冤罪を掛けられた令嬢、一目惚れした魔王、そして聡い第二王子
冤罪をかけられた令嬢リアの話を聞いた梢。
証拠が向こうが何故か多数ある中を冤罪を晴らすのは難しいのではないかと言うと、クロウは簡単だと話す。
クロウが冤罪の証拠集めをする代わりに、村での仕事をルビーとリアに任せると言って──
来賓の館に案内し、お茶を出し、話を聞くことにした。
内容としては、聖女と呼ばれるルナという女に冤罪を掛けられたという。
聖女である自分を蔑ろにしいたぶったと。
何もしていないのに、証言者が多数おり、断罪され、婚約破棄まで持って行かれ多くの友人を失い、家からも追放されたのがリアさんだそうだ。
ルビーさんはそれを庇ったので馬車と二人分の服を持ってここまで来たらしい。
リアさんがそんなことをする訳がないとルビーさんはリアさんを信じたそうだ。
御者をやってくれたのはルビーに従う者だったそうな。
「え、冤罪を晴らすのって難しくない?」
「いや、簡単だ。魔晶石を使えばできる、それは我がやる」
「本当ですか⁈」
「代わりにお前達には村の手伝いをして貰いたい、今忙しいのでな、毎日収獲で」
「寝る時はここをお使い下さい」
クロウとシルヴィーナが私の代わりに話を進める。
「今日はお疲れでしょうから、ゆっくり休んで下さい」
「いえ、今日からお手伝いをします!」
「私にもお手伝いさせて下さい、今は何も考えたくないんです……」
「じゃ、じゃあ……」
二人に着替えを渡し、畑と果樹園へ案内する。
「これ、毎日のように実るんですよ」
「ま、毎日⁈」
ルビーさんが驚いている。
まぁ、それもそうだろう。
「村人総出で収穫しているので良かったら手伝って下さい」
「ああ、任せられた」
「私もお手伝いしていいでしょうか?」
「いいですよー、そうですね。魔族の方々との交易を行ってるんでそっちの手伝いをして下さいませんか?」
「はい勿論です」
シルヴィーナが交易場へとリアさんを連れて行った。
「では、収穫と行きますか」
「そうですね」
収穫はいつも以上の速度で終わった。
肉体派恐るべし。
「交易はどうなりましたかー」
「いやぁ、リアさんのお陰でスムーズにできましたよ」
「お役に立てて何よりです」
「ただ、レストリア様の顔色がいつもと違いましたな」
おや?
おやおやおや?
もしかして、レストリアさん、リアさんに一目惚れ?
ひょこっとレストリアさんの顔を覗き込んでみると。
ちょっと赤い、けど病気では無い様子。
「レストリアさん、リアさんに一目惚れですか?」
「⁈」
レストリアさんは口をはくはくとさせて、真っ赤な顔をしたまま、固まっている。
「仲良くしてみてはいかがです?」
「ば、馬鹿な事をおっしゃらないで下さい、コズエ様。彼女は冤罪で婚約者に婚約破棄された身の上、そのような女性の心の隙を突くなど……」
「ふーむ、一理ある」
あ、その情報は知ってるのね。
なので、レストリアさんを放置してリアさんとこしょこしょ話。
「ミリアさん、レストリアさんをどう思いますか?」
「とても優しい御方だと思います」
「ふむ、そうですか……」
「……正直なところ、もしレストリア様が私を好いて下さるなら、私は側に居たいのです。私の思いは全て否定されましたから……」
「そうですか……」
それを持ってレストリアさんのところへ。
「──だってさ」
「~~‼」
「まぁ、出会ってすぐだからもう少し日数置いたらいいんじゃない」
「そうさせていただきます……」
いやぁ、青春っていいねぇ。
と眺めていると、
「他人の恋には丁寧なのに私達の恋にはちょっと手抜きすぎるんじゃないかな」
「エーソンナコトナイデスヨ」
アインさんの言葉に目をそらす。
そう言えば忙しくて三人との時間中々取れてなかった!
