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殺人鬼転生  作者: 裏道昇
第四部 青鬼と英雄
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第四部 8話 たぬき

 翌日の昼過ぎ。

 俺たちは王都の南に広がる穀倉地帯へと足を延ばしていた。

 俺とナタリーアリス、さらにフレアとジークも一緒だ。

 

 辺り一面に草原が続いている。

 その一角に魔物が集まっているのが見えた。上空にも鳥型の魔物が見える。

 

 ブラウン団長に会いたいと言うフレアにアリスはあっさりと頷いた。

 しかし、今は王都にいないので待ってほしいと続けたのだ。


 フレアはしゅんとしていたが、俺たちが組合員だと知ると、追加で別のお願いをした。


「ナタリーたちが仕事している姿を見せて」


 どうやら俺たちが依頼を達成する姿を見たいらしい。

 フレア自身の仕事について訊けば、休みとのことだ。


 俺たちは適当な魔物討伐の依頼を受けた。久しぶりのことだった。

 ……ナタリーアリスは昼まで寝てたがな。


「キース! 上空の群れをお願い! アリスと加奈は大型に魔法を!」

「……了解」

「分かった!」


 ナタリーの指示で俺は障壁を踏んで鳥型の魔物へと飛び掛かる。

 右の小剣を払って翼を斬り捨てる。同時に左のナイフを何度も突いた。


 いくつもの魔物が落ちていく。

 あらかた斬り終えると、アリスの魔法が放たれる。


 いくつもの氷柱が魔物に突き刺さる。

 さらにナタリーの声が続く。


「キース! 追い打ち!」


 俺は頷くと、障壁を蹴って地面へと向かう。

 魔弾と一緒に上空から襲撃した。


 獅子型の魔物へと上空から小剣を突き立てる。

 着地の勢いは完全に殺さず、障壁を蹴って横に跳ぶ。


 混乱する魔物の中を魔弾と一緒に跳ねる。

 小剣とナイフで急所を切り裂いて回った。


「……ふう」


 数分と経たずに魔物の群れを倒しきる。

 終わったぞ、とナタリーを振り返る。


「おい、ナタリー!?」

 思わず声を張り上げた。


 ナタリーとアリスから少し離れた場所にフレアとジークがいる。

 そのすぐ後ろに魔物の姿が見えた。


 あれは『王熊』か!? 間に合うか……?

 俺が障壁を蹴って二人の方へと急ぐ。


 しかし、それよりも早く『王熊』はその爪を振り下ろした。

 フレアが振り返る。心なしか楽しそうだ。


 腰の長剣に手を掛ける。さらにフレアは軽く腰を落とした。

『王熊』の巨大な爪が触れるより先に一閃した。


「……まったく性格が悪いね」

 次の瞬間には『王熊』の右腕が宙を飛んでいた。

 

 だん、という音が聞こえそうな踏み込み。

 一息で『王熊』の左脇を走り抜けた。


「……な」

 その一瞬でどれだけのことをやったのか。


 きっと全てを把握できてはいないだろう。

 左手首を落とした。心臓を突いた。首を裂いた。左足首の健を切った。


 フレアとすれ違った『王熊』の左半身が血を吹いた。

 しかしすでにフレアはいない。


 フレアは振り返ると、長剣を振って血を払う。

 大きな音を立てながら『王熊』が倒れたのを見届けた。


「大丈夫か!?」

「はい、ありがとうございます」


 俺は念のため二人に傷がないか確認する……余計な心配かもだけどさ。

 ジークが律儀にお礼を言った。


「あはは、ごめんね! 大丈夫だった? 見逃しちゃった」

「…………」


 次いで、ナタリーが走り寄って謝罪する。

 だがしばらくの間、フレアはナタリーを見つめていた。


「ナタリー、性格が悪いって言われない?」

「……え? 初めて言われたよ」

 ナタリーが嘘を吐いた。大嘘である。


 言いながら、フレアは近くの草むらを見つめている。

 やがて、その視線の先からピノが顔を出した。


 ……そういうことか。

 フレアの腕前を見るためにわざと『王熊』を見逃したな。

 いざとなればピノが助けに入れるように待機させたまま。


「? 何が? あ、ピノ! あたしから離れたら駄目でしょ?」

「……ぴ」


 ナタリーが惚けて見せる。

 対するピノは不満げに鳴いた。


 フレアが「たぬき」と小さく呟いて笑っていた。


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