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オレオレ詐欺について

作者: 岡池 銀

「オレオレ詐欺」についてマジメに考えました。※

※なお、今作には品の無さ、読むだけ無駄ば要素が含まれます。無理な方はブラウザバック推奨です。

「もしもし、母さん? オレだけど」

「この声は太郎かい? まったく、ここ数年家には帰らないし、電話の一本もよこさないものだから、こっちから連絡しようと思ってたところだよ、全く……元気かい?」

「うん、実は事故って入院しててさ、お金が足りないんだよ。三十万、振り込んでくれない?」


 ……「便りがないのは良い便り」ということわざがある。平穏無事だからこそ連絡することがないのだ、ということを意味する言葉であり、逆に言えば、連絡がない中で来た急な報せは、相手に何かしらの不幸が訪れたことの報である、と解釈できることわざだ。

 最初の会話はそれの例である……わけではない事は、タイトルを見てから本文を読んでいる貴方には明白だろう。

 そう、今回の内容は「オレオレ詐欺」について。

 主に高齢者を狙って行われる特殊詐欺の一種であり、被詐欺者の子供を騙って金銭を騙し取る犯罪である。最初の文は、イメージしやすい詐欺中の会話を簡潔にまとめたものである。

 この詐欺は、

 ・直接対面しないことにより声でしか相手を判断できないこと

 ・電話は限られた周波数しか出せないため似通った声になりやすいこと

 ・詐欺対象が聴覚の衰えた高齢者であること

 ・被詐欺者に名前を言わせることによって、電話の相手が自分の子供だと信じ込ませやすいこと

 ・犯人の身元を特定する方法が電話番号のみのため足が付きにくいであろうこと


 等々、詐欺の理屈を挙げてみたが、少し考えただけでもこれだけあり、しかも、そのどれもが理にかなっている。褒めるつもりは一切無いが、非常に合理的で少しだけ感心してしまう。最初にオレオレ詐欺を思い付いた人には、その閃きは人を陥れるよりも助けるために使って欲しかったところだが、今更言ったところで無意味だ。

 さて、オレオレ詐欺の概要について色々述べてきたが、ここからが本題だ。

 ・オレオレ詐欺が何故起こったか

 ・どうすれば根絶できるのか

 ・被害に遭わないにはどうすればよいか

 以上について考察していく……のは、警察や犯罪研究の専門家がするので、私は今回行わない。

 ならば何をするのか。

 今回、私がするのは「オレオレ詐欺」という名称について。具体的には「オレオレ」の部分について考察をしようと思う。


 「オレオレ詐欺」の「オレ」とは言わずもがな、日本における、主に男性が使用する一人称の一種を指し、漢字では「俺」と表記する。

 まず始めに考えるのは、何故、数ある一人称の中から「オレ」が使われているかだ。

 推測にはなってしまうが、

 ・女声よりも男声の方が聞き分けが難しいこと

 ・被詐欺者の子供を装うためある程度若い年齢となること

 ・先の二つのことにより若い男性(砕けた話し方をする際に「オレ」を使いやすい)の方が詐欺の成功率が高いこと

 等の理由により、男性の詐欺者の割合が高いことが要因として考えられる。

 他にも、(卵が先か鶏が先かのような話ではあるが)テレビの再現VTRで詐欺役が男性であることや、単純に語感が良く覚えやすいこと、オレオレ詐欺と聞いてコレ、というイメージがしやすいこともあるかもしれない。


 ……話は変わる。そもそも、オレオレ詐欺をするのは何のためだろうか。

 人を騙して楽しむため?

 それだけなら逮捕されるリスクを負ってまで詐欺をする必要はない。「誰それが校舎裏で待ってる、告白するつもりらしい」だの、「上司がお前のことを探してる、顔を真っ赤にして怒っていた」等と言っておけば、人間関係の軋轢と引き換えにはなるが人を騙すことはできるだろう。オススメはしないが前科が付くよりはるかにマシだ。

 では何故詐欺なのか。

 回りくどく書いたが答えは簡単。金を得るためだ。

 一部例外もあるだろうが、詐欺をする理由の大部分が金だ。金を得たいが為に人を騙す。金欲しさに就職よりも詐欺を選ぶ。選ばざるを得なかったなどの詐欺者側の事情はここでは考えないものとする。