「コズエ様、お忙しいのは分かりますが私達のことも見て下さいな」
「そうだ」
「ごめん、ここ最近忙しくて時間大切にしてなかった。休憩するから何か一緒に食べよう」
そう言って三人を自宅に押し込め、作り置きしていたパイと紅茶を出す。
「良い香りです」
「良かったぁ」
「パイも美味しいです」
「そう」
「全く、コズエは周囲に使われるからな」
「ぐうの音も出ない」
私はそう言って紅茶に砂糖を入れて飲んだ。
体にしみわたる優しい甘さだった。
一週間が経過した頃、森にゼスティア王国の王家の馬車がやって来た。
クロウと、私とシルヴィーナで対応。
「兄が失礼しました、私は側室の子で第二王子のルフォードと言います、愛し子様、エンシェントドラゴン様」
「ルフォード様は、何用で?」
「こちらに、冤罪で婚約破棄に追いやられたリア嬢と、彼女を庇ったルビー嬢がいると聞いて来た」
「! 貴方は冤罪と信じてくださるんですね」
リアさん驚いている。
「勿論、何せ実際現場を見て、父上に提言したのだけど聞き入れてもらえなかったからね」
「そのような愚王は要らんな、王太子も同様に、ルフォードと言ったか、貴様に国王となる意思はあるのか?」
「無ければこちらに来ておりません」
なんか難しい話が始まりそう、というか始まった。
ステファン王太子を王太子の座から引きずり落とす、それにはルナの冤罪を信じただけでなく、国費の無駄遣いも探さなきゃならないらしい。
あと、どれだけ政治が無能かも、それを一ヶ月でやれとクロウが行ったがルフォード様は頷いた。
どうやら策があるらしい、それをクロウと話合いする為に森に入れる。
最初は王室の馬車ということでびくついていたリアさんだったが、ルフォード様が丁寧に謝罪することで無事軋轢は生まれなかった。
クロウと、ルフォード様は話し合いの結果、この森と交易をルフォード様の土地で行い、同時に政治的成果を残すということになった、どう残すのかは分からない。
ただ、始祖の森と交易をするというのは政治的にもかなり有用だということが分かるらしい。
なので、ルフォード様の領地と転移門を繋げることになりました。
作るの面倒くせぇ!
作り終わったら、後は交易を任せるだけ。
それとクロウに冤罪の証拠集まったかと聞いたら「面白いものまで集まった」と言ってきたのでなんか怖い。
とにかく、一ヶ月はひたすら作物収穫しつつ、夫三人と交流しつつ、頑張った。
交易は他の人任せ、私には向いていない。
そして一ヶ月が経過した。
ルフォード様はどうやら貴族達に自分の成果をアピールでき、兄であるステファンから離れつつあった貴族の心をがっちり掴んだようだ。
ステファンはほとんどの貴族が自分から離れ、孤立無援状態。
そんな中内部から離反もあり、かなり二進も三進も行かない様子。
肝心の聖女は金遣いが荒く、国の予算を食い潰しているようだ。
そんな聖女いるんか?
と思ったが、いたみたい。
そして、リアさんはレストリアさんと良い仲になり、もう元婚約者である王太子ステファンのことは吹っ切れた様子。
レストリアさんも、冤罪を晴らす現場に同行することが決まった。
なんか嫌な予感するけど、私も同行することに、勿論クロウは当然の如く同行することが決まっている。
シルヴィーナは留守番。
ルビーさんは同行。
「さて、冤罪を晴らす為の舞台は整った。ゼスティア王国へ行こうではないか!」
クロウが高らかに言う。
「コズエ様、大丈夫ですか?」
「いや、なーんか嫌な予感するのよ、めちゃんこ」
悪いことは起きないが、多分私の精神がグロッキーになる物が出そうで怖い。
『ルフォードは先に王宮にいる、我らは今向かおう、さぁ乗るが良い』
と、ドラゴンになったクロウに皆乗る。
「いってくるー」
「気をつけて」
「お気をつけて」
「気をつけて下さい」
「コズエ様、何かありましたら自分の精神の安定を優先して下さい!」
「うんー」
シルヴィーナ何か知ってる?
とは言えず、私達はそのままゼスティア王国へと向かった──
リアが冤罪だと信じているルビーと、冤罪である証拠を見た第二王子ルフォード。
クロウは証拠を集めます、アレを使ってです。
クロウならその時の事を知らなくても証拠を集めるのが可能なほど魔力を持っています。
傷心のリアは、自分に優しく接してくれて好意を抱いてくれているレストリアに惹かれ、レストリアも冤罪でほぼ孤立無援のリアを愛おしく感じ、一ヶ月で良好な仲になっています。
そして一ヶ月で冤罪である証拠を集めきったらしいクロウとなんかやな予感がする梢。
梢のやな予感とは一体。
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