第三部 71話 同窓会
その日の夜。
俺とソフィアは王国軍の野営地から少し離れた。
しばらく歩くと、二人分の人影が見えた。
「改めて、久しぶりだな」
「まあ、王都を出る前に会ったがな」
俺の言葉にグレイが応じた。
その手には酒瓶が握られている。
「……大変だったと聞いた」
「本当にね」
セシルの言葉にはソフィアが応じていた。
流石にある程度の事情は知っているらしい。
俺たちは情報交換も兼ねて集まることにしたのだった。
遠くからは王国軍の喧噪が届いてくる。
これ程度であれば、離れても問題ないだろう。
「それよりも二人が来ていることの方が驚きだわ」
「全くだ。人手不足なのか?」
ソフィアの言葉に俺が続ける。
俺たちが言うのも何だが、二人とも入団して日が浅い。
王都の防衛に回されてもおかしくないだろう。
「俺はクロード副隊長に連れて来られた……。
ほら、覚えてるか? 前に話した先輩だよ」
言われてみれば、愚痴を聞いた気がする。
一番隊の副隊長のことだとは思わなかったけどな。
「……私はお姉ちゃんに連れて来られた」
「ああ、治癒術持ちだもんな」
セシルの言葉に俺が納得して大きく頷いた。
しかし、セシルは首を左右に振った。
「目を離すと勉強しないからって……」
「…………」
皆、色々あるんだなぁ。
いや、俺たちも人のことは言えないんだが。
それからはしばらく近況の報告と軽い情報交換を行った。
「帝国軍の援軍が合流しようとしているらしい。
数日中に進軍を始めるだろうってさ」
グレイの言葉に俺とソフィアが頷いた。
ナタリーの読みと同じだったからだ。
「……少人数で帝国の司令部を襲撃するみたい。
場所は城塞都市へ向かう途中にある森だって」
セシルが言った。
なるほど、帝国はあそこで野営しているのか……。
あらかた情報交換が終わると、話題は軽い雑談へと移っていった。
「ああ、そうだ。お前たち、王都での人気がすごいぞ?」
「なんじゃそりゃ」
「……?」
グレイが悪戯っぽく笑う。
俺とソフィアは首を傾げたが、セシルはグレイに頷いていた。
「ははは、自覚なしか!」
「?」
「お前たちのパーティは王都を出る前に『緑竜』を倒しただろ?」
「ええ、そうね」
「で、今度は同じパーティが城塞都市からの撤退を成功させた」
「それは……い、いやでも……」
笑うグレイに俺は何とか反論を試みる。
だが、それより先に致命的な言葉を口にした。
「特にその内の二人は学院を卒業したばかりだからな?」
「…………」
考えもしなかった。
確かに『緑竜の討伐』と『城塞都市からの撤退戦』を成功させたことになるのか?
「ま、王都に戻ったら覚悟しとけ!」
「……マジか」
「はぁ……」
グレイが俺の背中をバシバシと叩いた。
柄じゃない俺とソフィアは憂鬱そうに項垂れたのだった。
久しぶりに落ち着いた夜だった。
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