腐女子な薬師として推しの絡みを見ていたかったのに推しがいっこうにできないままパーティを解雇されそうな件について〜案外自業自得でした〜
冬の駄作シリーズ第二弾!
理不尽追放に飽きた?読んでみろよ、飛ぶぞ。当たり前過ぎて。とっても短い!
「セスタ、お前、パーティから出ていってくれないか?」
「なにゆえ?」
あ、どうも。腐女子です。名前はセスタ・ロマンです。リーダーであるセンチの幼馴染のよしみでという形ではありますが、Aランク冒険者パーティで薬師をさせてもらってます。紅一点ではありますが、彼らに恋愛感情はなく、見守りという名の観賞をさせてもらうのが主です。
しかし、大問題があるのです。…そう、推しがいないという大問題が。
私が好きなのはヤンキー、イケオジ、クズ、筋肉、強い感じの人のツンデレなどなのですが…
リーダーのセンチは筋肉こそ多少あれどコミュニケーションが苦手すぎて、戦闘中の指示以外ほとんど話さず、私が通訳をしている状態。これでは捗らないどころかカップリングができません。
猛獣使いのルストはまだ幼い十三才の少年。あいにくショタ攻めもショタ受けも推しではないのです。
魔法使いのウェザーはかなりお年を召したおじい様。イケオジの時期はとっくに過ぎています。
盾使いのツッカーは縦も大きいですが、横がさらに大きいです。切実に鍛えて欲しい。あと自身の重さだけで攻撃に耐えようとしないでください。普通に心配ですから。
おわかりいただけましたでしょうか?推しができないのです。私の所属するパーティは。
しかし!心配はいりません!ライバルAランクパーティのリーダー、リッタさんを見てください!入れ墨に浅黒い肌にマッスル!なんというどストライク!
私はここしばらく、彼を物陰から見守っていました。
ーーーーーーーーーーーーー
「推しを見守って何が悪い!」
「…ストーカーだよ、セスタちゃん」
「実は、今度のクエストの協力を申し出たところ、つきまといを解雇しろと言われてしまったんだす…セスタがそんなことをするはずはと思ったんだすが、あまりにも相手が言うので…」
「ふぉっふぉっふぉっ。若人とは一度思ったら曲げられないものじゃからのう…」
「ごめん、セスタ。俺がランクに合ってないクエストを受けたりするからなんだ…しかも、もう取り消しはできない…ほんとは俺が出ていくべきだよな…でも、一応俺の剣の攻撃がメインだし…いや、わかってる、無能って言ってる訳じゃなくて…」
「ルスト、そんなにドン引きしないでください。傷つきますから。ツッカー、そんなに信じてくれているとは思いませんでした。ちょっと心が痛い。ウェザーもこっちについてくれるんですか。ほんとすいません。そしてセンチ。落ち着いてください。別に誰もあなたを責めてませんから」
そのあとしばらくセンチを宥めて、私は真相を話すことにした。
「腐女子ゆえ、リッタさんを観賞しているのです。たしかにやっていることはストーカーまがい。しかし、いい観賞相手が彼しかいないのです!…迷惑なのはわかってます。一旦パーティは抜けます。でも!ストーカーではなく見守りと!つきまといではなく観賞と!そう言っておいてください!」
そう叫んで、私は走ってパーティから逃げ出した。
「…警備隊に言う?このまま永久追放する?協力終わったら勧誘する?」
「ふぉっふぉっ、ちと判断が早いぞ、ルスト」
「センチ、どうするだすか?セスタがいないと喋れないってこの前…」
センチは
『ヒーラーがいないこのパーティじゃ、薬師無しだとすぐ壊れるだろう。そもそもツッカーの言う通り俺はセスタを通訳にしてたようなもんだし…』
と言うはずが、
「ヒーラ…くすしなし…こわれ…ツッカー…セスタ、通訳…」
小さい声すぎてこのように聞こえたものだから、パーティメンバーはしばらくセンチの言葉を解読する羽目になった。が、「薬師無し、壊れる、セスタ、通訳」という単語をもとに、「あー、これは再加入だな」と察した。
ただ、腐女子というだけでパーティ脱退を決行できたセスタは割と精神的に強いことをみんなが思い知ることになった。
このあとセンチたちはセスタに「漫画つき冒険者のためのマナーブック」「腐女子の心得」「ストーカー被害者、加害者のその後」といった本をプレゼントし、セスタはそれを読みました。
彼女は猛省しながらもまたBL本を読み、「何言われても腐女子はやめられねえよっ!尊いって!」と雄叫びをあげるところを何度もパーティメンバーに見られました。
BL文化はパーティ内であきらめムードに包まれながらも少しずつ流行り、いつの間にかパーティのあだ名が「同人サークル」になりましたとさ。