 ……ようやく本題に入るための前置きが終わった。


 ここからは私が本当に語りたかったことであり、仮定の話、「もしも」の話である。ほとんどの文章の前置詞として、「これは仮定の話ではあるが」という定型句や、その変形が入ることと、それを省略することを許してほしい。


 詐欺者の目的が金であるなら、(当然の話ではあるが)被詐欺者は裕福である方が得られる金額も多くなる。ならば、裕福であればある方が詐欺対象としては良い。

 そこで私は考えた。誰が詐欺対象なら一番金を得られるか。これを読んでいる貴方も色々思い付いただろうが、私が選んだのは王様だった。

 なにしろ王様といえば一国の主。国を背負っているのである。国にある金は全て王様の物と考えて間違いないだろう。つまり一番金持ち。一番裕福。捕まれば死刑もありうるが、得られるものは誰より大きい。


 さて、王様にオレオレ詐欺をするとなれば、王族を、ここでは王子にしようか。王子を騙らねばならない。そうなると王子の一人称が「オレ」では少々品がないように思える。親の七光りでヤンチャしてることも考えられるが今回は無視だ。つまり、詐欺の名称が「オレオレ詐欺」では不適当なのだ。何か別の言い換えにより、品位を高める必要がある。

 そこで真っ先に思いついたのは「わし」だった。だが、「わし」では、「王様」と組み合わさってようやく「髭をたくわえた、玉座に座る立派な王」のイメージが湧く。「わし」単体では「耄碌(もうろく)した老爺(ろうや)」でも成り立ってしまうのでこれは違う。それにどちらも高齢のイメージだ。王子の一人称としてはイメージしにくい。

 次に思いついたのは「(われ)」だった。

 「我」であればそれほど年齢を問わないため、王子の一人称としては適当だろう。品位も十分だ。しかし、そうなると詐欺の名称が「ワレワレ詐欺」になってしまう。「ワレワレ」では詐欺者が複数人いるみたいだ。

 詐欺グループを一斉検挙、なんてニュースで聞くくらいだし、詐欺者が一人であることは稀で、基本は何人かでグループを作っているのだと思われる。けれど、電話で相手をするのは一対一。電話の向こうで皆が皆、口々に「ワレワレ」なんて言ってたら騙せるものも騙せない。「我」も違う。

 次に思いついたのが「()」や「()」であった。王族の一人称としてイメージもバッチリ、品位も高い。個人的に「()」なんかは古き日本が思い起こされて大変好みだ。しかし、これにも詐欺の名称が立ちはだかる。

 「ヨヨ詐欺」、「アア詐欺」。

 パッと聞いて何のことかわからない。「アア詐欺」なんて詐欺を憂いて感動詞を付けただけにすら聞こえる。

 「オレオレ詐欺」の「オレオレ」に「オレ(だよ)オレ(だって)」と隠れていたとして、「()」と「()」に当てはめて詐欺名称にしたとしても「ヨダヨダ詐欺」、「アダアダ詐欺」。

 もう何もわからない。

 「ヨダヨダ詐欺」なんてアタルでも使いそうではないか。いや、詐欺だから使えないだろうけど。

 何より口にした時に絶妙に言いにくい。舌の訓練には良さそうだが、街頭インタビューを受けた一般人に「(ヨダヨダ詐欺についてどう思いますか?)ヨダヨダ詐欺ですか、ヨダヨダ詐欺って最近よく聞きますよね」などと、何度も何度も「ヨダヨダ、ヨダヨダ」答えさせるのも少々酷ではないか。


 ……色々寄り道はあったが、私は考えを巡らせる中で、ある一つの答えに辿り着いた。

 (王族としての)品位を感じられ、この一人称なら王族であると特定でき、詐欺の名称にした時に語感が良いもの。以上が∧(and)で成り立つ一つの答え。


 すなわち、「(ちん)」である。


 このページから去ろうとする手を止めて少し聞いてほしい。

 まずはここまでの三千文字ほどを読んでいただきありがとうございます。でも行ってしまう前にもう少しだけ話を聞いてください。

 ……ここから去ろうとした貴方は先の展開が読めてしまったのだろうし、その予想は恐らく正しい。

 笑点の司会ばりの「くっだらない」を吐き捨てて、私の座布団を取り、そのまま行ってしまうのだろう? でも残念だが私の下に座布団はない。あ、待って畳を剥がさないで。棘が刺さるし、自重と硬い床で膝が痛いの。

 それと、その見下すような目をやめてください泣いてしまいます。そのつもりはない? 私が一段低いからそうなっているだけ? ごもっともです。

 ではなくて、私、今回結構頑張って書いたんです。その甲斐あって満足のいく出来になったと自負しています。それを読んでほしいだけなんです。

 折り返しは既に過ぎました。あと少しだけ、お付き合いいただけませんか?

