第四部 35話 待機
「グレイ!」
俺はグレイの後を追って、大峡谷に飛び込もうとする。
すでにグレイの姿はない。大峡谷を落ちていった。
「駄目ですよっ!
この強風じゃあ兄さんでも戻って来れません!」
俺の腰にしがみつくように隣のティアナが止めようとする。
いつの間にかフレアも俺の右手を握っている。
「……くそっ」
「キース、落ち着きなよ」
「……悪い」
フレアに小さく頭を下げる。
フィンに事情を話すと、俺たちは物置のような小屋に案内された。
フィンも酷く慌てた様子だった。
あまり例がないのだろう。
無理もない。あの強風である。
わざと落ちることすら難しいくらいだ。
風向きが変わったと言ったら、信じられないと言っていた。
今までそんなことは一度もなかったと。
「あれ?」
その時、ティアナが後ろの窓を振り返った。
見れば、コンコン、と青い小鳥が窓を突いていた。
「ピノ?」
急いで窓を開けてやる。
ピノは「ぴ」と鳴くと、大峡谷を示した。
「……グレイのことで伝えたいことがあるのか?」
「ぴ」
ピノが頷く。確かにピノであれば様子も分かるだろう。
俺は一度深呼吸してから、訊いた。
「グレイは……無事か?」
緊張しながらどうにか口にする。
「ぴ」
ピノは頷いた。
「……あのバカ」
「良かったぁ」
「心臓に悪いね……」
俺たちは口々に安堵を漏らす。
とりあえず、無事であれば何とかなる。
「自力で戻ってこれそうか?」
「ぴ」
これも頷いた。
だとすれば、俺たちはここで待つだけだ。
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