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イザベラとの一時の別れ~秋来たりて~

夏の終わりが来て、イザベラ達はドミナス王国へと戻っていった。

イザベラの事を心配するルフェン、それに対しクロウが──





『秋ですよー』

『夏ですよー』

『もうじき秋ですよー』

『まだ夏ですよー』


 秋と夏の妖精と精霊が飛び交っている。

 と言うことは。

「コズエ様とまたお別れなのね……」

「秋にマルス様の結婚式があるのでクロウと行きますよ」

「でも、結婚式が終わったら帰ってしまうのでしょう?」

「それは、そうですね」

 イザベラちゃんは私に抱きついて、凄く寂しそう。

 まるで今生の別れのような感じだ?

「イザベラ、また一年後に会えるのだぞ?」

「でも、一年も待つのわ辛いですわ、マリア義母様」

「イザベラ、それはコズエ様も同じよ、貴方だけが寂しい訳ではないの」

「お母様……」

「そうだぞ、イザベラ。コズエ様を困らせてはいけないよ」

「お兄様……」

「イザベラ様」

 私はイザベラちゃんの手を取り、ブレスレットをつける。

「これをあげます。イザベラ様をお守りするようにと……」

「コズエ様、大好き」

 イザベラちゃんはぎゅっと抱きついてきました。

 私は彼女を抱きかかえて馬車のところまで歩きました。

 そして下ろすと頭を撫でた。

「また次の夏に会いに来てくださいね」

「うん、私会いに来るわ、約束するわ」

「イザベラ、また来いよ!」

「ルフェン! 勿論よ!」

 イザベラちゃんは馬車に乗り込む。

 他の皆さんも乗り込んだ。

「コズエ様、また来ますわ!」

「はい、また!」

 イザベラちゃんが手を振って去って行く。

「では、失礼します」

「また来ますー!」

「また、是非」

 マルス王子の婚約者さん達も笑顔で手を振って帰って行った。

 私はいつものように護衛に白亜を派遣する。





「静かになっちゃったなぁ……」

 ルフェン君が残念そうに言う。

「ルフェン君寂しい?」

「ちょっとな。イザベラ、貴族社会のドロドロとした中で生活するんだよな……」

「そうね、王族だから重圧もありそうだし」

「大変だよな……」

 ルフェン君もルフェン君なりにイザベラちゃんの事を考えていたみたいだ。

「安心しろ、仮に恨まれたりしても梢のアクセサリーが守ってくれるだろう」

 クロウがやって来てそう言った。

「クロウ様本当?」

「本当だ、梢の愛し子としての力知っているだろう?」

「うん! そうだよな。コズエ様の加護があれば大丈夫だよな」

 おっと一気に元気になってこっちにプレッシャー掛けてきたぞ?

「俺立派な大人になってコズエ様達を守れるようになります」

「その心意気はいいが、梢の方が本気になればどう考えても強いぞ?」

「う……」

「ルフェン君はルフェン君が守りたい誰かの為に強くなってね?」

「う、うん」

 お、顔が赤いと言うことは気になる子がいるのかな?

