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プロローグ
――――今宵、2年前に自殺した彼女が現れた。
2年前の、あの綺麗なままの姿で。
暑い真夏の日だった。
その日は文化祭。
正確に言えば、後夜祭だった。
その夜、1人の生徒が命を絶った。
彼女の名前は“羽衣石 ひかり”。
腰まで伸ばされた長い髪、深い色の瞳。
真っ白い肌に華奢な肩。
物腰柔らかく、儚い、という言葉の似合う女性だ。
花火の上がる空、大きな音。
彼女は屋上から飛び降りたのだ。
髪をなびかせて落ちてきた彼女は、不覚にも“美しい”と思ってしまった。