マルス王太子の結婚式
マルス王子の結婚式、王太子としての結婚式の日、梢は見えないようにローブで隠す予定だが、しっかりとメイクや髪を整え、ドレスを纏っていた。
そして、クロウと共にドミナス王国の王都に向かい、招待状を持って王都に入り、王宮へ向かう──
ついにこの日がやって来た。
マルス王子の結婚式。
夕方目を覚まし、髪を整え、顔を洗い、軽く紅を塗り、ドレスを身につけ、その上にローブを羽織り、フードを被る。
ユグドラシルの枝は既に貰っており、アイテムボックスの中だ。
「クロウ行こう」
「ああ」
私はドラゴンになったクロウに乗った。
クロウは高く飛び上がりそのまま猛スピードで飛んで行った。
十数分ほどでドミナス王国の王都に着いた。
クロウは人型になり、私の手を引き招待状を警備兵に見せた。
「エンシェントドラゴンだ、正妃マリアから弟子と共に出席して欲しいと頼まれた」
そう言って二枚の招待状を見せる。
警備兵はそれを確認すると、王都への入場を許可した。
王都はお祭り騒ぎだった。
「マルス殿下のご結婚だ! この国は安泰だ!」
とかそう言う声も聞こえてくる。
どんだけもう片方の王子は望まれてなかったんだよ。
「アッシュ殿下だったらこの国は終わりだったぜ! 正妃マリア様万歳! 側妃クレア様万歳! 愛し子様万歳!」
そんな声も聞こえた。
ちょっとむず痒い。
「梢、さっさと行くぞ」
クロウは私の手を掴んでお城へと急いだ。
お城に着いて、また招待状を見せて案内される。
「他の人達と違う感じする」
「だろうな」
と話していると、着替え終わっている婚約者様達と正妃マリア様と側妃クレア様がいた。
「エンシェントドラゴン様! 愛し子様、ようこそいらっしゃいました!」
「貴方様の為に式は夕暮れからにしております。灯りをつけているのでご安心を」
「なんか申し訳ない……」
「取りあえず、一応梢は我の弟子という扱いにしておいた、愛し子だとバレるだろうが、それでも少しでも厄介事は減らしたい」
「畏まりました」
「コズエ様!」
イザベラちゃんが抱きついてきた。
「イザベラ様」
「私ね、指輪の交換のお手伝いをするの!」
「それは責任重大ですね」
「ええ! コズエ様も!」
「ははは……」
私は空笑いを浮かべると誰かが入って来た。
「おお、マリア、クレア! その方が愛し子様ですな。初めましてこの国の王アルフォンスです」
国王様だった。
「ど、どうもー……」
緊張のあまり私は目をそらす
「愛し子様もドレスを着てるらっしゃるの?」
「見せて下さいな!」
「えっとあの」
ローブを脱がされる。
「きゃー! 大人っぽい! 素敵!」
「本当、愛し子様で無ければ王宮直属の服飾職人にしているところだった」
「コズエ様素敵!」
シックめの色の服を着ていた。
フェミニンな感じ。
さすがにこんな公でガーリー系は無い、レトロフェミニンにシックを追加した物だ。
というかそれ以外思いつかなかった。
「じ、自分、隠れてるんで」
慌ててローブを取り返し纏い、フードを被る。
「ああ、何故だろう、愛し子様には親近感が湧きますな」
国王様がそう言う。
苦労人と言うことか?
「ああ、お前も愛し子様も苦労人気質だからな」
「マリア……お前がもうちょっと優しくしてくれたら……」
「優しくしてたらお前は調子に乗るだろう、アルフォンス。だから厳しく行くぞ」
「そんな……」
「梢、お前は肩をはるなよ、力を抜け」
「う、うん」
「愛し子様は重圧があまりかからないように配慮したいですが、此度は王太子となったマルスの結婚式。負担がかかり申し訳ない」
「い、いえ! 精一杯やらせていただきます」
そう言ってユグドラシルの枝を取り出す。
「そうだな、お前らしく頑張れ」
クロウは私の肩を叩く。
「そろそろお時間が……」
「エンシェントドラゴン様とお弟子様はこちらに……」
と別々に案内される。
舞台裏っぽいところから、モニターのような映像を見る。
マルス王子と、婚約者様達が一緒に歩いてきている。
マルス王子はお母様のクレア様と。
婚約者様達はお父様らしき方々と歩いている。
誓いの言葉を教皇様? が述べている。
四人とも頷き合って誓いますと、最期に言っている。
そして指輪の交換を終えると──
『では、ユグドラシルの祝福を──』
と言うと会場がざわめいた、クロウに促され私は舞台へと出る。
「枝の葉っぱの部分で奴らの頭を軽くこすればいい。終わったら枝を持ち直して、頭を下げて戻れ」
と言われてそうする。
四人とも静かに頭を下げている。
私は枝を持ち直し、深く頭を下げてクロウと戻る。
「ねえ、今の方エンシェントドラゴン様とお弟子様って言ってたけど本当は愛し子様なんじゃないかしら」
「確かに、ローブで姿を隠してたから、それもありそうだ」
「エンシェントドラゴン様以外でユグドラシルの祝福を授けられるのは愛し子様だけだもんなぁ……」
ひー!
バレテーラ!
「では、さっさと去るぞ」
「あ、うん」
クロウの言葉に頷き、来た道を戻り、王都を後にした。
「愛し子とバレても、お前の姿は見えなかっただろう、宵闇のローブのお陰で」
「そうなの?」
「日除けだけでなく、姿を隠す効果もある」
「そうなんだ」
「お前は何も喋っていないし、会場の連中はお前を探そうとしても分からぬだろう」
「……そうだね」
森に帰還し、数日後。
ドミナス王国の国王陛下と正妃マリア様から感謝の書状が届いた。
取りあえず、大事に仕舞っておくことにした。
「やっと大きな仕事が終わったって感じだ」
私は家のソファーに横になり、伸びる。
「今年も色々ありましたねぇ」
「そうだね……ってまだ今年は終わってないよ」
アインの言葉に思わず突っ込みを入れる。
「これは失敬」
「コズエ様!」
バン! と勢いよく扉が開いた。
「ど、どうしたのシルヴィーナ⁈」
「森の入り口にゼスティア王国の貴族の馬車が来ています!」
「え、何処の国?」
「コズエ、ドミナス王国と対をなすほどの大国ですよ」
「マジで」
取りあえず、出向いてみるかと思い私はクロウとシルヴィーナの三人で森の入り口に向かった。
馬車からうら若くどこか凜としていたようだが愛らしいくもある女性が涙を流して泣きながら現れた。
そしてその女性を支える、凜々しく逞しい女性が出て来た。
「ここに、エンシェントドラゴン様と愛し子様がいると聞きました!」
凜々しい女性はそう声を上げる。
悪意は二人から全く感じられない。
「我がエンシェントドラゴン、そしてこちらの娘が愛し子だ」
「ど、どうも」
「愛し子様、エンシェントドラゴン様! 私の名はルビー・ヘミソフィア。こちらの女性はリア・カッターノ。どうか、リアの冤罪を晴らして欲しいのです!」
一難去ってまた一難。
だが──
冤罪を晴らすなら、悪くはない。
私はそう思った。
無事王宮での仕事を終えた梢。
ちなみに梢のドレスなどは全て自作です、レトロェミニンな感じの衣装になってます。色が控えめで、可愛すぎない綺麗めなドレスと思ってください。
そして落ち着けると思ったらまた厄介事が舞い込んできました。
ですが、梢はやる気満々のようです。
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