断罪と改革
ゼスティア王国に来た梢達。
糾弾会場となっている場所に案内され、クロウはリアの罪が冤罪である証明を上映し始めた。
その結果梢は──
王宮の前に着陸すると、一人の男性──確かルフォード様と一緒に来た方が居た。
「お待ちしておりました、リア嬢、ルビー嬢、レストリア様、愛し子様、エンシェントドラゴン様。今まさに糾弾会は混沌を極めております」
「よい、ならば我がとどめを刺してやろう」
物騒な言い方やめれ。
と思いながら男性について行く。
ルフォード様と貴族達が王室──国王陛下らしき男性と若い男性──おそらくステファン王太子を糾弾していた。
「邪魔をするぞ」
「これはこれは、エンシェントドラゴン様! 来ていただき感謝です。愛し子様も来て下さり感謝の極み」
ルフォード様がそう言うと会場がざわつく。
まぁ、そうだろう。
「そして魔族の王、レストリア様も来て下さりましたか」
「勿論だ」
レストリアさんは堂々として応える。
また会場がざわつく。
「さて、我らが来たのは他でもない、リア侯爵令嬢を冤罪に陥れた愚者共への制裁だ」
クロウがリアを前に立たせる。
「では、始めよう、冤罪劇の一部始終を見るがいい!」
魔晶石、結構でかいのを取り出して映し出した。
結論、見るんじゃ無かった。
えげつなかった。
吐き気がする。
後で三人に癒やして貰おう。
脅しもあれば、魅了とかも使ったりしてたし、挙げ句には体で落としたり……
つまりセックスして共犯者にしたりしていた。
げろりたい。
何が悲しくて他人のセックス実況見なきゃいけないんだ、こんなに沢山。
女性の方々は聖女らしき女性を汚らわしいと言っており、聖女側の男性達はドン引き。
聖女は顔を真っ赤にしていた。
てか、これ聖女か?
阿婆擦れの間違いじゃね?
ちなみに、セックスシーンをリアさんはルビーさんとレストリアさんのお陰で見なくて済んでいた、羨ましい。
目も耳も塞がれてたし。
私なんてそんな余裕なくて見せられたよキッツい。
「うっわ、汚らわしいわ」
私はそう吐き出した。
「ん? 愛し子には早かったか、すまんな!」
思ってないだろう畜生!
「そうだな、汚らわしいな。こんな女が聖女など」
クロウが聖女に近づいていく。
逃げようとする聖女をルフォード様の近衛兵達が捕まえる。
逃げられない聖女の頭をクロウは掴んだ。
「神の代行者エンシェントドラゴンとして言おう、お前は聖女失格だ、その権限没収させて貰う」
「⁈ や、やめてやめて‼ 私の力奪わないでよ、お願いだからぁ‼」
「断る」
「い、いやあああああああ‼」
光り輝く、そしてクロウの手には光る球が。
聖女だった女の髪は真っ白になっていた。
「髪の色は伸びれば元に戻るだろう、さてこの力は……」
クロウはそう言ってリアさんの手に渡した。
光は吸い込まれ消えた。
「お前が聖女の力を使え」
「畏まりました、エンシェントドラゴン様」
リアさんは丁寧にお辞儀をした。
「リア! 僕が悪かった! だから──」
「婚約破棄も信じてもらえなかったのも辛かったです、ですが私には──」
「私が居る。リアは我が国の妃として迎え入れることになっている」
「兄上、貴方達はリア嬢を信じず、ルナ嬢ばかり信じた。父上も同じです」
「そのような愚王と愚かな王太子に国は任せるなど我が許さぬ」
クロウが圧のこもった声で言う。
貴族達も同意の声を上げる。
「此度を持って王は退くが良い、ルフォードが王となり、始祖の森と魔族の国との交易を続ける」
元王太子派の方々──いや、元聖女を擁護していた連中はこうして破滅した。
破滅と言っても、今まで望まれていた輝かしい未来が閉ざされただけ。
可哀想だとは思うけれども、リアさんが信じていて裏切られた心の傷に比べればなんてこと無いんじゃ無いかな?
