果実実る、そしてルフェン達の村の問題
ちょっと遅い時間に梢は目を覚ますとシルヴィーナに呼ばれ昨日苗だった、果実が大きくなり身をずっしりとつけているのを目撃し驚く。
どうやらそれは妖精と精霊達の仕業のようで……
そしてその二日後白亜が戻って来てイザベラが無事に家に戻れた事と、ルフェンの村のことを聞く──
「ふぁああ……」
いつもよりちょっと遅い時間に起きた。
日は沈んでいる。
外に出てブラッドフルーツ果実を口にする、うん、美味い。
「こ、コズエ様!」
「んあ? シルヴィーナさん、どしたの」
「昨日植えた苗が!」
果樹園の新しい部分へと向かう。
「……ワーオ」
ずっしりと実っていた。
「急いで取ろう」
「子ども達と取ったのですが次々と実をつけて……」
「……精霊さんと妖精さんにお願いしたからかな?」
「まだ、見えないんですか?」
「うん」
「果樹園どころか畑や水路、様々なところに妖精と精霊が集まってかなり五月蠅いですよ」
「マジか」
見えたら大変だろうなー……うん、見えなくて良かった。
でも、いずれは見えるんだろうなぁー (黄昏れる)。
私はせっせこ収穫をし、果実を頬張る。
「ん~~‼ 高級品って感じ‼ 果物が高いの分かるわ! 美味すぎる!」
「そ、そんなに美味しい葡萄なのですか?」
「食べてみて!」
「で、では……」
シルヴィーナさんも頬張る。
「ん~~‼ こんな葡萄初めてです‼」
「嬉しいねぇ、妖精さん、精霊さんありがとう」
と木に向かって言う。
「じゃあ、ミストリアさんのお宅に分けて来るね」
「あ、もう分けました」
「ドワーフさんところは?」
「食べたら即葡萄酒作りに……」
「はは……」
だろうね。
「まあ、収穫したのはアイテムボックスに入れておくからシルヴィーナさんも休んで良いよ」
「では、お言葉に甘えて……」
シルヴィーナさんは自宅へ帰っていった。
「さて、頑張るぞ」
私は収穫した物をしまいつつ、聖獣とフェンリルさんのお世話をした。
「ふぁあ……」
二日後の夕方。
外に出ると白亜が帰って来ていた。
「お帰りなさい、白亜」
『ただいま帰りました、コズエ様。イザベラ達は無事に王都の王宮へと帰れたようです』
「ずいぶん早いな。異世界の馬って早いのか?」
『いえ、途中転移陣を使ってたので』
「あーなるほど」
『それと、ルフェン達の親と接触できました』
「マジ⁈」
『はい、帰路の間にルフェン達が言って居た村を見つけそこで親達と会いました』
「よかったぁ」
『愛し子様の庇護を受け、始祖の森にいると告げると皆慌てて居ました』
「だろうね」
『琥珀達に村の場所を教え、迎えを渡すように向こうには伝えました』
「よくやった」
そこで白亜の表情が険しくなる。
『ですが、問題が。あの村は野党とモンスターの所為で村としての機能がほぼ無い状況です』
「ヤバいじゃん‼」
『ですから、迎えか、それとも移住か問いかけました、勝手に申し訳ない』
「いやいや、良いよ。それで村の規模どのくらい?」
『家が六軒建ってました』
「なら即効で作れるな」
私はまだ開墾していない場所を一瞬で開墾する。
そして六軒のログハウス基家を建てた、二階建てで、ベッド付きの。
「まぁ、残るなら残るにしても、今後ここを村として建てる分にはいっか」
『相変わらず早い決断と実行力、恐れ入ります』
『父上~連れてきたよ~移住したいけど、足腰弱った爺様婆様いるから悩んでるって~!』
『やはりか』
「流石に足腰弱ってるご老人に白亜達に乗れってのはねぇ」
『儂が行こうか?』
そんな会話をしているとクロウが入って来た。
『儂の上に乗って貰って結界を張ればいいじゃろ』
「よし、それで行くか」
「ちょ、ちょっとお待ちを!」
シルヴィーナさんが慌てて来た。
「どうしたの?」
「コズエ様、貴方様は吸・血・鬼‼ 日中そのままだと苦しいでしょう‼」
「あー……」
ブラッドフルーツ囓りながらならいけるか?
