ達のような親しい方が居ないからですね。
そして今更ながら神様がクリスマス発言。
ケーキを作った梢はアルトリウス達とゆっくり食べて居ました。
シュトーレンは食べたことないんですよね、興味はあるんですが……
いつかたべたい、が高カロリー……
ここまで読んでくださり有り難うございました。
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