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第78話 魔物退治 九日目


「ジジイども!! 待たせたな! 俺様が来てやったぞ!!」


「おせーよ!」


「もっと早く来い!!」


「突っ立ってねえで、とっとと魔物をやっつけろ!」


 ドワーフ国のお爺ちゃん兵士達が、ヤマさんに向かってヤジを飛ばすと


「なっ! ジジイども! サボってねえでちゃんと戦いやがれ!!」


「はーっ! 爺とはなんじゃ!!」


「ここには爺しかおらんわ!!」


「わしらはみんな爺じゃぞー!」


「わしらは爺じゃ! がっはっは!」


 などと、開き直って騒ぎ出すお爺ちゃん兵士達に向かって、ヤマさんが


「そんなに元気があるんなら、俺らと一緒に戦いやがれ!!」


「は~あ? わしゃあ、こう見えて腰痛が酷いんじゃ!」


「わしなんか、関節の節々がいつも悲鳴をあげとるわ!」


「わしは、食べ物がのどに詰まるんで、いつもむせとるわ!」


 お爺ちゃん兵士達が、急に体調不良をアピールし始めた。


 すると、ヤマさんがため息をついて


「はあ……、ジジイは都合が悪くなるといつもそれだ……」


 肩を落としていると、お爺ちゃん達がそれを見て嬉しそうに


「分かったかヤマ!! わしらの体はボロボロなんじゃぞー!」


「横になっても、直ぐに目が覚めちまうんじゃぞー!」


「粉物は特に気をつけないと、むせまくって危うくお迎えが来そうになるんじゃぞー!」


「分かったか! じゃから、わしらをもっと(いた)われー!」


「そうじゃ! そうじゃ!」


「ヤマはわしらを労われ~!」


 楽しそうに騒ぐお爺ちゃん兵士達に向かって、ヤマさんが


「うっせえジジイ!! だったら魔物を倒しまくってる俺様達をもっと(ねぎら)いやがれ!!」


「うるせ~! ヤマはとっとと魔物を倒せ~」


「そうじゃ、そうじゃ! 突っ立ってないではよう魔物をやっつけろー!」


 てな具合に、ヤマさんとお爺ちゃん兵士達との罵り合いがまた始まってしまった。


 ん~、状況を確認すると、街を取り囲む防壁の周りに、ハイゴブリンとオークの集団が群がっていて、お爺ちゃん兵士達が防壁の上から魔法攻撃が出来るレア装備を使って、魔物が街に侵入してこないように牽制してるって感じだな……


「おい! ジジイども!! 前は俺達が来るまでジジイなりに一生懸命魔物と戦ってたじゃねえか! なんでサボってんだよ!」


「は~あ? どうせヤマが魔物を退治してくれるんじゃろ~」


「じゃから、わしらはヤマが来るまでの間、こうして魔物が街に入って来ないように踏ん張っとるんじゃねえか~」


「そんだけヤマの事を頼りにしとるってことじゃぞ~」


「そうじゃ、そうじゃ! じゃから、はよう魔物をやっつけろ~」


 ん~、今回街の防衛に当たってるお爺ちゃん達は、五日前に廃鉱山近くの街を防衛をしていたお爺ちゃん兵士っぽいなあ……


「たく、最近はどこ行ってもジジイどもがサボってやがんなあ……」


 防壁の上で騒いでいるお爺ちゃん兵士を見て、ヤマさんがボヤくとエリスが


「ですが、攻撃魔法の訓練になりますので、私としては兵士の方々には休んでもらっていた方が助かりますよ?」


「いやいや、混戦状態で魔法を仕掛けた方がもっと良い訓練になるだろ?」


「えっ! そこまで高度な訓練になると、兵士の方への誤爆が心配ですのでいつもみたいに魔法は放てませんよ?」


「いや、ジジイどもは頑丈だから、魔法を喰らったってピンピンしてると思うぞ?」


 などと、話していると防壁の方から


「エリスちゃ~ん、膝を擦り剝いちまったんじゃあ」


「エリスちゃ~ん、わしは肘をぶつけて痛いんじゃ~」


「エリスちゃ~ん、足首を捻って腫れとるんじゃ~」


 お爺ちゃん達がエリスに回復魔法を所望し始めた。


 すると、エリスが手を振りながら


「後でそちらに伺いますね~」


「すまんの~」


「やっぱ、エリスちゃんはええ娘じゃのう」


「わしの孫になってくれ~」


「魔物なんかヤマに任せて、早くこっちに来ておくれ~」


 流石に魔物退治も九日目ともなると、お爺ちゃん達も慣れたもんで、直接魔物とは戦わずに、街の防壁の上から魔物を牽制するようになって、魔物との戦いは完全に俺達に任せるようになっていた。


