第76話 お爺ちゃん兵士
「ほれ、エリスちゃんのために、わしがお代わりをもらってきたぞい」
「ありがとうございます。でも、たくさん頂いたので、もうお腹いっぱいです」
ん? なんか、いい匂いがするな……
「どけどけい! エリスちゃん! 街で果物を買ってきたんじゃが、食べるか?」
「いえ、もう本当にお腹がいっぱいですので、どうぞ皆さんで召し上がってください」
ん~、エリスが誰かと話してるな……
「なんじゃ? おぬしは果物でエリスちゃんの気を引こうとしとるのか?」
「ちがうわい! うちの孫娘が食後にいつも果物を食べとるんで、エリスちゃんも食べるんかと思ったんじゃい!」
エリスはお爺ちゃん達と話してるのか……
「にしても、もうとっくに朝だっつうのに、いつになったら起きるんじゃ? こいつは?」
「まだ当分起きんじゃろ? ほれ、英雄殿は昨日だいぶお疲れの様子じゃったからのう」
あれ? 俺って、夜遅くまでお爺ちゃん兵士と一緒に魔石を運んだり、魔物の装備品を回収してたよな?
「おっ!? 起きたんじゃね~か?」
「ほう? やっと英雄殿のお目覚めか?」
「どれどれ、寝起きの顔でも拝見するかの」
なんだか随分と周りが騒がしいが、ゆっくりと目を開けると
「なっ!?」
驚いたことに、髭モジャのお爺ちゃん達が俺の顔を覗き込んでいた。
「えっ!? なに?」
あれ? 明るい??
などと、状況が掴めず混乱していると、少し癖の強いウネウネとした髭を胸元まで伸ばしたお爺ちゃんが
「ぎゃっはっは! 『なっ!? えっ!? なに?』だってよ! がっはっはっは~」
俺の顔マネをして大笑いしていると、胸元まである長い髭を三つ編みにしているお爺ちゃんが
「英雄殿の反応が意外と普通だったんで、つまらんな」
腰に手を当て俺を見下ろしていた。
そして、普通に髭が伸び放題のお爺ちゃんが
「最近の若いもんは反応が薄いのう、もっと反応はデカくないと笑えんぞ?」
などと言いながら、髭を撫でていた。
このお爺ちゃん達は?
などと思っていると、エリスがお爺ちゃん達を押しのけて
「おはようございます!」
元気よく挨拶してきたので
「おっ、おはよ?」
ん? てことは今って朝なのか?
などと思っていると、エリスが少し心配そうな顔で
「昨日は急に倒れたと思ったら眠ってしまっていたので、驚きましたよ?」
「えっ? 俺、寝ちゃったの?」
「はい、それでケビンさんをこちらの方達が運んでくださったんですよ」
すると、癖強髭爺ちゃんが
「その鎧のせいで、色々と限界だったんじゃろ、えらく気持ちよさそうに眠っとったぞ」
癖の強いウネウネとした髭を撫でながらそう言うと、三つ編み髭爺ちゃんが
「英雄への道のりは辛くて険しいもんなのに、あのくらいでへばってしまうとわなあ……、そんなんじゃいつまで経っても英雄になんてなれんぞ?」
眉間の深い皺を更に深くさせてそう言うと、伸び放題髭爺ちゃんが
「じゃが、英雄になれるかもしれないその鎧には、【体力減退】【気力減退】【腕力減退】【脚力減退】【魔力減退】といった宝玉が埋め込まれとるんじゃから、昨日は結構頑張ってた方だと思うぞ?」
確かに鎧に埋め込まれた弱体化の宝玉の影響で、昨日は物凄く大変だったんだよなあ……
などと思いながら、お爺ちゃん達に
「えっと、なんか迷惑かけちゃったみたいで、すいませんでした」
軽く頭を下げると、癖強髭爺ちゃんが
「良いってことよ! 気にすんな!」
三つ編み髭爺ちゃんが
「将来、英雄になるかもしれない若者に恩を売っとけば、後々良い事がありそうじゃからのう」
伸び放題髭爺ちゃんが
