第81話 ゴリラとヘビ娘と妖精と
オークの首根っこを掴んだゴリラが、ラミアの女の子に向かって思いっきりオークをぶん投げると
「うりゃ~!!」
ラミアの女の子が掛け声とともに、飛んで来たオークを思いっきりぶん殴った。
すると、女の子の倍以上もあるオークが、ハイゴブリン達を巻き込みながら勢いよく吹っ飛んだ。
「ターニャちゃ~ん、カッコイイ!!」
ラミアの女の子の近くでふわふわと浮いている妖精が叫ぶと、ワンピースを着たゴリラが、襲い掛かってくるハイゴブリンを拳で殴って吹っ飛ばしながら
「今のは良かったわよ! その感覚を忘れないで」
「はい! 分かりました!!」
ラミアの女の子が元気よく答えると、次々と襲い掛かってくるハイゴブリンをゴリラと同じように拳で殴ってぶっ倒す。
ん~、さっきヤマさんが『女王蟲の出産が終わったんで、これからティターニア達をつかまえて村に戻るぞ!』と言っていたので、リッカ達は転移先で大人しく待ってるんかと思っていたら……
まさか魔物と戦ってる最中だったとはな……
てな具合に驚いていると、エリスがターニャの戦いっぷりを眺めながら
「殴って魔物をあんなに遠くに吹っ飛ばすなんて、あの女の子……、なかなかやりますね……」
「えっ? あれって魔法じゃないの?」
エリスが目を細めると
「私が見る限り……、あの子は魔力を使っていませんが?」
えっ? アレってヤマさんみたいに魔法を使った派手な演出じゃないのか? などと思っていると
「うりゃ~!!」
ターニャに殴られたハイゴブリンが、周りを巻き込みながら吹っ飛んで行く。
すると、ヤマさんが
「へ~、前よりも闘気を上手く使えるようになってるじゃねえか」
腕を組み、感心した様子でターニャの戦いを眺めていたので
「えっ? ターニャって、闘気を使って戦ってるんですか?」
「ああ、拳に闘気を纏わせながら戦ってるぞ」
「なっ! いつの間に!!」
思わず声を出して驚いていると、ヤマさんが首を傾げながら
「ん? こないだ来た時、リッカが闘気を使った実戦稽古もやり始めたって、話してたぞ?」
おいおいおい……
短期間で強くなった俺の姿を見せて、ターニャを驚かせようと思っていたのに……
俺の方がビックリさせられちまったじゃないか……
などと思っていると、ターニャの近くでふわふわと浮いているティターニアが、ヤマさんに気づいて手を振ってきた。
すると、エリスが
「あっ! 危ない!!」
ターニャの背後から迫ってきたオークが剣を振り上げターニャに斬り掛かろうとしていた。
それに気づいたティターニアが
「そうはさせないわよ~」
オークに向かって手を振り払うと、オークの剣がターニャに触れる前に勢いよく弾かれた。
すると、オークに気づいたターニャが振り返り
「こんにゃろめ~!」
ターニャの拳がオークの腹に深くめり込み、オークが勢いよく吹っ飛んだ。
「大師匠!! ありがとうございます!」
「ごめんね~、ちょっとよそ見しちゃってたよ~」
申し訳なさそうにするティターニアに、ターニャが
「いえ、大丈夫です!」
と言うと、次々と襲い掛かって来るハイゴブリンをぶん殴って吹っ飛ばしていく。
ん~、やっぱ戦いに集中してるからなのか、ティターニアは俺達に気づいたが、ターニャは全然気づいていないみたいだな。
などと思っていると、ティターニアが
「もう、よそ見なんてしないから、ターニャちゃんは攻撃に専念して、いつも通り私に守りは任せてちょうだいね~」
「はい! 分かりました!」
なるほど、ティターニアが魔法を使ってターニャを守ってあげてるのか……
ターニャが前だけを見て、次々と襲い掛かって来る魔物達をぶっ倒していると
「ケビンさん、あの子が使っているレア装備……、あれは強化系ですよね?」
「ああ、あのガントレットには【腕力増加】【体力増加】【伸縮】の宝玉が埋め込まれているよ」
エリスが俺を見て
