第三部 72話 ツケ
一夜明けて翌日。
俺たちはパーティメンバーにミアを加えて朝食を取っていた。
要するにここまで逃げてきたメンバーである。
「おそらく今日中に帝国の援軍が合流するっすね」
「真っ向からぶつかって勝ち目はあるの?」
ミアの言葉にソフィアが訊いた。
一度だけ考える素振りを見せて、ミアは答えた。
「正直に言えば、五分っすね。
王国は突出したメンバーがいる。一方で一兵卒の強さでは帝国に分がある」
「……古くから続く軍事国家ということか」
「そうっす。だからこそ帝国は攻めてきた。
軍全体の質では勝っているという自信があるから。
加えて、ここまで前線を押し上げれば王国側は下がれない。
ここで迎え撃つ以外の選択肢は有り得ない」
なるほど。
帝国の上層部も考えなしではないか。
「……何言ってるのよ。それは別に今でなくても良い。
城塞都市周辺を支配下に置いてから隙を見て進軍するべきよ」
ナタリーが元気なく言った。
? 昨日まではあんなにも元気だったのに、どうしたんだろう?
見れば、アリスもどこか元気がない。
いや、そもそもこの時間に起きていることもおかしい気がする。
……いやいや、起きていることは正しいのだが。
俺とソフィアとミアの三人で顔を見合わせた。
「……どうしたっすか? 二人とも。
珍しく元気ないみたいっすけど?」
代表してミアが訊いた。
いつも騒がしい二人が大人しいのだ。
誰だって気になるだろう。
「……どうして」
「どうして?」
ナタリーが一度顔を上げて、すぐに俯いた。
何か大きな心配でもあるのだろうか。
「どうして怒られないの!?
いつもなら組合長から呼び出しがあって説教を食らってるはずよ!」
「…………」
ナタリーの叫びに俺たち三人は言葉が出ない。
まあ、確かにこの関所に来てからの様子は目に余る。
それでも見逃されているとすれば……おそらく『これから』返してもらうつもりなのだろう。
そこでアリスがだんっと力強く立ち上がった。
「そうよ! こんなに好き勝手やってるのに!」
「…………」
アリスが示す先には堕落を極めたテントがあった。
こんなに好き勝手やるなよ。
「……よお」
心配して損したと感じていた俺たちの後ろから声が聞こえた。
振り返るとその組合長が立っていた。口元を楽し気に歪めていた。
がたん、という音。
視線を戻すとナタリーとアリスが逃げ出そうとしていた。
そしてミアに首根っこを掴まれていた。
「いや、気にすることはないさ――ちゃんと働いてくれればな?
ところでこれから会議なんだ。ちょっと顔貸してくれよ」
「…………」
組合長の言葉にナタリーアリスが青ざめている。
いやいやと首を振っている。気持ちは分かるが。
――やっぱりお前ら、薄々感づいていたな?
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