ちょっといいですか…?!前編
「汀〜今日空いてる〜?」
鼓膜が敗れそうな声で俺、汀響介に呼びかけてきたのは俺の唯一の親友でもある鳥羽旭陽だった。
「空いてない。バイト。」
短く返すと、この色男は何故か喜んだような顔をした。よく分からなかったので、
「空いてたら何に誘うつもりだったんだ?」
と聞くと、旭陽はにっこり笑い、言葉を返した。
「合コン、かな」
忘れてた。こいつは自他ともに認める学年一のイケメンだった。しかもおまけにスポーツ万能の頭脳明晰と、神様が調整をミスったとしか思えないスペックをしている。が、俺は知っている。こいつの性格がとてつもなくどす黒いことに。それを裏付けるエピソードとして、彼女とキスをしていい感じになって、本番までいきそうになった所でソシャゲのイベントの為に帰ったというものがある。ま、こいつは顔と頭と運動神経だけはいいので、いくらでも女子は寄ってくるんだが。
「お前あんま遊び過ぎんなよ〜」
「分かってるって」
「また誘ってくれよ」
「合コンに?」
「断じて違う」
そんな軽口を叩いていると、チャイムが鳴り、休み時間が終わりを告げた。
「じゃ、また」
そう言い残し、旭陽は自分の教室に帰っていく。
やべ、次移動じゃん。気づいた俺はすぐに荷物をまとめ、教室を出る。地学準備室は二年生校舎にある。やっぱ慣れないな。違う学年の校舎を歩くのは。そんなことを思いながら歩いていると、急に目の前がぼやけた。あれ、変だなと感じるより先に体が倒れた。感覚が麻痺していき、涙が止まらない。
そして気づくと意識はとんでいた。
次ヒロイン出てきます!ハーレム系ではありますが、結ばれるのは1人です!