「エリスちゃんが心配しとったんで、仕方なくじゃよ」
ん~、髭の伸ばし方も違ければ、返答もそれぞれ違ってて、見事に三者三様って感じだな……
などと思いながら、エリスに
「なんか心配させちゃったみたいで、ごめんな」
「いえいえ、ところで体の具合はどうですか?」
意識を体に向けてみる。
すると、昨日感じた倦怠感みたいなだるさは一切なくなっていて、直ぐにでも体を動かしたいって思えるくらい体は軽く、力も漲っていた。
「物凄く良い感じだよ」
エリスがホッとした表情を浮かべ
「昨日は凄くツラそうでしたので、改善されて良かったです」
すると、癖強髭爺ちゃんが俺の着ている鎧を見ながら
「その【生命力吸収】の宝玉のお陰じゃろうな」
ウネウネした髭を撫でながらそう言うと、三つ編み髭爺ちゃんが
「わしらが倒した魔物の生命力が、鎧で弱体化されとる英雄殿の身体能力に補填されたんじゃろうな。まあ、英雄になるための道のりは、得てして辛く険しく長いもんじゃ。これからもくじけず焦らず頑張るのじゃぞ」
目尻の皺を更に深くし笑顔でそう言うと、伸び放題髭爺ちゃんが
「うちの倉庫で眠っとる英雄になれるかもしれない鎧には、そんな高価な宝玉は埋め込まれておったらんかったが、もし埋め込まれとったら、わしも本気で英雄を目指してたかもしれんのう」
いやいや、俺は体を鍛えるためにこの鎧を着ているだけですから……
などと思っていると、癖強髭爺ちゃんが
「身体能力が上がっとるんで腹ペコじゃろ? ほれ、朝飯じゃ」
野菜と肉が沢山はいったスープを手渡してきた。
「あ、ありがとうございます」
とても良い匂いがする美味しそうなスープを受け取ると、三つ編み髭爺ちゃんが
「おいおい、それはさっきエリスちゃんにお代わりとして持って来たヤツじゃろが」
「うっせー! エリスちゃんはもうお腹がいっぱいんなんじゃ!」
言い合いをするお爺ちゃんを見て、エリスがニコニコしながら
「私はもう満腹ですし、せっかく持ってきて頂いたので、ケビンさんに召し上がってもらいましょ」
すると、癖強髭爺ちゃんが勝ち誇ったような顔をして
「ほれ、みろ~」
腰に手を当てふんぞり返った。
すると、今度は伸び放題髭爺ちゃんが
「これも一緒に食べちまいな」
大きな実が沢山ついたブドウを手渡してきた。
「ありがとうございます」
良い具合に熟した美味しそうなブドウを受け取ると、三つ編み髭爺ちゃんが
「なんじゃ? それはさっきエリスちゃんの気を引こうとして持ってきた果物ではないか」
「なっ! 気を引こうとなんてしてないわい! エリスちゃんはお腹がいっぱいじゃから、英雄の鎧を着て頑張ってたこやつにくれてやるじゃい」
言い合いをするお爺ちゃんを見て、エリスがニコニコしながら
「やはり私も何粒か頂いてもよろしいですか? それと、とても食べ頃みたいですので、皆さんも一緒に頂いてみては?」
すると、伸び放題髭爺ちゃんが俺からブドウを奪い取って
「んじゃ、みんなで食べるべ」
嬉しそうにブドウの粒を皆に配り始めた。
なんか、エリスが上手い具合にお爺ちゃん達を手懐けてるな……
などと思っていると、癖強髭爺ちゃんが、野菜と肉が沢山はいったスープを見て
「なあ、それだけじゃ全然足りねえだろ?」
ブドウを食べながらそう言うと、三つ編み髭爺ちゃんがブドウをモグモグしながら
「英雄殿の腹を満たすには、ちと量が少なすぎじゃろうな」
と言い、伸び放題髭爺ちゃんに
「炊き出しってまだやっとったか?」
「ああ、こいつを買いに行った時はまだ配給しとったぞ?」
ブドウを掲げてそう言うと、癖強髭爺ちゃんが
「んじゃ、お代わり取ってくるべえ」