 そして、魔物との戦いが終われば、エリスに回復魔法をしてもらうってのが、お爺ちゃん達の日課にもなっていた。


「おい! ジジイども!! そっから降りて一緒に戦いやがれ!」


「ヤマがおるんじゃから大丈夫じゃろ?」


「わしらはここで踏ん張っとるからよろしくな~」


「なに言ってやがる!! ちったあジジイ達も戦え!! 俺らは迷宮の魔物を退治して来たばかりなんだぞ!」


「なんじゃい!! わしらは昨日の夜から踏ん張っとるわっ!! 休みたいのはこっちの方じゃい!!」


「そうじゃ、そうじゃ! 休んでないで、はよう魔物を退治せい!」


「その筋肉は何のためにあるんじゃ!」


「うっせー!! お前ら鍛冶を始めたら平気で二、三日は寝ねえだろがっ!!」


「はーあっ!! 鍛冶で徹夜は当たり前じゃっ!!」


 ドワーフ国に転移してきた当初は、ヤマさんとお爺ちゃん兵士達がケンカを始めたりしないかヒヤヒヤしていたが、流石に何度もこのやり取りを見ていれば、お互いを信頼しているからこそのやり取りなんだろうなあって思えるし、ヤマさんとお爺ちゃん達との掛け合いを見ていると、良い具合に緊張もほぐれるので意外と助かってたりもするんだよなあ……


「たく、なにが『鍛冶で徹夜は当たり前じゃ』だよ、ホント都合の良い連中だよなあ」


 頭を掻きながらヤマさんがブツブツ言っていると、エリスが笑顔で


「まあまあ、そうおっしゃらずに私達でいつも通り魔物を退治いたしましょ」


 すると、ヤマさんが口をへの字にして


「そうやってエリスがいつも甘やかすから、ジジイどもが調子に乗るんだぞ?」


 すると、エリスが少し困ったような顔をして


「ですが、今まで色々と頑張ってこられた年配の方達ですので、どうしても優しく接してしまうんですよねえ」


 と言いながら、防壁の上からこっちの様子を見ているお爺ちゃん兵士に目を向けると


「おっ! エリスちゃんがこっちを見とるぞ!!」


「エリスちゃ~ん!」


「お~い! エリスちゃ~ん!」


 お爺ちゃん達がエリスに向かって手を振り始める。


 そんなお爺ちゃん達にエリスが手を振り返していると


「おいおい、だったら俺の方があそこにいるジジイどもよりも、遥かに年上の年配者になるんだが?」


 エリスがハッとした表情をして


「たっ、確かにそうかもしれませんが、ヤマさんと一緒にいると年配者って事をどうしても忘れてしまうんですよねえ……」


 と言い、俺を見るので


「そっ、そうですよ! ヤマさんのその筋肉を見てたらドワーフのお爺ちゃん達よりも歳が上だなんて全然思えませんから!」


「あ~! やっぱそうなっちゃう!?」


 ヤマさんが嬉しそうに


「そうだよな~」


 上半身の筋肉を見せつけ、ムキッとさせると


「やっぱ俺の筋肉って凄すぎるもんなあ」


 流石に魔物退治で九日間も一緒に過ごしていれば、俺もエリスもヤマさんと冗談を交えながら会話が出来るくらい距離も縮まっているし、ヤマさんは筋肉を褒められると上機嫌になるってことも既に承知済みだ。


