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第75話 ヤマさん、出陣


 カケさんから譲ってもらったレジェンド級のマイナス装備と似た鎧が、昔ドワーフ達の間で流行っていたって話しをしていると


「大ムカデだ! 大ムカデの大群だ!!」


「はっ!? 迷宮の魔物が出て来ちまったのか?」


「おいおい……、いつになったら飯が食えるんだ?」


 などと、魔物の死骸を運んでいたお爺ちゃん兵士達が騒ぎ始めたので、そちらを見る。


 うっわ! でっか!!


 赤みを帯びたオレンジ色の頭、黒くて変に光沢のある胴体、そして太くて黄色い無数の脚……


 ん~、気持ち悪い……


 普通に道端でムカデと遭遇しただけでも物凄い嫌悪感や、恐怖心みたいなモノが湧いて来るのに……


 異様にデカい大量のムカデが土煙を上げて迫って来ている。


 ん~、直ぐにでもここから逃げたしたくなるな……


 などと陰鬱な気持ちになっていると、ヤマさんが


「エリス! 戻ってくるのは明日の昼頃になるだろうから、眠くなったら俺を待たずにケビンと先に寝ちまってて良いからな!」


「はい、分かりました!」


 エリスが元気よく返事をすると


「ケビン!」


「はい」


「お前は無理しない程度に頑張れ!」


「えっ? あ、はい……」


 ん~、確かに俺は戦力として見られてないから仕方ない気もするが……


 なんか、もっと違った感じの声掛けをしてくれたって良いんじゃね?


 すると、カケさんがグルグルと腕を回して肩をほぐしながら


「んじゃ、ヘネシ! ケビンとエリスは置いてくから、お前らはチャンと休んどけよ」


「ああ、すまんな。今回はお言葉に甘えて、そうさせてもらうぞ」


 すると、モエシャ副将が腰に手を当て背を逸らしながら


「あ~、やっとゆっくり出来そうだな~」


 と言い、武器を構えて迎撃態勢を取るお爺ちゃん兵士達を見て


「とりあえず、連中に撤退するよう指示を飛ばしますか?」


 ヘネシ大将にそう言うと、ヤマさんが大きな声で


「おい! ジジイども!! あぶねえから下がってろ!!」


 すると、武器を構えるお爺ちゃん兵士達が


「爺とはなんじゃ~!!」


「わしらの方がお前よりも若いって~の!」


「突っ立ってねえでお前も戦え~!」


 などとヤマさんに向かってヤジを飛ばすと


「ここは俺様に任せて、ジジイどもは休んでろ!」


 ヤマさんが大ムカデの群れに向かって走りだした。


「ヤマだ! ヤマが行ったぞ!!」


「なっ! あいつが戦うのか!!」


「おいおい、このままじゃ不味いんじゃねえか!?」


 ヤマさんが物凄い速さで、次々と武器を構えるお爺ちゃん兵士達の横を走り抜ける。


 すると、急にヘネシ大将が慌てて


「撤退だ! 急いで皆を撤退させろ!!」


 モエシャ副将がどこからか杖を取り出し、急いで空に向かって魔法を放つ。


 耳をつんざくような大きな音が何発も鳴り響き


「撤退! 撤退だー!!」


 と叫び、更にモエシャ副将が緊迫した表情で


「急げー! ヤマが行ったぞ!! おめえら急いで撤退しろー!!」


 すると、お爺ちゃん兵士達が


「なに! ヤマだと!? あっ! もう走ってやがる!!」


「マズイ! 巻き込まれるぞ!」


「ほれっ! モタモタしてね~で走れっ!」


「うっせー! 俺は走るのが苦手なんだ!!」


「しょうがねぇなぁ、ほれ捕まれ!」


 お爺ちゃん兵士達が手を繋いでドタドタとこっちに向かって走って来る中、ヤマさんだけが大ムカデの群れに向かって突っ走って行く。


 お爺ちゃん兵士達が慌てて撤退しているが、大ムカデってドワーフにとってそんなに脅威なのか?


 などと思っていると、ヤマさんが地面を蹴って勢いよく大ムカデの群れに向かって高々と飛び跳ねた。


 うおっ! スッゲー跳躍力だな!! 


