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殺人鬼転生  作者: 裏道昇
第四部 青鬼と英雄
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第四部 41話 開幕

 翌日。日が落ちて間もない頃。

 俺とフレアは大広間で、グレイとティアナが相手を変えながら踊っているのを眺めていた。


 ティアナは薄い赤のドレス。

 可愛らしい印象で実にティアナらしい。


 グレイはタキシード……軽く前髪を持ち上げている。意外と似合っていた。

 大したものだ。とうとう最終日まで誤魔化しやがった。


 少し離れた場所ではナタリーとアリスも護衛として控えている。

 その隣には使用人に扮したジークが立っていた。


 大広間は開会式の会場から見て真上。二階だった。

 綺麗な装飾を施され、いかにも貴族のパーティという印象を受ける。


 舞踏会は立食形式で、壁際で休みながら食事を取る。

 同時に部屋の中央付近で男女がペアを組み、一曲ずつ踊るのだ。


「…………」

 俺は大広間の一角へと視線を向けた。


 コルネリウス・サンデル。今回の標的だ。

 どうにかして隙を作りだして、討ち取る必要がある。


 今も多くの取り巻き貴族から挨拶されていた。

 本人は気怠そうにあしらっているようだ。


 問題はその後ろに控えている奴らだろう。

 コルネリウスに付き従うように『赤鬼』『白鬼』が控えていた。




 護衛の俺たちは動くわけにはいかない。

 暇に思いながら小一時間ほどが過ぎた頃、動きがあった。

 

 ……お、来たか?


 慌てた様子で大広間に従者らしき男が入って来た。

 そのまま、コルネリウスの元へと歩み寄ると耳打ちした。


 コルネリウスは驚いた顔を浮かべると、何か指示をしたようだ。

 従者の男はやはり急いだ様子で大広間を出て行った。


 サンデル領のあちこちで暴動が起こったという連絡のはずだ。

 ナタリーの読みではエイク市の鬼たちを鎮圧に向かわせる。

 最小限の兵だけがエイク市に残るだろうとのことだ。


 連合の兵は王国との国境付近で未だに牽制を続けている。

 今まさに呼び戻しているかも知れないが、到着は明日以降になるだろう。


 後は外で様子を窺っているピノの合図を待つだけだ。

 十分な兵力が離れたら動く。




「……二人とも、良く踊るなぁ」

「ははは、私には無理かな。疲れちゃうよ」


 俺が呟くと、フレアが小さく応じた。同感だった。

 グレイはダンスはすぐに覚えた。まあ、座学じゃないからな。


「来たね」


 フレアが小さく呟いた。

 見れば、窓の外にある木の枝に青い小鳥が留まっていた。


 ナタリーを見ると、小さく頷き合った。

 少しだけ待った後、ナタリーはアリスとジークを連れてコルネリウスの方へと近づいて行った。俺とフレアが後を追った。


「閣下。ナタリー・クレフと申します。

『王立学院』より護衛を任されました冒険者でございます」


 ナタリーが恭しく礼をして、挨拶の口上を述べる。

 コルネリウスの方は余裕がないようで上の空で返事をしていた。

 あちこちで起こった暴動を気にしているのだろう。


 しかし、後ろの赤鬼と白鬼はそうはいかない。

 赤鬼はナタリーを見て、楽しそうに笑った。

 白鬼は訝し気に片眉を吊り上げる。


「私としても連合とは末永いお付き合いをと――」


 ナタリーがさらに続けようとした時、ぱん! と大きな音が鳴った。

 見れば、窓の外に大きな花火が上がった。


「綺麗……」

 生徒たちが声を漏らす。


「?」


 窓の外で何度も上がる花火を見て、コルネリウスは首を傾げた。


「花火の予定などなかったはずだが……」

 当然だ。花火を打ち上げているのはピノだ。


 その瞬間、小さな影が飛び出した。

 フレアから予備の長剣を受け取って、今まで俺たちの後ろに隠れていたジークがコルネリウスへと踏み込んだ。


「!」


 まず反応したのは白鬼。

 長剣を抜いて、ジークの前に出ようとする。

 

「させないよ」


 次に動いたのはフレア。

 白鬼の行く手を阻むように斬り込んだ。


「なるほどな!」


 続いて赤鬼。楽しそうに笑う。

 六角棒を握って、前に出ようとする。


「だから、させないんだって!」


 俺がそこに割り込む。

 障壁を二重に張って、赤鬼の道を塞いだ。


 ジークがコルネリウスへと斬りかかる。

 しかし、コルネリウスは腰の長剣を抜いてジークの一撃を弾いた。


「……ジークハルト?」


 呆然とした声で呟いた。

 恐怖すら感じている様子で、一歩後ろに下がった。


 そこで一際大きな悲鳴が上がった。

 聞き慣れた声。ティアナのものだ。


「襲撃だ! 逃げろ!」

 こちらはグレイだ。叫んだくせに逃げはしない。


 すぐに生徒たちは大広間から退散していく。

 グレイにはティアナの護衛を依頼してある。


 入れ替わるように、赤と白の鬼が入って来た。

 赤鬼部隊、白鬼部隊と呼ばれていた奴らだろう。


 ナタリーを背に、アリスが一歩前に出た。

 二人が抑え込む計画だ。コルネリウスを討ち取るまでで良い。


「こう来たか!」

「……そちらから仕掛けてくるのですね」


 赤鬼と白鬼の声。

 それぞれ、俺とフレアを前に臨戦態勢だった。


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