憂鬱を吹き飛ばすお願いごと
夕方目を覚ました梢は広場で体操をしてから村へと行く。
魔族の国と交易などをしているのを見ていると、ネヴィアとランスロットが居て──
翌日の夕方、目を覚ました。
「んー……」
一ヶ月丸々寝ていたのと、体を長時間動かさなかった為、体の調子が悪い。
いや、昨日も悪かったけど。
体が錆びつくってこんな感じかなぁと思いながら着替えて下の階へ。
「おはよー……」
「起きたかコズエ、大丈夫か?」
「んー……」
「起きましたかコズエ、不調などは?」
「体が、怠い……」
「コズエ様、あまり無理なさらぬよう。仕事は私共で大部分を終わらせましたから」
「うん……」
そう言って、アルトリウスさんの入れてくれたブラッドワインを飲む。
「美味しい……」
「一ヶ月寝込んで、漸く体が起きようとしているのだ、無理はするな」
「うん……」
私はブラッドワインを飲み終えると外に出た。
「……」
そして広場に向かう。
広場で、体操をして、体を動かす。
ばき、ぼき、ぽき
体の鳴る音が聞こえた。
「さて、村に行こうか」
私は村へと向かった。
村は交易の真っ最中。
あと、交易の中にネヴィアさんとランスロットさんがいた。
「ネヴィアさん、ランスロットさん、どうしたんです」
「コズエ様……実は私ランスロットに婚約を申し込まれたのです」
「ほほぉ」
ランスロットさん、やるじゃん。
「ただ、贈り物になるものがハイエルフやドワーフ製だと高く買えないのです」
「あー……」
「ですので、交易で安く良い物を探している最中です」
「あ、ランスロット。これはどう?」
「お目が高い、これは魔族の国の石を使った指輪です、お買い得ですよ、今なら二つ買うなら、お安く二つで金貨1枚までまけておきますよ」
「うむ、買えるな」
「では、これにしましょう」
二人はおそろいの指輪をはめて微笑み合う。
悪い気配もないし、大丈夫だろう。
「愛し子様、一ヶ月ぶりですね」
「ああ、ルフォード様、どうですか王様になって」
「やることが沢山でこちらに中々来られませんよ」
「でも、今日来てる」
「昨日、愛し子様がお目覚めになったと連絡が来ましてね」
「そうですか……」
「お体大丈夫ですか?」
「ええ」
「コズエ様、大丈夫ですか?」
「リアさん、レストリアさん、ルビーさん」
「あの件から寝込んでいたと聞き不安だったのです……式には出席できないと聞いていましたが……」
「元々でられないですから、まだ魔族の国は夜は危険なのでしょう?」
「それが、リアが各地に浄化に赴いて夜も安全に歩けるようになったのです」
レストリアさんはそう言う。
「まぁ、それなら寝込んでいないで出席すれば良かった」
本当そう。
「いえいえ、愛し子様はストレスで身も心も疲弊仕切っておりました」
「はい」
「そうです、コズエ様。まだお体を大事に、無理はなさらぬように」
「ああ、はい」
十円ハゲできてないから大丈夫だと思うんだけどね。
十円ハゲできてたら流石にクロウを恨む。
こちとらまだ若いんだぞ。
ハゲなんかできて貯まるか。
うちの母ちゃんも爺様達もふさふさだったんだぞ。
ハゲハゲ言ってると、ハゲの人に失礼だからこの辺にしとこう。
……ドワーフの人の中にハゲてる方いるし。
誰とは言わないけど。
私は皆から離れてため息をつく。
皆が心配するからだ。
しかし、村にいると人目につくので──
「ここに来ました」
『愛し子様、そういうのは誰かに打ち明ける物では』
「そうなんだけどさー、内容が内容だから打ち明けにくくて」
ユグドラシルの根元に腰を掛け、息を吐く。
森の空気は好きだ。
特にユグドラシルの周囲の空気は。
心が落ち着く。
「思い出すのも嫌だからこうするのが一番楽なんだよねー」
『そんなにですか……』
「そう、しばらくは精神療養的な?」
『……私で良ければいくらでもお話を聞きますよ』
「本当? ありがとう」
私はユグドラシルとたわいの無い話をした。
たわいの無い話、いや違う。
私が出会ったユグドラシルの話から、今のユグドラシルがどう世界を見ているか結構重要な話。
今は世界からほとんど瘴気は消えて、各地は豊かになっているらしい。
ユグドラシルの苗木がユグドラシルになったあの祝福が効果を発揮したそうだ。
ただ、他に問題がある。
神森が十分の一まで激減した事が今も問題である事。
まぁ、五つから六つに増えたけど焼け石に水状態。
いずれ瘴気が各地に現れるだろうと。
神森を失った場所に。
ならどうするか?
