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第84話 蛇の抜け殻


「マグロっす。助けてもらってあざっした」


 蟲族の男の子が軽く頭を下げる。


 するとジョンが


「ばっきゃろー! 言葉使いをちゃんとしやがれ!!」


 マグロの頭をぶっ叩くと


「いって~なあ、分かったよ」


 マグロが頭をさすりながら姿勢を正し


「ども、マグロです。えっと、密猟者から俺を助けていただき、ありがとうございました」


 深々と頭を下げた。


 そんな、マグロに


「密猟者達にやられた傷の具合はどう? 問題ない?」


 マグロが勢いよく頭を上げると


「はい! 問題ないッス! 人族にボッコボコにされてた時は『あっ、これヤベーかも』って思ったんすけど、目が覚めたら傷が奇麗になくなってたんでビックリしたッス!」


「そっか、それは良かった」


 エリスを見るとホッとしたような表情をしていたので、マグロに


「君が眠ってる間に彼女が傷を治したんだよ」


「はい、そこら辺のことはジョンの兄貴から聞いたッス! エリス様! あざっした!!」


 エリスに向かって勢いよく頭を下げるマグロに、エリスがちょっぴり顔を引きつらせながら


「い、いえ、どうしたしまして」


 すると、ジョンが顔をしかめてマグロの頭を小突いた。


「いてっ! なんで叩くんだよ!」


「おめえはもっと丁寧な言葉使いを覚えやがれ」


「は? 俺の手本はジョンの兄貴だぞ?」


 すると、ジョンが頭をポリポリと掻きながら


「すまねえ、エリス様。どうもこいつは言葉使いがまだ下手でして……」


「いえ、気になさらなくとも、私は大丈夫ですから……」


 などと話していると、大人しく話しを聞いていたターニャが


「ケビン! あたしがいない間に密猟者をやっつけてたのか?」


「ああ、ターニャ達と別れた日に密猟者を見つけてな。そん時に捕まってたマグロを助けたんだ」


「ふ~ん、そうだったんだ~」


 すると、ターニャがマグロに近づき


「あたしもケビンに助けてもらったんだよ!」


「えっ! そうなんすか!?」


「うん、縄で縛られてナイフで腕をグリグリほじくられて物凄く痛かったんだけど、ケビンと師匠が助けに来てくれたんだ!」


 カケさんがピクッと眉を上げ、リッカは眉間に皺を寄せターニャを見つめる。


 そして、ジョンとエリスが難しい顔をしてる横で、マグロが顔を引きつらせながら


「うわっ、マジっすか! 俺はボコボコにされたら寝ちゃってたし、起きたら村にいたんで、あれ? 悪い夢でも見てたのか? って一瞬思ったりもしたんですが……、ナイフでグリグリはキツイっすねえ……」


 すると、ターニャがニヤニヤしながら


「ふっふっふ。どうやらあたしの方が捕まってた時は壮絶だったみたいだね。あたしはターニャ! 密猟者に捕まった者同士仲良くしようね!」


「俺はマグロっす。ターニャさんは俺よりもヒドイことをされたみたいなんで、敬意を表して姐さんと呼ばせてもらうっす!」


「うん、いいよ!」


 ターニャが俺を見てニヤニヤすると


「姐さんだって……。むふふふふ……」


 おいおいおい……、仲良くなるのは構わんが、捕らわれていた時の状況で競い合わなくたって良いだろうに……


 などと思っていると、ターニャが


「おいマグロ!」


「はい姐さん?」


「なんでマグロは密猟者に捕まっちゃったの?」


「蛇の抜け殻を探してたんっスけど、全然見つからなくって村から離れて探してるうちに捕まっちまいました」


「そっか~、それは運が悪かったな!」


 ターニャが偉そうにマグロの肩をポンポンと叩いて慰めているのを見ながら


「なあ、ジョン。なんでマグロは蛇の抜け殻なんて探してたんだ?」


「ああ、昔っから俺ら蟲族は、体調を崩したり大病を患った時の滋養強壮に蛇の抜け殻を使っててな、マグロは出産で確実に体力が落ちる女王蟲の為に抜け殻を集めようとしてたらしいんだわ」


「なるほど、それで抜け殻を探しているうちにドンドン村から離れてしまって、最終的には密猟者に見つかって捕まってしまったと?」


「ああ、まあそんな感じだ。んで、今は魔物退治も落ち着いたんで村人総出で蛇の抜け殻を探しまくってる状況なんだが、最近まで魔物が群がってたせいで蛇が逃げちまったのか、抜け殻が全然見つからねえんだ」


