表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺人鬼転生  作者: 裏道昇
第一部 兄弟
2/314

第一部 2話 自称『神様で良いや』

 目を開くと、目の前に扉があった。

 何故か俺は真っ白い空間に立っていて、扉に手をかけた状態で止まっていた。


「その扉は開かないよ。君はそこから出てきたんだ」

 突然の声に振り返る。まるで通りすがりのような調子だった。


 声の主は大きな机で事務仕事をこなしていた。

 見た目は中肉中背の中年サラリーマン。


 白髪交じりの髪で四角い眼鏡を掛けている。

 全体的に四角い印象だった。


「あなたは?」

「うーん、表現が難しいのだけれど……魂の管理をしている魂、かな」


「神様、とか?」

「厳密には違うかもだけど、神様で良いや。別に上下はないんだけどね」


 会話をしながらも自称『神様で良いや』は事務作業を続けていた。

 視線だけは時折ちらっと俺へ向ける。


 なんだか胡散臭いんだな、と思いながらも俺はひとまず黙ることにした。


「さて、君は死んだ。この自覚はあるかい?」

「はい」


 頸動脈を切られて腹をめった刺しにされた挙句、喉を一突き。

 ダメ押しに家の崩落に巻き込まれた記憶がちゃんとある。


 ……あんまりでは?


「本来なら君の記憶はここで消えて、生まれ変わる」

「――本来なら」


「ああ、今回は特例でね。一つ頼みがあるんだ。まずは説明をさせてほしい」

 軽く頷くと、相手も頷いて話し始めた。


「あちこちに扉があるだろう。それらはすべて別の世界だ。

 君が出てきた扉は君のいた世界で、隣の扉はまた別の世界ということだね」

「?」


「重要なのはね。全ての世界には決まった数の物質と魂があること。

 そして、始まりから終わりまでどう動くのか、全て予定があるということだ」

「???」


「はは。要するに扉の中で何が起こるのかは全て決まっているんだ」

「運命というやつですか?」


「ああ、その認識で良いよ。

 扉ごとに運命が決まっていると分かってくれれば良い」


 頷いた。

 それだけであれば何となく理解できる。


「特に、世界にとっての『分岐点』は絶対に変えられない」

「はあ」


 変えられないのであれば、問題はないのでは? と思ったが、聞いておく。


「当然、運命を変えたいと考える奴が現れる。それは問題ない。よくある話だ。

 しかし、ある人間が魂と運命の関係性を見つけ出してしまった。

 ……そして、こう考えた」


 自称『神様で良いや』は苦々しい顔を浮かべながら溜息を吐いて、ゆっくりとした口調で続けた。


「別の世界――扉の外から魂を呼び出せたら運命が変わるかもしれない、と。

 忌々しいことに、それは正しい」


「あの、俺と何か関係が――?」

「ああ、長くなって悪いね。ここからが本題だ」


「そいつはつい先ほど、一つの魂を自分の世界へと呼び出すことに成功した」

 そこで初めて自称『神様で良いや』は手を止めて、俺を真っ直ぐに見た。


「――最も人殺しに適した魂を。それが君のお兄さんだ」

「!」


「おそらくは『分岐点』に関わる人が死ねばそれで良いのだろう。

 少しでも多く殺してくれってところか」


 別の世界で、兄さんがまた人を殺す?

 なんだそれは。


「そこでお願いだ。君もその世界へ行って、お兄さんを止めてほしい」

「…………」


 兄さんの殺人を止めるというのであれば、望むところだ。

 言ってやりたいこともある。このまま死ぬよりはずっと良い。ただ――。


「兄さんを止めることは構わない。でも一つ条件がある」

「何だ?」


「兄さんに殺された加奈も連れていってほしい。

 あいつの人生が、あれで終わるのは駄目だ」


 自称『神様で良いや』はしばらく俺を眺めていたが、小さく頷いた。


「条件を飲もう。ただし、できる限り『分岐点』とは関わらないように」

「約束する」


「契約成立だな。その扉から出て行ってくれ。別世界に生まれ変わる」


 一つの扉を指で示す。


「お兄さんの魂は見れば分かるようにしておくよ」


 俺は扉へと歩き、手をかける。

 ドアノブをゆっくりと回すと、意識が薄れていく気がした。


「なあ、どうして俺なんだ?」

 ふと、疑問が口から漏れた。


 俺よりも優秀な人間も賢い人間も強い人間も山ほどいるのに。

 何の実績もなく死んだ俺なのに。


 期待していなかったが、返事はあった。


 ――何を言っているんだ?

 ――ついさっき、あの殺人鬼を止めただろう。

 ――これ以上の実績があるものか。


読んで頂きありがとうございます!

ブックマーク、評価など頂けると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

以下のサイトにURL登録しています。

小説家になろう 勝手にランキング
cont_access.php?citi_cont_id=669863801&size=200

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