神森を復活させればいいらしい。
って言われてもそんな事簡単にできないよ!
と言って見ると神様からスマホに通話が入る。
「はいもしもし?」
『ユグドラシルと話してたのを見とったぞい』
「はぁ」
『事実神森は増やさなくてはいけない、が神森があった場所は人が入れない場所となっている』
「何でですか?」
『実はな、瘴気が消えてない場所が神森がある場所なんじゃ』
「うへぇ」
つまり瘴気のある場所に行かなきゃいけないわけですか私?
『まぁ、そういうことになるの。しかも瘴気まみれだから普通の苗木じゃちょっと不安じゃ』
「はぁ」
『一日一本だけ生える苗木を持って行くのじゃ』
「まじですかー」
『クロウも、お前さんも瘴気耐性はあるから二人で行けば大丈夫じゃろ』
「ところで、植えた苗木に堆肥とか水は?」
『最初だけやればいいんじゃよ』
「なるほど」
クロウとかー会話弾まなそう今は。
まぁでも、クロウと行くしか無いよね。
『まぁ、クロウと行くのは気まずいかもしれんが、彼奴も十分反省してるんじゃ』
「反省ねぇー」
同じ事次やったら鱗毟ってやる。
と思った。
取りあえず、一日に一本しか生やせない苗木を生やして貰い掘り起こす。
根っこを大事に包むと、抱きかかえて村へ戻った。
「クロウは何処ー?」
「呼んだか梢!」
滑り込むように走ってきた。
「神森の復活を神様に託されたから、近場の神森から復活させていきたいから連れてって」
「よし、任せろ」
クロウはドラゴンになり、私は背中に乗った。
クロウは飛び立ち、10分ほど猛スピード飛んでで黒ずんだ森へと連れて来た。
着陸し、クロウから下りて言う。
木々は葉っぱが無く、黒い物がまとわりついている。
「これ、瘴気だよね」
「うむ」
クロウは人型になって言う。
「世界樹の浄化作用を超えてしまった結果こうなった訳だ。」
「本当に植えて大丈夫?」
「何、もうこの辺りは小国でお前を害する連中はおらん、つまり瘴気はここにとどまっているだけだ」
「それなら良いんだけど……」
私は広場の広い箇所に穴掘りをして、苗木を植えた。
そして持ってきた堆肥と水をやる。
「はやくおおきくなぁれ!」
そう言いながら水をやると苗木が光った。
「え?」
まぶしさに目をつぶり、光がなくなると目を開けた。
なんてことでしょう。
苗木は立派な巨木へと変貌し、枯れた木々は緑の葉っぱをつけているではありませんか。
植物や水は澄んだ色になり、私は呆然としていた。
「すごぉい」
「だろうな、良し戻るぞ」
「うん」
クロウに乗って私はふと思った。
もしかしてこれ後49回は繰り返さないと駄目?(贖罪の神森は新しいのだから)
と。
ネヴィアとランスロットの婚約という目出度い話もあれば、梢が寝込んでいる間にリアとレストリアの結婚式が終わってしまった事にちょっと梢がしょんぼりするのもありました。
ルフォードも王様になり、忙しい中梢の心配をして来てくれたようです。
そしてユグドラシルと話してた結果、神様から神森の復活を任命されたり、いつも通りに見えてちょっと大変な日々が始まりました。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
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