「じゃな、英雄殿。食べ終わっても、しばしここで待っとれよ」
「あ、ありがとうございます」
癖強髭爺ちゃんと三つ編み髭爺ちゃんが街の方へ歩いて行くと、伸び放題髭爺ちゃんが
「これやるから、食いながら待ってろな」
ニコニコしながらブドウを俺に手渡し
「おいおい! わしを置いてくな!」
先を行くお爺ちゃん二人を、小走りで追いかけてった。
すると、エリスがお爺ちゃん達を見ながら
「私、昨日初めてドワーフの方達と沢山お話しさせてもらいましたが、皆さんとても優しくてビックリしました」
そういえば、昨日エリスはお爺ちゃん兵士のケガを治すんで、結構な数のお爺ちゃん達に囲まれてたっけな。
「皆さん言葉づかいが雑なので、始めはちょっと怒ってるのかな? とか、私が何か変な事をしてしまって、怒ってらっしゃるのかな? って、少し戸惑ったりもしたのですが、どうやら皆さん普段からそういった感じの話し口調だったみたいで、ちょっとビックリしました」
確かに、俺も昔親方と話してて、機嫌が悪いのかな? とか、あれ? なんで怒ってるんだ? って思ったりもしてたけど、実はその話し方って親方からしたらごくごく普通で、当たり前の話し方だったんだよなあ。
などと思いつつ
「俺が世話になった武器屋の主人もドワーフだったんだが、やっぱぶっきらぼうな感じの口調になる事が多かったんで、もしかしたらこの国の人達ってみんなあんな感じなのかもしれないぞ?」
「ああ、そう言われると、そうなのかもしれませんね」
エリスが妙に納得したような顔で頷く。
すると、先を行くお爺ちゃん二人を小走りで追いかけてった、伸び放題髭爺ちゃんが
「わしが一番乗りじゃい!」
と言い、お爺ちゃん二人を抜き去ると
「なにっ!!」
「なんじゃと!!」
癖強髭と三つ編み髭爺ちゃんが伸び放題髭爺ちゃんを追いかけ始めた。
「がっはっはっは! お前らなんぞに負けるわしではないわい!」
「ちょっ! ずりいぞ!」
「何も言わずに始めるとは、卑怯じゃぞ! 仕切り直せ!!」
もしかして、お爺ちゃん達は街まで競争し始めたのか……
おいおい、昨日まで魔物と丸二日間戦ってたんだよな?
「一番は譲らんぞい!」
「あったまきた! ぜって~勝つ!」
「まてまて~い! 仕切り直せと言っとるじゃろが!!」
短い手足を必死に振ってドタドタと走るお爺ちゃん達を見て
ん~、随分と元気なお爺ちゃん達だな……
などと思っていると、エリスが
「皆さん本当にお元気ですね」
「ああ、でも走って街まで行くなんて、ちょっと元気すぎやしないか……」
「ふふふ、ですね」
エリスがとても嬉しそうな顔をしたので
「なんか、楽しそうだな?」
「あっ! 分かります?」
「ああ、なんとなくそんな気がした」
すると、エリスが唇を少し尖らして
「いつも母と一緒にいたからなのか、今まで私と話す相手の方々って、なんとなくよそよそしい感じがして、ちょっと距離を感じていたんです……」
そりゃあ、ニュクスさんの素性を知ってたら馴れ馴れしい態度なんて出来ないだろうし、仮に素性を知らなくたって威圧感が半端ないから、粗相がないよう細心の注意を払って受け応えをしようとするだろうからなあ……
「でも、母から離れてこうして直接人と関わってみると、皆さん変に取り繕って話したりせずに私と接してくださるので、凄く会話が楽しいんです!」
「そっか、なら良かったな」
「はい!」
すると、エリスが野菜と肉が沢山はいったスープを見て
「あっ! 冷めないうちにどうぞ召し上がってください」
「おっ! んじゃ、いただくか」
早速野菜と肉をいっぺんに頬張る。
うん! 美味い!