 私楽しみだぞー。



 そして季節は秋担った。

 実りの季節。

 秋が本番の果実や作物はうんと美味しく実りだす。


 私の加護と妖精と精霊の力で。

「今年も葡萄酒の出来は良さそうだ!」

「俺達が作ったのも美味いけど、コズエ様が作ったのは更に美味いんだよなぁ」

「おおい、お前ら、口より手を動かさんか!」

「親方だってそう思ってるだろうよ」

「それは当然だ!」

 ドワーフさん達とお弟子さん達がぎゃーすか騒いでる。

 うちの村、酒好きが多いからなぁ。


 私はのんびりホットアップルジュースでも飲んでいる。

 できたてのあったかいリンゴジュースって美味しいんだよね。

 暖めたリンゴジュースも美味しいけど。


 寒くなってくると皆毛皮のコートなんかを着てくる。

 私は今の時期なら薄手のコートで十分だけど。

 冬になると厚手か毛皮のコートが必要になる。

 吸血鬼が寒さに耐性あるっていっても、動いて汗かいたら冷えるに決まってるじゃん。

 仕方ないよね。





「コズエ様ーこれ持って行って良いですかー?」

 林檎の収穫を終えた子ども達に私は微笑む。

「ええ、持って行ける分だけ持って行って」

「わぁい!」

 林檎が沢山つまった籠がいっぱいできた。

 なので子ども達は小さな籠に林檎を詰めて家に帰っていった。

「ふぅ、後はパイにするなり、お酒にするなりしようか」

 そう言って一部を保管庫に持って行き、残りをジュース、シードルのクラフトメーカーに入れた。

 余った数個を、家に持って行き、レモンと砂糖で煮る、シナモンも入れる派があるらしいが、私はシナモンは入れない。

 購入したパイ生地を卵液で塗りそれに煮林檎をのせて、パイシートで覆いまた卵液で塗る。


 それが終わったら竈で焼く。


 魔導オーブンもあるんだけど、竈ってなんかロマンがあって使いたくなる。

 焼き上がったあら、少し冷まして切り分ける。


 結構量ができたからどうしようかなと考えていると扉が開いた。


「アルトリウスさん、アインさん、ティリオさん……あら? フレア君にミラちゃん、どうしたの?」

「愛し子様のところに行きたいといってな」

「愛し子様」

「いとしごさま」

 二人が見せてきたのはブラッドフルーツ。

 私が作ったのよりも小ぶりのだが。

「これ、僕達が作ったんです。どうかお納め下さい」

「え、いいの?」

「はい」

「じゃあ、貰うね。有り難う」

 そう言って受け取ると、ブラッドフルーツをアイテムボックスにしまった。

「そうだ、良かったらアップルパイを焼いたのだけど、食べて行く?」

「え、いいんですか?」

「たべたい!」

 ミラちゃんは正直な子どもだなぁ。

 私はパイを切り分けたのを、六人分配る。


「では、いただきます」

 そう言ってアップルパイを口にした。

 林檎とレモンの甘酸っぱさが良い具合に出てて、美味しいパイになっていた。

「おいしい、おいしい!」

「こんなに美味しいんだ……」

「うむ、美味い」

「美味いですね」

「ええ、美味しいですね」

 皆からは好評。

「あの、父様にも食べて貰いたいんですが」

「いいよ、いいよ持って行って」

 と、四角いパイ一個を籠に入れて渡した。

「良いのですか」

「いいのよ、気にしなくて」

「おにーたま、いこ?」

 パイが美味しかったのかおこぼれを欲しそうに籠を見ているミラちゃん。

 可愛いなぁ。


「有り難うございます」


 フレア君はミラちゃんの手をつなぎ、籠を持ち屋敷へ帰っていった。


「さて、クロウにも置いてくるか」

「ついて行こうか?」

「そうだね、お願い」


 と言うわけで、四人でクロウの元に。


 クロウは生の林檎を囓っていた、ドラゴンの姿で。

『おお、梢。どうした』

「林檎のパイを焼いたの。だからお裾分け」

『おおーすまんの』

 籠から出し、皿の上に盛り付ける。

「じゃあ、食べてね」

『うむ』

 既にむしゃむしゃ食ってるし。


 帰路につくと私はふぅと息を吐き出した。


「今年も秋が来たね」

「そうですね」

「そうだな」

「はい、そうですね」

 私は三人を見て笑って言った。


「今年の秋も楽しい秋にしようね」


 その言葉に三人は笑って頷いてくれた──







秋がやって来ました。

実りの秋なので作物はよりたくさん実ります。

だから梢結構大変だったりします。

そんな中でも自分の時間を作り、伴侶であるアルトリウス達の時間を大切にしようとしています。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

次回も読んでくださると嬉しいです。

イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。

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― 新着の感想 ―
もしかして、梢ちゃんが焼いたから美味しくなったのかな? 実りの秋で忙しくなるのなら、今のうちに夫婦みんなでイチャイチャしちゃってください!!笑
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