 ただ、エリスはあまり筋肉は好きではないらしく、ヤマさんの異様に発達した筋肉は、正直チョット気持ち悪いと言っていたな……


 などと思っていると、防壁の方から


「なんじゃ? なんじゃ? ヤマが筋肉をアピールしとるぞ?」


「そんなことしてねえで、とっとと魔物をやっつけろー!」


「うっせえジジイ!! 俺様のはち切れんばかりの筋肉に嫉妬してんじゃねー!」


「なんじゃとー! わしらだって筋肉なら負けておらんぞ!」


「わしらの鍛冶で鍛えた筋肉をなめんじゃねー!」


「そうじゃ、そうじゃー! 見てみろ、わしの力こぶ!!」


「わしの、厚い胸板じゃって負けておらんぞ!」


 お爺ちゃん達が上半身裸になって、急に筋肉自慢が始まったしまった。


 すると、エリスが


「あの……、そろそろ魔物をなんとかしませんか?」


 ヤマさんに向かってそう言うと


「ん? しょうがねえな~」


 ヤマさんが防壁に群がる魔物を見て


「んじゃ、そろそろおっぱじめるとするか……」


 頭をボリボリとかくと


「よっし、エリス! ぶっ放せ!」


「はい!」


 エリスが即座に両手を前に突き出すと、魔物達が次々と斬り刻まれていく。


「おっ! 始まったぞ!!」


「エリスちゃんのウインドカッターじゃな!!」


「相変わらず、斬れ味抜群じゃのう」


 体中を斬り刻まれたハイゴブリンが次々と倒れてゆく。


「なんか、前よりも切れ味が増しておらんか?」


「若いから成長が早いんじゃろ?」


「エリスちゃんはいつも頑張っとるからなあ」


「にしても、こうして若者の成長をまじかで見てると、なかなかどうして、胸が高鳴るもんじゃの!」


「じゃな!! エリスちゃ~ん! 頑張れ~!」


 上半身裸のお爺ちゃん達が防壁の上で騒ぎだす。


 すると、防壁に向かって強い風が吹き始め、砂や小石を空高く舞い上げたと思ったら、巨大な竜巻が出現した。


「おっ! 竜巻じゃ!!」


「トルネードじゃな!!」


「エリスちゃんは風魔法が得意じゃからのう」


 魔物退治に同行するようになって初めて目にした魔法だが、エリスはこの風属性の上級魔法トルネードをもっと上手に使いたいんだそうで、目下練習中なのだ。


 竜巻に飲み込まれたハイゴブリン達が宙に舞うと、風の刃が次々とハイゴブリン達を切り刻んでゆく。


「ん~、まだオークは飛ばせんかったかあ」


「オークは重いからのう。流石にムリじゃろう」


「じゃが、あのハイゴブリンを肉片に変えとるんじゃから、大したもんじゃ!!」


「じゃな!! 頑張れエリスちゃん!」


「その調子じゃ、エリスちゃ~ん!」


「エリス! エリス! エリス!」


 お爺ちゃん達がエリスの魔法に野太い歓声を上げていると、ヤマさんが首をポキポキと鳴らして


「んじゃ、ケビン! いつも通り適当な相手を見繕って来るから、それまでお前はここで待ってろよ!」


 と言って走り出す。


「おっ! ヤマだ!」


「動き出すのがおせーぞ!」


「エリスちゃんにばっかやらせてないで、お前が魔物をやっつけろ!」


「ヤマー! 手加減しろよ!」


「防壁は壊してくれるなよ!」


「うっせえ! ジジイどもは黙ってろ!!」


 走る勢いそのままに、オークに向かって飛び蹴りをお見舞いすると、蹴られたオークが吹っ飛んで、他の魔物を弾き飛ばしながら防壁にぶち当たった。


 すると、大地が震えるほどの物凄い衝撃音と共に、オークが防壁にめり込むと、ピキピキっと音を鳴らして無数の亀裂が防壁に走った。


「ばっきゃろー! 加減しろっていったじゃろがっ!!」


「防壁を壊すんじゃねえ!」


「もっと考えて戦え!」


「うっせえ! ジジイ! んなもん後で直せば良いだろ!!」


 次々と襲い掛かって来るオークをヤマさんがぶん殴って返り討ちにしていくが、そのうちの何体かは派手に吹っ飛び防壁にぶち当たって、新たな亀裂を作ってゆく。


「こらー! ヤマー! オークを防壁にぶつけんじゃねー!」


「防壁が崩れるじゃろ!!」


「もっと考えて戦えって!」


「うっせえ! ジジイ! これでも喰らいやがれ!」


 防壁から様子を見ているお爺ちゃん兵士の方へ、ヤマさんがオークをぶん殴って吹っ飛ばした。


「やろ~! ふざけんなっ!」


「ヤマの奴、オークをこっちに飛ばしてきやがったぞ!」


「打ち返せー!」


「叩き落とせー!」


 飛んでったオークがお爺ちゃん達によって即座に叩き落とされた。


「ふ~、あぶねえ、あぶねえ」


「ホント、あいつはろくなことしねえな!」


「まったくじゃ!」


 などと、お爺ちゃん兵士達がヤマさんに文句を言っていると、ヤマさんが足元でうずくまっていたオークを俺の方へぶん投げた。


「おっ! 英雄とオークの一騎打ちが始まるぞ!」


「頑張れ~! 英雄!」


「わしらの分まで頑張れよ~!」


 オークが刃こぼれの目立つ剣で斬り掛かってくるが、剣でいなして斬りつける。


「おっ! 英雄の攻撃が当たったぞ!」


「おお! 良い感じじゃ!」


「前よりも上手くなっとるぞ!」


「じゃな!! その調子じゃ~!」


「良いぞ~! 英雄!」


「頑張れ、英雄!!」


 ん~、毎度毎度のことながら、戦いに集中できないんで、俺のことは放っといて欲しいんだけどなあ。


 にしても、ドワーフ国に来て九日目ともなると、流石に英雄って呼ばれるのにも慣れて来たな……


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