野菜が美味いのか? 肉が美味いのか? あるいはスープが美味いのか? とにかく今まで食べてきたどのスープよりも断然美味かった。
エリスのお代わりになるはずだった肉野菜スープをモリモリ食べながら辺りを見回していると、明らかに昨日よりもお爺ちゃん兵士の数が少なくなっていたので
「なあ、みんなはどこに行っちゃったんだ?」
「他の街や村にも魔物が押し寄せているので、朝早くに皆さんそちらに向かわれました」
「へ~、そうなんだあ。あれ? じゃあ、さっきまでいたお爺ちゃん達は?」
「まだ魔物が相当数いるので、警戒に当たるために残った兵士さん達です」
「なるほど」
野菜と肉を頬張りながら、ヤマさんがぶん殴って作った地面のデッカイ亀裂がなくなっていたので
「あれ? 地割れがなくなってる?」
「あれは埋めときました」
「埋めた?」
「はい、あのままだと危ないので私の土魔法で埋めときました」
おいおい、大ムカデの群れを飲み込むほどの大きな亀裂を魔法で埋めただと?
ん~、やっぱエリスって凄い魔法使いなんだな……
などと思いながら、美味いスープをひと口すすって
「でも、エリスってお爺ちゃん兵士のケガを治しまくってたよな? 魔力量って大丈夫だったのか?」
「ええ、かなりの人数に回復魔法を施しましたが、擦り傷や切傷、あるいは打撲といった比較的軽いケガでしたし、幸いなことに酷いケガをされてる方がいらっしゃらなかったので、あまり魔力量を必要とせずに皆さんのケガを回復する事が出来ました」
おいおい、結構な人数のお爺ちゃん兵士がいたはずだが?
そっか、大丈夫だったのか……
なにげに、やっぱエリスって凄い魔法使いなのかもしれないな……
などと思っていると、エリスが下半身の蜘蛛をせわしなく動かしながら
「昨日は一度に沢山の方に回復魔法を使えたので、今までで一番熟練度が上がった実りの多い日となりました!」
物凄く嬉しそうに言ってきたので
「おっ、おう! そっか、頑張った事に手応えを感じられると、やっぱ嬉しいよな!」
「はい!」
元気よく返事をするエリスに
「で、実際のところ魔力量って大丈夫だったのか?」
「正直、地割れを埋める方がケガを回復するよりも大変で、途中何度か魔力が枯渇しそうになりましたが、ドワーフの皆さんが魔石を沢山持ってきてくれたので、なんとか奇麗に埋めることが出来ました」
「そっかあ、俺がぶっ倒れて寝てる間に、エリスは色々と頑張ってたのかあ。なんか、全然役に立てなくって、ごめんな」
すると、エリスが困ったような顔をして
「いえいえ、そんな、謝らないでください」
「いや、でもなあ……」
ションボリする俺にエリスが
「ほら、だってケビンさんはその鎧のせいで、身体能力が著しく低下していたのですから、仕方がないですよ」
と言って、励ましてくれるが
「でも、実際に俺は寝てただけだからなあ……」
やはりエリスに申し訳なく、肩を落としていると
「でしたら、今後の為にも食事が済んだら、ぜひとも魔石集めの方をよろしくお願いします」
と言って、更にエリスが俺を励ましてくれた。
エリス、お前はなんて良いヤツなんだ……
たぶん、ターニャだったらそんな優しい言葉なんて掛けずに『甘ったれるな!!』とか言って、容赦なくぶん殴ってきてただろうなあ……
などと思っていると、エリスが首を傾げながら
「ケビンさん、もしかしてですが……」
「ん? どうした?」
「なんとなくですが、弱気な発言が目立つのって、その鎧に埋め込まれた弱体化の宝玉のせいなのでは?」
「ん? どういうこと?」
俺が首を傾げていると
「昔母が『体力』か『気力』のどちらかが普段よりも落ちていると、やる気が起きなかったり、弱気になって目の前の物事から逃げ出そうとしがちだから、そんな時は一度冷静になって、自分の状態を分析してから物事に取り掛かりなさいって教えてくれたので、普段から私は気にしているのですが……」
と言い、俺の鎧を見ながら
「その鎧には【体力減退】と【気力減退】の宝玉が埋め込まれていましたよね?」
あっ! だからか!! どうしても後ろ向きな思考になるのはそのせいだったのか!!
