第四部 25話 五歩十歩
修正(※内容に関するものだけ記載します)
・2024/4/7 エピソードタイトルを変更。
翌日の朝。
明日からは『王立学院』と『統一学舎』の交流会が始まる。
今日一日は各自休むように言われていた。
もちろん、単独行動だけは厳禁だ。
「……あのさ」
「?」
朝食の後、グレイが神妙に口を開いた。
その場の全員が首を傾げる。
「俺、話についていけるか?」
「……何だ。本気で気にしてたのか? 大丈夫だろ」
「そうよ。五日間だけ取り繕うくらいなら何とでもなるわ」
どうやら交流会を上手くこなせるかどうかを気にしているようだ。
グレイの言葉に俺が安心しろと笑いかけた。ナタリーも心配するなと続く。
「だけど……」
「そんなに心配なら小テストでもやる?」
「あ、それは良いかもね」
食い下がろうとするグレイ。
そこにアリスと加奈が提案した。
「あはは! それは良いねっ!
全員でテストを受けようか! あたしが問題を作ってあげる」
ナタリーが手を叩いて喜んでいた。
え? 俺も受けるの?
「……嘘でしょ?」
ナタリーが呆然と呟いた。
ナタリーはテストの結果を何度も何度も確認している。
「ま、流石にね」
まず、一位はアリス。
流石は元学院主席だけはある。満点だった。
「学院代表ですからねっ」
次はティアナ。
三年生を差し置いて選ばれるくらいだ。順当だろう。
「まぁ、これくらいであれば」
その次はジーク。
連合の名家『サンデル家』の次期当主だ。教育は受けているということか。
「…………」
「…………」
その次は俺とグレイ。
完全に同点。ただしジークの遥か下である。
「? 良く分からなかったけど……」
最後はフレア。
こいつは剣だけ振って来たらしい。
「はっはっは! フレアが最下位か!」
「残念だったな! いやー、腐っても王立学院を卒業してるからな!」
俺とグレイが調子に乗って叫ぶ。
何しろ自分たちよりもテストの点が悪い人などいなかったのだ。
「? まあ、私は全然わからなかったけど……。
というより、知らないことばかり聞かれた感じ」
フレアが首を傾げる。
あまり気にしていない風である。
「ばっかじゃないの!?」
ナタリーが叫んだ。
「これじゃあ、交流会に参加なんて無理よ!」
「……あちゃあ、これはまずいね」
「あはは、こんな点数は初めて見た」
ナタリーが愕然と続ける。
さらにテスト結果をアリスと加奈が覗き込んで苦笑した。
「でも、難しかったし……」
「そうそう」
グレイが口ごもる。
俺が小さく援護した。
「そんなわけないでしょう!?
自信を付けてあげようと思ってバカクソ簡単にしたわよ!?」
ナタリーが頭を抱えた。
アリスとティアナが小さく笑っていたのはそういうことだろう。
「……学院のレベルはこんなに低いのですか?」
ジークがテスト結果を見て、心配そうな表情を浮かべる。
「そんなことない! こいつらが例外なだけよっ!」
ナタリーが俺とグレイを指さした。
「いや、そんな……」
「黙れっ! どうしてフレアとそんなに変わらないのよ!?」
俺たちが口を挟もうとした瞬間、ナタリーがさらに叫ぶ。
こんなにも取り乱したナタリーも珍しい。
……よほど予想外だったのか。
……そんなに酷いかなぁ。
「ほら、キース。こんなところを間違えるから……」
「グレイこそ、何を言ってるんだよ? ここは簡単だろ?」
グレイと俺が互いの間違いを指摘し始める。
……点数は全くの同点である。
「やかましい! どちらも同じレベルよ!
よく学院を卒業……いや、そもそも入学できたわね!?」
「うーん、この学力だと、千回に一回の奇跡としか思えないかも。
卒業は不正を疑うレベルだねぇ……」
ナタリーがさらに声を荒げてアリスは首を傾げる。
学院の卒業生だからと、最低限の学力はあると踏んでいたらしい。
「……昔から運は良くて」
「運で合格しちゃダメなの!」
グレイが苦笑すると、ナタリーは改めて頭を抱える。
「……今日一日で詰め込むわよ」
「ま、それしかないかぁ」
「あはは、入るかな?」
ナタリーとアリスと加奈が笑う。
そして、グレイの肩をがしっと掴んだ。
さらに――グレイが俺の肩を掴む。
「待て……俺は関係ないだろ!?」
「逃がすかよ……!」
そうして、俺たちはナタリーアリスのしごきを受けたのだった。
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