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殺人鬼転生  作者: 裏道昇
第一部 兄弟
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第一部 19話 依頼と報酬

「ああ、良い運動だったな?」


 ポキポキと首を鳴らしながらブラウン団長は穏やかに微笑んだ。


「は、はい」


 俺はと言えば、あまりの実力差にまともに返事が出来なかった。


「君はまだ訓練を続けるのか?」


「いえ。今日はここまでにします。

 これ以上動けないとも言います」


「なら丁度よかった。

 村まで一緒に歩こうか」


「? はい」


 ブラウン団長と一緒に広場から街道に出て、村へと歩き始める。


「ここは自然が多くて良いな。

 村の人も善良な人柄が多い」


 軽い調子でブラウン団長が口を開く。


「そう思います」


 横顔を盗み見る。

 自然体と呼ぶに相応しい姿だと思った。


 村の空き家を借りて暮らしているブラウン団長だが、魔術師団長とは思えないほど腰が低いので、肩書を知った瞬間に村の誰もが頭を下げるのだ。


 しかし変わらず腰が低いので、いつの間にか砕けた調子に戻ってしまう。

 そういう人だった。


「ふむ。

 ところで、先程の稽古はどうだった?」


 ブラウン団長がじっと、俺を見た。


「とても勉強になりました。

 勝てないのは分かっていても、ブラウン団長との差が分かったことは大きな価値がありました」


「君は何か目標があるのだね?」


「……なんで」


 思わず目を見張る。


「ふふ、目標がなければ魔術師団長との実力差を測ろうとは思わないさ。

 大丈夫、詮索をしたいのではない。何とか恩を返そうと思っていてね?」


「恩なんてありませんよ?

 迷子を拾っただけです」


 森を出て、しばらく歩くと村が見えてくる。


「それだけではない。

 この村で過ごすことは、思った以上にアリスのためになっている」


「ははは、なるほど。

 ナタリーと仲良しですからね」


 ブラウン団長も笑みを返す。

 二人の暴れっぷりを思い出したのかも知れない。


「ふむ。

 今日の稽古が君の目標への助けになったのであれば」


 一瞬だけ、真剣な視線を俺に向けた。


「どうだろう?

 明日から私が本格的に稽古をつけるというのは?」


「そ、それは貰いすぎです」


 その価値が分からないほど、恥知らずではない。


「ははは、正直だな。分かっているよ。

 代わりに魔物討伐を手伝ってほしいのだ」


「魔物討伐の報酬として、稽古をつけてもらえる……?」


「そうだ。期間は一か月。私たちが王都に帰るまでだ。

 ここだけの話、魔物が多いのだ」


 そう言って、悪戯っぽく笑った。

 ――嘘吐き。魔物なんて滅多に見ませんよ。


「ありがとう、ございます」


 感謝のあまり、思わず俯いてしまった。


 村の入口までやってくる。

 森とは言え、村のすぐ近くだ。

 長話をする程の時間は掛からない。


「気にするな。アリスも良く懐いているしな」


「お兄ちゃーん」


 まさにタイミング良く、ナタリーとアリスがこちらへと走ってくる。

 俺とブラウン団長が、それぞれ妹と娘を待つ。


「お帰りなさい!」


 そのまま飛び付くように俺へ抱き着いた――二人とも。二人とも俺へである。

 ブラウン団長が微笑みを引きつらせる。


「は、ははは」


 俺は乾いた笑みを浮かべることしか出来ない。


「懐きすぎたか?」


 穏やかに微笑んではいるが、王国最高戦力の一角は目が笑っていなかった。


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