などと、一人で納得していると、俺の表情を見ていたエリスが
「やはり、その宝玉が原因でしたか……」
「ああ、ありがとな。エリスに指摘されなかったら、この鎧の恐ろしさに気づけなかったよ」
「いえいえ、どういたしまして」
少し照れ臭そうにしているエリスに
「なんとなくだが、昔ドワーフの間でこの鎧が流行ったのに直ぐに廃れた原因が分かったような気がするぞ」
「えっ?」
首を傾げるエリスに
「宝玉の効果で『気力』と『体力』を物凄く減退されらてるから、直ぐに『やる気』は失せるだろうし、そもそも『やる気』の源でもある『気力』と『体力』が普段よりも物凄く少ない状態なんだから、どうしたって頑張ろうだなんて思えないわな」
「ああ、確かにそうかもしれませんね」
「だろ? だからこれからは、俺もエリスみたいに普段から自分の状態を分析しながら、常に良い状態を心掛けるように気をつけようと思う」
「はい、それはとても良い事だと思いますよ!」
「ありがとな、エリスのお陰でこれからもこの鎧と上手く付き合って行けそうだよ」
すると、エリスが少し照れ臭そうに
「いえいえ、どういたしまして」
と答えると、遠くの方から
「お~い! お代わりを持ってきたぞ~」
「これなら英雄殿の腹をしっかり満たせる量じゃぞ~」
「ついでにエリスちゃんに甘い飲み物を買ってきたぞ~い」
お爺ちゃん達が台車を引いて近づいて来ていた。
おいおい、まさか台車に食料を積んできたのか?
とてもじゃないが、俺一人で全部は食べきれないぞ……
すると、癖強髭爺ちゃんが
「お代わりを取りにいったら、仕事をサボってるのがバレちまってな」
俺の目の前で台車を止めると、三つ編み髭爺ちゃんが
「英雄殿にお代わりを渡したら、わしらは防壁の修理に行くことになったぞ」
と言って、台車からデッカイ鍋を取り出し
「とりあえず、これだけあれば十分じゃろ」
野菜と肉が沢山はいったスープ鍋を手渡してきた。
「あ、ありがとうございます」
てっきり大量の食糧を積んできたんじゃないかと思って身構えていたが、防壁を修理するための材料を積んでいたのか。
などと思っていると、伸び放題髭爺ちゃんが
「エリスちゃん、うちの孫娘がよく飲んどる飲み物なんじゃが、美味しいらしいんで良かったら飲んでみておくれ」
ニコニコしながらエリスに飲み物を手渡すと、エリスが
「ありがとうございます。えっと、皆さんはこれからお仕事なのですか?」
癖強髭爺ちゃんが
「おう! 魔物にやられた防壁の補修工事じゃ」
三つ編み髭爺ちゃんが街の周りを囲む防壁に目をやりながら
「流石にあのままでは、不味かろう」
確かに、防壁には街の中の様子が窺えるほどの、大きな穴が所々に開いていた。
すると、伸び放題髭爺ちゃんが
「んじゃ、わしらはひと仕事してくるから、エリスちゃんはそこの英雄と一緒にゆっくりしとれな」
と言い、台車引き始めると
「私も一緒について行って、お手伝いをしてもよろしいでしょうか?」
エリスが呼び止めると、癖強髭爺ちゃんが立ち止まって
「ん? 昨日でっけえ地割れを埋めてたろ? 休んでなくて大丈夫なのか?」
「はい! 大丈夫です!」
三つ編み髭爺ちゃんが
「エリスちゃんは土魔法が得意じゃったのう」
「はい! 得意です!」
伸び放題髭爺ちゃんが
「んじゃ、エリスちゃんも一緒に行くべ」
「はい! ありがとうございます!」
と言うと、エリスがこっちを見て
「ケビンさん。皆さんのお手伝いに行ってきますが何かあったら直ぐに戻ってきます! なので、決して無理はなさらずここで待っていて下さい」
「ああ、分かった。んじゃ、頑張ってな」
「はい! では行ってきます!」
台車を引くお爺ちゃん達と一緒に、防壁に向かうエリスを見送ると、早速野菜と肉が沢山はいったスープを食べ始める。
うん! やっぱ、美味い!
エリスがお爺ちゃん達の手伝いを頑張ってるんだから、俺は魔物の死骸を片付けるのと魔石の収集を頑張るとしますかね。




