あれは最推(さいお)しの子どもですね、そう思います
いわゆる発情期になると、ミャーコは毎年、体調が悪くなっていた。避妊手術が雑だったのか、お腹が痛くなるようで、その時期になると何処かへ籠もってしまう。そして、しばらくすると家へ帰ってくるのだった。
ある日、母の実家に、一匹の黒猫が入り込んだ。つい最近のように思うが、一年くらい前になるのか。黒猫は生まれたてのようで、そしてミャーコは、その子猫を無視するかのように、いつもと変わらず過ごしていて。その光景は、とても不思議なものだった。
「今までなら、ミャーコは他の猫を追い出してたのにねぇ」と母が言う。「あれはミャーコの子どもじゃないの?」と私が言って、この考えは今も変わらない。避妊手術が不完全で、一匹の猫をミャーコが産んだのではないか。それが最も、ありえそうな話だった。
「いやいや、違うよ。だって似てないもの」と母親が反論して、その主張にも一理はあった。ミャーコは典型的な和猫の雑種で、茶色や黒が混ざって全体的には銀色にも見える毛並みだ。お腹は白い。
対する黒猫(チビ、と名付けられた)は全身、真っ黒で、お腹も少し色は薄くなるけど黒い。唯一、尻尾の先だけが白くて、これはミャーコからの遺伝だと私は信じている。
ミャーコは和猫で、対するチビは洋猫だ。『魔女の宅急便』に出てきた、ヒロインと共にいる黒猫のジジを思い起こしてほしい。ああいう黒猫のチビと和猫のミャーコが似てるはずも無くて、だから私の「ミャーコとチビは親子だよ」説は否定されやすいのだが、いやいや待ってもらいたい。まだ私には、説の根拠があるのだった。