魔族の国の世界樹~豊かになった代償~
魔族の国の土地の状態がまだ悪い事に悩む梢。
そんな梢に解決策を提示するクロウ。
しかし、梢の様子から待っていられないと判断したらしく「裏技」があると梢に伝え──
「で、土壌改良するのはどうすればいいの?」
魔王様達が帰った後、私はクロウに尋ねる。
「冬の時期の雪にお前の魔力を込めればいい」
「無理じゃない?」
「正しくは、冬の妖精と精霊、水と雪、土の妖精と精霊達とに、お前の魔力を注ぐんだ」
「どうやって注ぐの」
「冬になったら教えてやる」
「あざーっす」
取りあえず冬になってからだな。
「でも、何で冬? 今じゃ駄目なの?」
「冬は休眠の季節だ、その間に栄養豊富な雪を降らせ、春の雪解けと共に山々を潤し、栄養豊富な水を各地に行き渡らせる、そして冬の間にその土を豊かにする。そのことを伝えるから、冬までの間魔族の冬ごもりの支度をさせねばな」
「なるほど」
「場所は名無しの神森で良いだろう、あそこなら精霊も妖精も集まる」
「ふへーい」
「土壌が豊かになるまでは季節の妖精と精霊にも力を与える必要があるな」
「ふーむ」
「一番手っ取り早いのはもう一回祝福して貰うことだが……面倒だな」
「なるほど──」
「あの祝福は苗木のユグドラシルが世界樹ユグドラシルに生長しきって起きることだ、もう一回枯れてくれなんて言えるか」
「ナルホドー……」
でもあんなに痩せ細った大地だと待つのも大変だろうな。
「やれやれ、お前はせっかちだな、仕方ない。特別に名無しの神森に行って裏技を行うぞ」
私の心を読むようにクロウはそう言った。
裏技?
と内心クビをかしげるが、私は転移門で魔族の国に移動し、そこからクロウの背中に乗って名無しの神森へと向かった。
「元気にしてた?」
『はい、元気にしてました。愛し子様』
「世界樹よ、此度はこの土地を豊かにする為に来た、愛し子も力を貸そう、其方の力も貸して欲しい」
『エンシェントドラゴン様がおっしゃるなら』
「で、具体的に私は何をすればいいの?」
「世界樹に魔力を注げば良い、我も手伝おう」
「う、うん」
クロウが世界樹に近づいたので近づく。
手を当てたので手を当てる。
「いいか、魔力を注ぎ込め」
「う、うん」
私は自分の体の中にある、魔力が世界樹に流れていくイメージをした。
数秒後、世界樹は輝き出す。
「梢、まだ手を離すな」
「う、うん!」
まぶしさで目をつぶりながら言う。
ちらりと目を開けると、クロウは目を開けて真剣な表情をしていた。
額には汗が滲んでる。
そうか、クロウに負荷を掛けてるんだ。
私。
もっと強く。
もっと大きく。
力を注げ。
「世界樹ノーワン! この大地に恵みを──!」
叫んでより、強く手を当てる。
すると、私の体と世界樹が更に強く輝きだした。
「梢⁈」
クロウが驚いている。
目を開けていられない位輝く。
輝きが消えて、世界樹ノーワンを見上げる。
「うっそでしょ⁈」
世界樹ユグドラシルに匹敵する程巨大な木になっていたのだ。
「ああ、梢お前の力が相当強かった証拠だな」
『愛し子様、ユグドラシルに近しい力を得た結果この土地を蘇らせることに成功しました、精霊も妖精も多く行き交っています』
びゅんびゅんと飛ぶ妖精や精霊、足元を走り回る妖精や精霊を見てその言葉の意味を理解。
「森から出てみるか」
「うん」
森の外に出ると、木々は紅葉し、植物は秋だというのに勢いよく生えており、大地はふかふかとした感触があった。
しばらく眺めているとバッサバッサと音がした。
上を見上げると魔王様がドラゴンに乗ってやって来た。
「愛し子様、エンシェントドラゴン様、これは⁈」
「愛し子──梢がこの土地が痩せているのを憂い、何とかしようとして世界樹に力を注いだ結果がこれだ、正直我もここまで変貌するとは思わなんだ」
「私も、驚いています……」
どうしよう。
「もしかして私結構大変なことしちゃった?」
「大変だが、良いことだ」
クロウが背中を軽く叩いた。
「……」
しばらくすると、魔王様が膝をついて、頭を下げた。
「愛し子、コズエ様。この魔王レストリア、貴方に命を預けましょう、何かありましたらすぐお呼びください」
「あ、う、うん。でもクロウがいるから大丈夫かな? レストリアさんは自分の国を豊かにすることを考えてくださいな」
「……有り難うございます」
私達は転移門まで移動し、そこから村に戻った。
「ふぅ、問題解決、かな?」
「だろうな。後は春になったら種なんかを融通してやるといい」
「そうだね」
「まぁ、今の状態なら一週間で大抵の物が実りそうだから渡してやるのも良さそうだ。だが、明日にしろ」
「なんで?」
クロウが私の背中を叩く。
フラフラとして気付いたら座りこんでいた。
「梢、お前は先ほどの件で力を使い過ぎだ、回復には一晩かかるからもう寝ろ」
「うん、分かったそうする」
へろへろになっていた私は自宅に戻って、棺桶に入った。
そのまま目を閉じ、意識を暗転させた。
「クロウ様、コズエがふらついて戻って──クロウ様?」
ベッドに横になっているクロウを見て、アルトリウスは声を上げそうになるのを抑えた。
「クロウ様、何があったのです?」
「少しばかり、力を使い過ぎた、なので今日は寝る、起こすな。梢もだ」
「分かりました」
アルトリウスは頷き、クロウの家を後にしようとした。
「アルトリウス、クロウ様は?」
「力を使い過ぎたから休むと行っていた」
「力を使い過ぎた?」
アインが首をかしげる。
ティリオがすかさず口を開く。
「確か、うろ覚えですが魔族の国の土地を豊かにするためにそちらに行ったと聞きます、それで何かしたのでしょう、クロウ様は」
「コズエもだ、起こすなと言われた」
「仕方ありません、レイヴンさんにお任せしましょうか全て」
「そうだな、許可は俺達が出したで納得して貰おう」
アルトリウス達は頷き合い、その場を後にした。
「ふぁああ……」
私が目を覚ますと真っ暗。
「あれぇ、いつもなら夕方に目を覚ますのに……」
それだけ力を使ったと言うことだろうか?
「クロウは大丈夫かな?」
そう思って棺桶からでると、まだちょっと疲れていた。
「コズエ、起きたか」
「うん、クロウに会いに行くから」
「それが何だな……クロウ様が目を覚まさないのだ」
「え?」
「どうやら魔力が大幅に減少しているらしく……」
「私行ってくる」
ブラッドフルーツを囓って飛び出す。
クロウの家に行き、扉を開けるとシルヴィーナが様子を見ていた。
「シルヴィーナ、クロウの様子は?」
「魔力枯渇寸前の為休眠状態です、いつ目覚めるか分かりません」
その言葉に私は頭が真っ白になった──
魔族の国にある名無しの神森の世界樹ノーワンがユグドラシルレベルに巨大化し、土地も豊かになりました。
が、梢は魔力消費の為夜まで起きず、クロウに至っては魔力枯渇寸前で休眠状態に陥ってしまいました。
クロウはどうなるのでしょうか。
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