尾瀬家中編2
「凛…」
今一番この部屋に来ると思っていなかった相手だ。
俺は恋につけられた服のシワを戻しながら聞く。
「凛、悪かった。お前達家族の輪に知らない、しかも同級生の俺が入っても迷惑だったよな…」
だからもう――恋や舞姉、尾瀬さんには悪いけど出ていこう――そう思い、その旨を伝えようと口を開くより先に凛が口を開いた。
「あ、あの…ほんとに…ごめん!!貴方のこと何も考えてなかった」
凛はそう言い、涙を流していた。
急な態度の変わり様に戸惑った。
「ありがとう。気持ちは嬉しいけど、やっぱり俺、出ていくよ」
これは決めたことだ。今回のようなことはこれから何回も何回もあるだろう。その度に恋や舞姉、尾瀬さんを巻き込むのは嫌だ。もちろん凛も例外ではない。しかし凛は予想していなかった言葉を返してきた。
「私、貴方と一緒に…く、暮らしたいの…」
え?今なんてと聞く前に凛は俺に飛びつくように抱きかかってきた。
急なボディタッチで俺の心がドギマギしている中で凛は続ける。
「私、本当はずっと前から貴方のことが……だったから。なのに恋や舞と仲良くしてるところ見ちゃったから!!あんなこと言っちゃった…」
言葉の半分以上は聞き取れなかったが、涙声の中、俺に謝罪の念を伝えてきたことは分かる。
とりあえず凛を体から離し、優しく言う。
「ありがとう。これからは俺もここにいていいんだよな?」
「えぇ…もちろんよ」
俺もちょっと泣きそうになった。
存在してもいいんだ。ここに。
「俺、これからもっと凛のことを知るよ。それから凛や恋、舞姉のことも一人一人向き合っていくよ」
これが俺に出来るせめてもの感謝だと思うから。
そう言い残すと俺は泣きそうに、半ば泣いている凛にリビングに、戻るように促した。
「さぁご飯だろ?俺まだ食べてないんだ」
そう言うと、凛はその言葉を待っていたように頷き、
「ええ。そう。そうよ!一緒に食べましょ」
と、涙を拭いながら俺の手を引きリビングに向かった。
リビングに戻ると何か欠けている。恋は静かに座っている。
そうだ。舞姉がいない。
まだ部屋にいるのだろうか。
「俺、ちょっと舞姉呼んでくるよ!」
そう言い残し、俺は再び廊下に引き返す。
思い返すと、この日から俺の運命は変わっていったのだと思う。
凛ちゃんフォーカス回でしたー!
なにぶん学生なもんで平日クオリティになってしまいましたが、凛の態度が、今後の伏線になってきます!!
次回は後編で舞姉フォーカス回プラス団らん回になるかと!!
是非ブックマークしてお待ちを!!