 ……

 …………

 ………………読んでくれる? ありがとう!



 では、一度仕切り直して……。


 すなわち、「(チン)」である。

 「朕朕詐欺」、これほど王族相手のオレオレ詐欺の代用に相応しいものもないだろう。

 品位は高く、王族相手であることがわかり、その上で語感も良い。語感に関してはオレオレ詐欺の時よりも良くなってるまである。

 そもそも同音異義の別の言葉と勘違いされるだろうとか、街頭インタビューでそれはもっと酷だとか、「ワレ」だの「ヨダ」だの言ってる奴が突っ込んできそうだが、私は考古学者ではないため過去からの声は聞こえない。聞こえないものを気にしてもしょうがないので次に行こう。

 さて、この「朕朕詐欺」普及してしまった日本ではどういう会話がされるか考えてみよう。

 ん? 少なくとも日本の王様は「朕」なんて使っていない? というか王様に詐欺仕掛ける馬鹿はいない? 

 大丈夫、私には無敵の定型句があるため、ここに書いてある全てのガバが許される。

 もし仮にだ、「朕朕詐欺」が普及すれば、例えば、N◯Kのニュースキャスターなんかが流暢にこう言うのだ。

「昨日の昼頃、朕朕詐欺の詐欺グループのリーダー他五人が逮捕されました」

「現金三億円以上を騙し取ったとして朕朕詐欺グループの全員に有罪が言い渡され懲役◯年が……」

 クスリともせずに、大真面目に原稿を読み上げる。それが全国放送される。多分その日のうちにトレンド入りして切り抜き動画が至る所で貼られ、数多のMAD動画がランキングを賑わせる。なんともワクワクするではないか。

 他にもある。

 ニュースで取り上げられれば次に昼の情報番組なんかが話題にする。昼の情報番組ならニュースキャスターだけでは済まない。

 今放送しているドラマや映画の俳優、お笑い芸人、モデル、アイドル。実にさまざまな人が出演し、「朕朕詐欺」について話し合うのだ。

 堅物で知られる大御所も、純粋さを売りにしているアイドルも口々に言うのだ。「朕朕詐欺」、「朕朕詐欺」と。

 その言い方だってさまざまだ。言い淀む、開き直って大声、何事もないかのように流す等々、考えるだけで楽しくなってくる。

 大の大人が、仕事のためとはいえ「朕朕」なんて言わなくてはならない。全国放送されることがわかっているのにも関わらずだ。きっと気恥ずかしさと悔しさでカメラから視線を逸らしながら言うのだろう。一回見たくない? 私は見たい。

 他にも自身の語彙力を最大限活用して一切言わないようにする様が見られたら、きっと、いじらしくて頬が緩んでしまう。


 ……閑話休題、これ以上暴走する前にまとめに入ろうか。

 ・金欲しさに詐欺をする時は王様を相手にするのが一番リターンが大きい

 ・その際の詐欺の名称は「朕朕詐欺」が適している

 ・仮定に仮定を重ねてガバが広がる


 以上だ。

 ここまで読んでくれた諸賢には感謝してもしきれない。本当にありがとうございました。

 これを読んで私に文句の一つでも言いたい方もおられるだろう。というわけで、この投稿のコメント欄はログインなしで記入できるようにしておく。批判、非難、中傷……はやめてほしいがそれも仕方がないだろう。全てを受け止め、戒めとして残しておくことにする。

 ただ一つだけ注意点がある。なろうでは投稿作品に一〜五の評価をつけることができるが、それをしてしまうと評価一でもポイントが入ってしまう。今作が糞だと思ったなら評価をしない方が低評価となるので活用していただきたい。

 長くなったがこれで終わりだ。ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました。


お疲れ様でした。

今作、別名をつけるとすれば「オレオレ詐欺について詐欺」になると思います。

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