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殺人鬼転生  作者: 裏道昇
第二部 お嬢様と教育係
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第二部 17話 先生と生徒

「お嬢様は錬金術が使えるそうですね。今日からはそちらも教えていきましょう」

「はい」


 俺の言葉にソフィアが頷いた。

 懐に入っていたリックを出すと、俺は右手に乗せた。


「俺の使い魔でメタルスライムのリックです」

「やあ」

「へえ。メタルスライム」

 

 ソフィアが面白そうにリックを眺めている。

 いかにも触りたそうにしていたが、少し我慢してもらおう。


「俺はこのリックを錬金することで武器としています」

「?」


 不思議そうな顔をしているので、一度見せた方が良いだろう。

 バチッという音と錬金光。


「わ!」


 ソフィアが驚いた声を出した。それから目をゆっくりと開く。

 ナイフの形に変わったリックを見て、今度は大きく見開いた。


「これって……神鋼の錬金?」


 俺がやったことを理解した上で驚いている。

 勘の良さは流石というか当然というか……兄さんの生まれ変わりだった。


「ええ。本来は出来ないことですが、リックが協力してくれることで可能になります」

「……すごい。神鋼の加工は不可能という結論がでているはずなのに」

「例外的にできているだけですよ」


 ソフィアが嬉しそうにこちらを見ていた。

 不当に高い評価な気がして、どこか居心地が悪かった。



「今日はお嬢様の錬金術を見せてください。まずは地面から短剣を錬金してもらいましょうか」


 そう言うと、俺は地面に右手を付けた。

 錬金を始める。リックとは錬金の難度は比べるまでもない。

 数秒も経つと俺の右手には地中の金属から短剣を作り出していた。


「はい」

 お嬢様はこれも楽しそうに眺めていたが、すぐに真似をし始めた。


「――驚いた」


 すぐに俺は驚愕の声を漏らす。

 ソフィアの手には十分な品質の短剣が握られていた。


 俺がこのレベルの錬金ができるようになったのはいつだったか。

 懐かしい感覚を思い出す。それはあらゆる能力に秀でた兄さんの記憶。


「そう言えば、ターナー公爵様は内乱の鎮圧に行かれるようですが……お嬢様が元気そうで安心しました」

 自分の中の悪いイメージを振り払うと、俺は溜息と一緒に気になっていた話題に触れた。


「? ああ、お父様とお母さまが帰ってしまうのは悲しいわね」

「……寂しくはありませんか?」


 俺は少しだけ気を付けて質問する。

 ソフィアの感情を知りたかった。兄さんはその場の感情で動くことが多かったからだ。


「ええ、寂しいわ」

「……」


 ソフィアは両手の短剣を放り投げると俺を真っ直ぐに見上げた。

 まるで全幅の信頼を寄せるかのように、にっこりと屈託なく笑って見せる。


「でも大丈夫よ。私には先生がいるもの」


 思わず目を見開いた。

 その言葉に、俺は……。


「ははは。また家に来ますか?」

「行って良いの!?」

「事前に教えてくださいね。今度は部屋を片付けないと」


 俺が微笑むと、ソフィアが嬉しそうに俺の足にしがみついた。



「はい、どうぞ」

 次に俺は右手のリックを元に戻してソフィアに手渡した。


「?」

 ソフィアとリックが不思議そうに俺を見る。


「では、お嬢様。リックを錬金してみてください。リックは協力してくれ」

「え?」

「ああ、そういうこと。いいよ」

 

 ソフィアだけが混乱したように首を傾げる。

 しかし、すぐに状況を理解したようで「やってみる」と呟いた。


 思った以上に錬金術の技量が高いので、リックの方が練習になると思ったのだ。

 それは正解だったようで、その日の内にソフィアはゆっくりと錬金できるようになっていた。


「やったわ、先生!」


 嬉しそうに笑い掛けるその笑みを嬉しく感じた。

 同時に――その信頼が依存ではないかと、そう心配する俺がいた。


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