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殺人鬼転生  作者: 裏道昇
第四部 青鬼と英雄
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第四部 11話 真逆

 数日後、俺はフレアと向き合っていた。

 時計塔公園の広場で模擬剣を構えている。


「なぁ、本当にやるのか?」

「もちろん。連合の実力が知れる機会じゃない」


 気乗りしない俺の声に、ナタリーが遠くから答えた。

 隣にはアリスとジークもいる。高みの見物という感じだった。


 ……まあ、分かるけどさ。

 

 あの後、ジークは陛下との面会を果たした。

 今は王国側の返事待ちということになる。


 しかし、ナタリーが言うには乗るしかないらしい。

 そこでナタリーは俺たちで手合わせするように言い出したのだ。


 ――協力することになるんだから、早めに連携を鍛えた方が良いよ。

 ――どうせ暇だし。面白そうだし。勉強にもなるし。

 ――やっておいて損はないよ、あたしは。


 ……俺は?


「じゃあ、やりますか?」

「なあ、魔法はアリだよな!?」


 往生際悪く叫んだ俺に、フレアは軽く笑って木剣を正面に構えた。

 対する俺は魔法はアリということにして、両手の木剣を構える。


「ふ――」


 十歩ほどの距離を俺が一息で詰める。

 フレアが間合いの差を活かして浅く踏み込んだ。


 俺の小剣が届かない距離からフレアの長剣が払われる。

 切っ先が俺の胴を掠めるような軌道だ。


 敢えて足を止めずに、俺はさらに速度を上げる。

 姿勢を低く抑えて両手の小剣で、フレアの長剣を二度に分けて斬り上げる。


 しかし剣がぶつかるより先にフレアは体を引いた。

 結果、フレアの迎撃は弾いたものの、十分な隙は作れない。


 それでも、俺はさらに踏み込む。

 低く低く、フレアの懐目掛けて走る。


「……っ」


 フレアが嫌そうに俺の進行方向に長剣の切っ先を置く。

 さらに自身は軽く身を引いた。ひとまず守りに回るつもりか。


 フレアの腰の高さに置いた障壁を踏みつけて、俺は切っ先を跳んで避ける。

 しかし、フレアは予想通りというように鋭く長剣を振るう。


 今度は切っ先が俺の首を掠めるように斜め上へと斬り上げた。

 ……これに対応するのは厄介だな。


「!?」


 俺はさらに障壁をフレアの首の高さに置いて、フレアごと跳び越える。

 踏み込みで軽く体を捻ると空中で回転しながら、フレアの背中へと斬りかかる。


 フレアの驚いた顔が見える。一瞬だけ視線が交差した。

 ? やけに悠長に俺を見ているような?


「……ッ!」


 息を呑んだのは俺の方だった。

 フレアは長剣を背中に回すと、俺の小剣を止めた。

 ……一緒に払おうとした、両手の小剣を同時に。


「この、剣術ばか」

 思わず悪態が漏れた。


 見とれるくらいに綺麗な剣筋。嫌になるほど的確な受け攻めの判断。

 振り返る時間がなければ、相手の動きを目で追って背中で応じる胆力。


 単純に動作一つ一つが優れているのだ。

 こちらの奇襲が単純な技量のみで正面から防がれていた。

 

 俺の小剣を大きく弾くと、フレアは振り向きざまに長剣を払った。

 咄嗟に障壁を盾としていくつも張る。フレアの一撃を防ぐ。

 

 しかし、フレアはすぐに剣を引く。

 次の瞬間には障壁の隙間を狙って、長剣を突き込んだ。

 

 ……避けられない。小剣の返しが間に合わない。

 諦めて、俺は右手の魔法陣に魔力を流した。

 

「……曲芸じゃないんだからッ」

 フレアが苛立った様子で呟く。


 俺は魔弾で長剣を弾いていた。

 それでも攻めに回るほどの余裕はない。大きく後ろへ跳んだ。


 フレアは追撃しようとして――


「……王国からの返答になります」

 ブラウン団長の声が聞こえてきた。


 ――その足を止めた。


 俺とフレアは顔を見合わせる。

 俺たちが集中している間に合流していたということか。


 今はジークに手紙を渡している。

 どうやらここまでらしい。


 お互いに先ほどの悪態を思い出したのだろう。

 気まずそうに顔を背けた。


 戦い方は真逆だが――共闘することになったらしい。


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