「えっ? でも? 闘気を使った実戦稽古をされてるんですよね? てっきり、気力が増す宝玉が埋め込まれているのかと……」
意外そうな顔をして首を傾げるエリスに
「多分だけど、ターニャは雰囲気であの装備を使ってるんだと思うぞ」
「ふっ、雰囲気ですか……」
あのレア装備はリッカが持ってるヤツと似てるってんで、ターニャに渡したら喜んでたからなあ。
などと思っていると、ヤマさんが感心した様子で
「やっぱ魔物退治をしてる時が、一番生き生きしてんなあ」
リッカの戦いを眺めてたので、俺もそっちの方を見てみると
「あはははは~」
リッカがオークの足首を掴んで振り回し、襲い掛かって来る魔物達を次々と薙ぎ払っていた。
おいおいおい……
俺はオークを引き摺って運ぶのがやっとなのに、リッカの奴、オークを片手で持ってぶん回してやがる……
などと思っていると、エリスが
「あのレア装備にも強化系の宝玉が埋め込まれていますよね?」
「ああ、あのガントレットには【打撃増加】【腕力増加】【体力増加】【体力回復】【伸縮】の宝玉が埋め込まれているよ」
エリスが納得したような顔をして
「だから、オークをあんなに軽々と振り回していられるのですね」
ん~、リッカに関しては元々身体能力が高いんで、別に宝玉の効果がなくたってオークを鈍器代わりに使っちゃうんだろうなあ……
などと思っていると、リッカが掴んでたオークを放り投げ
「ふん! ふん! ふん!」
今度は襲い掛かって来る魔物達をぶん殴って倒していく。
にしても、やっぱあのガントレットを装備していると、ゴリラがやけにカッコ良く見えるな……
てな具合に、リッカの戦いっぷりを眺めているとエリスが
「オークを片手で振り回したかと思ったら、ひたすら殴って魔物を倒すあのゴリラ……、恐ろしいですね……」
「ん? ちなみに、あのゴリラがリッカだからな」
エリスが思いっきり目を見開き
「えっ! そうなんですか!!」
「ああ、色々とあって今はゴリラなんだ」
「そっ、そうなんですか……」
難しい顔をするエリスと一緒にリッカの戦いを眺めていると
「ふん! ふん! ふへっ!?」
リッカと目が合った
すると、リッカの動きがぎこちなくなって、次々と襲い掛かる魔物達に取り囲まれてしまった。
それを見て、ヤマさんとエリスが
「あん? 急にどうした?」
「どうしたのでしょうか?」
心配そうにしていると、魔物達が突然激しい炎に包まれて一瞬で消し炭となった。
「せっ、殲滅魔法!!」
エリスが驚いていると、リッカが顔を引きつらせながら軽く手を振ってきたので、手を振り返していると
「ケビンさん! 今の殲滅魔法ですよ!!」
「ああ、なんかそれなりに凄い魔法らしいな?」
「そっ、それなりって! ケビンさん! あの魔法はエルフ以外で使えるようになるには、並大抵の努力じゃなしえない魔法なんですよ!」
「へ~、そんなに凄い魔法だったんだあ」
などと話している間に、リッカが魔法でドンドン魔物をやっつけ始める。
すると、ターニャとティターニアが
「師匠! なんで倒しちゃうんですかー!!」
「リッカちゃ~ん、どうしたの~?」
「今日の稽古はこれで終わりよ」
と言って、リッカが俺達の方に手を向け
「迎えが来たから、いつも通り死骸の処理を始めるわよ」
するとターニャがこっちを見て
「ヤマさん! ケビーン!!」
と叫ぶと、ヤマさんが手を振りながら
「迎えに来たぞ~! ん? なんだ、もう終わりか? んじゃ、俺も手伝うかなっと」
ヤマさんが大地を蹴って空高く舞い上がると、魔法を使って魔物の死骸を次々と燃やし始めた。
すると、エリスが
「私たちも手伝った方が良いですよね?」
「ああ、そうだな」
などと話していると
「ケビーン!!」
ターニャが物凄い速さでこっちに滑走しながら
「久しぶりー!!」
と言って、俺の目の前でピタッと止まると
「歯を食いしばれ」
「え?」
なんで?? って思っていると、笑みを浮かべたターニャにぶん殴られて、思いっきり派手に吹っ飛ばされた。