冷徹かな私。
「がぇぜぇ! わだじのぢがら!」
涙、鼻水、とかで顔をぐちゃぐちゃにした元聖女──極悪女はリアさんに襲いかかろうとして兵士達に止められていた。
「お前には呪いが相応しかろう」
「え、いぎゃあああああああ‼」
黒い茨の紋様が女の肌を覆う。
女は失禁して失神していた。
「罪人としての対応は任せる、殺すな生かして償わせ続けろ」
「エンシェントドラゴン様、もう良いのでは?」
「同じような事をする輩が出ないように見せしめだ」
「リアさんは優しいね、陥れた相手に」
「愛し子様、何事もやり過ぎというものがございます?」
「え、私の命狙った国とか宗教滅ぼしたりしたけどやりすぎたかなーって感じは無いよ。冷徹かなぁ」
「それは……」
「まぁ、リアさんの優しさに連中が漬け込まないようにしないとね」
「では、さっさと帰るぞ。国王よ、我の入った通りにしてなければこの国は滅ぼす、良いな」
お飾りになった国王は何度も首を縦に振った。
「──と、言うことがありました。誰か私を癒やしてください」
「……生々しい物をみたな」
とアルトリウスさんが突っ伏す私の頭を撫でてくれる。
「何か飲みますか? 紅茶はいかがです?」
「ホットミルクティーが飲みたい、砂糖入りで」
アインさんがそう言うのでリクエストする。
「クッキー焼いておいたんです、食べますか?」
「食べる」
ティリオさんが差し出したクッキーに齧り付き、食べ始める。
「クロウもさ~~あんなシーンあるなら先に言っておいて欲しかったよ~~」
「ところでクロウ様は?」
「国の改革見届けるためにゼスティア王国に向かった、リアさん達は魔族の国へとレストリアさんと向かった」
「そうですか……」
「式を近いうちにあげるから参加して欲しいって言われたけど、夕方から式を挙げるとなると、魔族の国は今はまだ夕方以降はちょっと危険だからお断りしておいた。代わりにクロウとシルヴィーナが行くことになったけど」
「ああ、コズエは吸血鬼だからな」
「他の人が忘れても私は忘れない、これでも私は吸血鬼ですよ」
「わかっていますよ」
「勿論です」
ミルクティーが出される。
砂糖入りのそれを飲み干す。
「ふへぇ」
私はまだ疲れが抜けないので立ち上がりふらふらと歩いて歯磨きをして、そのまま二階へ向かう。
二階へ向かった私は、自分の棺桶にダウン、棺桶を閉じて眠りに落ちた。
「クロウ様、コズエになんて物を見せているのですか」
「すまんな、まさかあそこまで拒絶反応するとは思わなかった」
「私でもドン引きしそうなんですから、コズエはもっと引きますよ」
「後で謝ってくださいね」
「分かっている」
ゼスティア王国から戻って来たクロウにアルトリウス達は文句を言った。
梢の精神の疲弊具合が酷かった為である。
クロウは謝罪しつつも、梢のそういうのへの耐性の無さに危惧を抱いた。
「お前達、大丈夫なのか? 我慢しっぱなしでは?」
「余計なお世話です」
「無理強いはできません」
「そうです」
クロウが思う以上に忍耐力のある三人に、クロウは驚きつつも再度謝罪する。
「すまない、今後気をつける」
「これで、コズエが性行為無理ーとかになったらクロウ様の所為ですからね」
「ええ」
「確かに」
クロウは三人に言われて、やってしまったなと今更ながら思った。
性悪聖女は体を利用してまでリアを冤罪で追放したかったが、クロウの証拠でそれら全てを白日の下にさらされ、恥を掻かされた上、聖女の力も没収、更に呪われました。
リアは冤罪が証明されましたが、国には戻らずレストリアと共に魔族の国へと向かいます、聖女の力を貰い。
そして梢は、生々しい性描写が見せられ、精神グロッキーになり寝込むことになりました。
クロウは三人からなんてものを梢に見せたんだと怒られ此度ばかりはやっちまったなと反省する羽目に。
梢は次回ちゃんと起きるのでしょうか。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
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