幕間3 1話 英雄
大局はナタリーの言った通りになった。
帝国は降伏。新国は王都へ招く。俺たちはその護衛だ。
大量の捕虜は、条件付きで本国に帰していくらしい。
反抗されては問題だが『エリーナ・コルト』が予想以上に協力的なので問題ない気がした。
ナタリーたちを襲ったのは赤鬼。
しかし、少し戦ったら逃げて行ったらしい。
時間稼ぎが狙いだったのは間違いない。
結局、想定外だったのは『ソフィア・ターナー』が死んだことだけ。
……いや、あいつが女の子を庇ったことだけだ。
そして、俺たちは気持ちの整理も付かないまま、王都まで戻って来た。
凱旋ということで二番街に回り込んで、派手に大通りを進むらしい。
そのまま王城へ向かい、新国を招くのだとか。
二番街の門が開く。
途端に歓声が溢れ返る。
「……すごいな」
「ま、帝国を追い返したわけっすからね」
俺の言葉に隣のミアが答える。
勝ったとは言え、味方にも多くの犠牲が出ている。
なんとも複雑な心境だった。
「騎士団、万歳!」
「魔術師団、万歳!」
勝利を祝うつもりなのだろう、万歳と叫ぶ声が聞こえてくる。
騎士団や魔術師団を称える声は良いが、妙なものも混じっている。
「新国、万歳!」
詳しい事情を知らずに叫んでいるとは言え、美味しいところを持っていかれた感覚はなくならない。
「幸せの青い小鳥、万歳!」
嫌な言葉を聞いた気がする。
思わずナタリーアリスを見れば、同じように目を泳がせている。
「キース・クロス、万歳!」
嘘だろ、勘弁してくれよ。
恐ろしい言葉に、思わず逃げ出したくなった。
……俺は一人で英雄になった。
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