「ですのでこちらを‼」
「これは?」
真っ黒なフード付きのローブを渡される。
「完全日除けの吸血鬼なら必須のローブです‼ 是非これを‼」
「有り難う」
私は日除けのローブを羽織る、すると──
『僕達も守る──』
『守るよー』
と、闇の妖精と精霊がわちゃわちゃ。
少し周囲が暗くなった。
「よし、ブラッドフルーツアイテムボックスにぶち込んで行くぞ!」
『はい!』
『ほっほっほ』
こうして、初外出をすることになった。
エンシェントドラゴンに乗っかってたが結界のおかげで全然平気だった。
ちなみに、ルフェン君だけ一緒に来ることに。
村長の子どもだからだね。
「母さん達大丈夫かなぁ……」
「大人達が護衛してるから大丈夫らしいよ、元気だして」
と慰めながら一時間。
「村だ!」
「本当だ、うわ人の割合に比べてでけぇ!」
小さな村を想像していた。
失敗。
『よし、下りるぞ』
「うん」
「クロウ様、お願い」
村のすぐ側に着地したクロウ、白亜が先に来ていた。
「ルフェン!」
「母さん! 父さん!」
若い女性と、凜々しい男性に突撃するルフェン。
「無事で良かった!」
「コズエ様が助けてくれたんだよ!」
「あの方が?」
「だがこの匂い……」
『案ずるな、コズエ様は吸血鬼だが、神の愛し子、ブラッドフルーツか普通の食事しかせぬよ。まぁ、危害を加えてきた者はどうなるか分からんがな』
「コズエ様、私アルスと申します。この村の長です」
「どうも、コズエです、アルスさん。私は始祖の森で開拓しながら暮らしています」
始祖の森と聞いてざわめく村人達。
「風の精霊から聞きました、始祖の森に、吸血鬼だが神の愛し子が暮らし始めたと、貴方で間違いないですか?」
『間違いない、コズエ様は神の愛し子だ』
「で、村人なんですが、エンシェントドラゴンのクロウに運んで貰うことにしました。そうじゃないと皆さん大変でしょう?」
「良いのですか?」
「クロウが言い出しっぺなので」
『ほっほ、と言うわけじゃ、二十人弱位なら余裕じゃよ』
村人達が、老人達も連れてクロウの背中に乗る。
『荷物はもったかの?』
「はい」
『では行くぞ』
クロウが飛んで行く。
『父上──!』
『琥珀達も来ました、我らも戻りましょう』
「じゃあ、白亜に乗っからせて貰うね」
と白亜に乗る。
「コズエ様」
「はい?」
「何から何まで有り難うございます……」
「お礼とか良いんで早く行きましょう」
「はい!」
アルスさんと共に私は始祖の森へと向かった。
「お帰りなさい! コズエ様!」
シルヴィーナさんが出迎える。
「おお、コズエ様。よくご無事で」
「何かあった?」
「実はイブリス教の信者が森に入ろうとしました」
「うへぇ」
ミストリアさんところのお父さん殺した所の連中だよね。
うわーヤダー!
「しかし、ここはコズエ様の領域。イブリス教の信者達は迷いの森と変貌したこの森でさまよい続け、諦めて出て行きました」
「良かった」
『イブリス教の連中にはコズエ様のような存在は認められんのだろう』
悪かったですね、吸血鬼で!
ロマンがあったんだよ!
「お、クロウもやって来た」
『念の為ゆっくり飛んできたら遅くなった、すまんの』
クロウは広場におり、村人達が下りて行く。
「えー此処が皆さんが住む場所です、何かあればすぐ私の所に来て下さい」
「こ、こんないい家に住んでいいんですか?」
「ええ」
私はそう言うと、ふぅと息をついた。
日中の行動の所為か眠気が酷い。
「コズエ様、有り難う!」
「コズエさま、ありがとう!」
「ありがとう、コズエさま!」
ルフェン君達が抱きついてくる。
「いえいえ」
そう言ってから私は欠伸をする。
「ちょっと私眠るから、夕方になったら起こしてね……」
「はい」
シルヴィーナにそう言って家に戻った。
梢は、「大きくなーれ、早く実をつけてねー」と言って苗や果樹等に水等を与えているので、結果妖精と精霊が真に受けてそうなっていますが、梢は気づいておりません、まだ見えてないですから。
見えるのは闇の精霊と妖精くらいです。
そして、新たな住人達の登場、ルフェンの村の村人達です。
徐々に居住区──村が大きくなっていますね。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。