 腕を組んで口をへの字にしたジョンに


「ちなみに、女王蟲の容態ってどんな感じなんだ?」


「命に別状はないが、今回は出産期間が長かったし産まれた子達も多かったんで、かなり弱っててな、まだひとりでは起き上がれない状態だ」


 なるほど、ひとりで起き上がれないってのは、かなり衰弱してるんだろうが、命にかかわらないって事ならとりあえずは安心だな。


 にしても、体力回復に蛇の抜け殻かあ……


 今まで蛇の抜け殻なんて数えるほどしか目にした事がないもんなあ……


 ん~、蛇の抜け殻かあ……


 などと思っていると、ターニャが


「よっし! マグロ! 今からみんなで蛇の抜け殻を探しに行くぞ!」


「えっ!? 良いんすか!」


「うん! いこいこ!」


「あざっす!! あっ! でも俺、村から外に出ちゃダメなんす……」


 ターニャが首を傾げて


「なんで?」


 マグロが頭をポリポリとかきながら


「いや、俺のせいで村の場所がバレて最悪みんなに迷惑をかけるかもしれなかったんで、ジョンの兄貴に反省しろって言われてるんっスよ」


「むむむむむ~」


 ターニャが腕を組んで


「そっかあ、マグロは村から出られないのかあ」


 と言って、難しい顔をすると


「む~ん……」


 しばらく唸ると、何か閃いたのかパッと目を見開き


「なら、あたしがケビンとエリスと一緒に探してくるよ!」


「えっ!? 私も?」


 エリスが驚き声を上げると、ターニャが


「えっ? エリスは一緒に抜け殻探しに行きたくないの? 楽しそうじゃん! 行こうよ!」


 するとエリスが下半身の蜘蛛の脚をモジモジさせながら


「いや、別に……、私は行きたくないなんて……、言ってないけど……」


 あれ? ターニャに誘われて嬉しかったのか? エリスがちょっぴり照れてるみたいだな。


 などと思っていると、ターニャが


「よし! ケビンも抜け殻探しに出発するぞ!!」


 今にも部屋から飛び出しそうなターニャの腕を掴んで


「まてまて」


 引き留めると


「え? ダメなの?」


「いや、ちょっと待て」


 右手の中指にはめてる【収納】の指輪から、半透明で薄くて細長い紙のような物体を取り出し


「なあ、ジョン。これって使えないか?」


 すると、ジョンが目を見開き


「なっ! スゲー上等な抜け殻じゃねえか! それは何処で拾ったんだ?」


「あーーー! それ! あたしがあげたやつ!!」


 ターニャが叫ぶと、ジョンが


「えっ? これってターニャのなのか?」


「うん、あたしの古い皮だよ」


 ジョンがどういう事って感じで俺を見るので


「こいつはダノハ地方で修行してた時にターニャが脱皮した時にもらったんだが、どうだ? これって女王蟲の回復に使えそうか?」


「使えるぞ! これならそこら辺の蛇の抜け殻よりも全然使えるぞ!!」


「そっか、分かった」


 俺とジョンの話しを聞いて首を傾げているターニャに


「なあ、ターニャ。女王蟲が弱ってて、ターニャの抜け殻を使うと元気になるらしいだ」


「へ~、そうなんだあ」


「だからこのターニャの抜け殻をジョンに譲りたいんだが、これ渡しても良いか?」


「え? あたしの古い皮が役に立つの?」


 するとジョンが


「ああ、頼むこの通りだ、その抜け殻を譲ってくれ」


 ターニャに向かって頭を下げた。


「全然いいよ! なんならもっとあるから、あげよっか?」


 ターニャが空間魔法のポケットから今まで保管していた抜け殻を取り出すと


「はい、どうぞ」


 両手で抱えきれないほどの抜け殻をジョンに手渡した


「おお!! すまねえ! これだけあれば十分だ!!」


 ジョンが目に涙をためながら


「ありがとなターニャ! お前は村の救世主だ!!」


「にっしっし、どうしたしまして!」


 するとターニャがニヤニヤしながら俺を見て


「救世主だって……。むふふふふ……」


 おいおいおい……、ターニャをあまり調子に乗らせないでくれ……


 などと思っていると、ジョンが


「すまねえが、俺はこれを持って女王蟲のとこに行って来る。マグロは村の外で抜け殻を探し回ってる連中に『もう大丈夫だから戻って来い』って俺が言ってたって触れ回ってくれ」


「えっ!? 兄貴? 俺、村から出ても良いんすか?」


「ああ、現時点で謹慎は終了だ。村の案内も兼ねてターニャ達と一緒に行ってこい!」


「やった!! 姐さん! 今から村を案内するっすよ!」


「うん、よろしくね! じゃっ、ケビンもエリスも一緒に行こ!」


「ん~、俺はここで待ってるからエリスと一緒に行ってきてくれ」


 すると、エリスが驚きながら


「えっ? ケビンさんは行かないんですか?」


「えー! ケビンも行こうよ!」


 不貞腐れるターニャに


「今後のことをリッカと話しときたいからな」


 リッカがウンウンと頷き了承しているのを見て、ターニャが


「そっかあ、なら仕方ないか……。じゃあ、ケビンは師匠と留守番だね!」


「ああ、リッカと待ってるから、後で村を案内してくれな」


「うん! わかった!」


 嬉しそうに返事をするターニャ。


 その隣で大人しくしているエリスに


「エリスはターニャが暴走しない様に見守るのと、他種族との交流もかねて行ってきてくれ」


「はい、わかりました」


 すると、ジョンが


「すまねえが、俺はこれでお暇させてもらうぞ」


 と言って部屋を出て行くと、ターニャが


「よっし! マグロ! あたしたちも出発するぞ!」


「はい! わかりやした!」


 ターニャとマグロが部屋を出る。


 すると、エリスが嬉しそうに


「では、いってきます」


 と頭を下げたので


「ああ、すまんがターニャをよろしくな」


「はい、わかりました」


 エリスが笑顔で返事をすると部屋から出て行った。


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