 思わず


「やっぱ体を鍛えてるだけあるな……」


 ボソッと声を出すと、エリスが


「いえ、あれは風魔法ですよ」


「えっ? そうなの??」


「はい」

 

 エリスを見ると、軽く首を傾げているが、直ぐにヤマさんの方に目を移す。


 すると、空高く舞い上がったヤマさんが右の拳を高く振り上げ


「おりゃああああああ!!!!」


 雄叫びを上げながら地面に着地すると、勢いよく地面をぶん殴った。


 えっ? ムカデじゃなくって、なんで地面??


 などと思っていたら、大地が激しく揺れて地面が左右に割れた。


 えええっ!! 地面って割れるのっ!! 


 割れた地面に大ムカデが次々と吸い込まれるようにして落ちて行く。


 そんなムカデ達の様子を、上半身裸で筋肉モリモリのヤマさんが眺めている。


「ん~、極限まで体を鍛えれば、拳で地面を割れるようになるのかあ……」


 思わずボソッと声を出すと、エリスが


「いえ、あれは土魔法ですよ」


「えっ? そうなの??」


「はい」


「でも、ヤマさんは地面をぶん殴ってたよね?」


 すると、エリスが言いずらそうな顔をして


「多分ですが、あれは派手な演出ではないかと……」


「えっ! じゃあ、あれは腕力じゃなくって魔力で地面を割ったってこと?」


「はい……」


 ヤマさんを見ると、多分迷宮に向かってだろうと思うが、既に走り出していて、だいぶ遠くまで移動していた。


 ヤマさん……


 あなたのその過剰なまでに発達したムキムキの筋肉……


 何のために存在しているのですか……


 などと思っていると、撤退してきたお爺ちゃん兵士達が


「いや~、今回のヤマは意外と大人しかったな!」


「必死になって走って損したわい!」


「じゃが、今回も地形が変わったぞ」


「あんなもん、後で埋めちまえば良いんだからラクなもんじゃろ」


「いや、それよりも飯はまだか?」


 などとブツブツ言いながら、ヘネシ大将の前に隊列を組んで並び始めた。


 すると、モエシャ副将が


「思ってたほど規模がデカくなくって良かったぜ……」


 ヘネシ大将が髭を撫でながら


「ああ、ヤマが関わると毎回被害がデカくなるからな……」


「何気に南部の方では被害が出てるかもしれねえですよ?」


「ああ、後で確認してみてくれ。もしかしたら街や村の瓦礫の撤去で、南部の兵達の動きが止まってるやもしれんからな」


「へい、了解しやした」


 もしかして、ヤマさんって毎回派手な演出をし過ぎて、魔物だけじゃなくって街や村も破壊しちゃってるのか?


 などと思っている間に、撤退してきた百人近くのお爺ちゃん兵士達が、奇麗に隊列を組んで並び終わる。


 すると、モエシャ副将が


「野郎ども! そろそろ日が暮れるんで、今日の作業は終了だ!」


 と言い、エリスを見ると


「もしケガの治療が必要な場合は、この子に回復してもらえ!」


 エリスが丁寧にお辞儀をすると


「おお! アラクネか! 珍しいな!」


「わしの怪我を治しておくれ~」


 お爺ちゃん兵士達がエリスをみてデレデレし始めるが、ヘネシ大将が咳払いをすると、ピタッと話を止めた。


 おお! 咳払いひとつで、お爺ちゃん兵士達を黙らせた! ヘネシ大将かっけー!


 などと思っていると


「今日はここまでにして皆はゆっくり休んでくれ! ケガの治療が必要な者はエリス殿に回復してもらえ! 以上、解散!」


 ヘネシ大将がそう言うと、お爺ちゃん兵士達がワラワラとエリスの前にやって来て


「膝を擦りむいたんで、治してもらえんかの?」


「んなもん、ツバつけときゃ大丈夫じゃろが! それよりも、わしのこれを見てくれ、腕を斬られて血が出とるんじゃ」


「最近腰痛が激しいんじゃが、それって治せるかの?」


 あっという間に、エリスが大量のお爺ちゃんに囲まれて見えなくなってしまった……


 ん~、しっかり者のエリスなら、お爺ちゃん達を上手くあしらうだろうから、心配ないだろうな。


 などと思っていると、ヘネシ大将が髭を撫でながら近づいて


「ケビン殿は体を鍛える為にヤマと一緒に来たといっとたが、具体的にはどのようにして鍛えるんじゃ?」


「自分は、ヤマさんやエリスが倒した魔物の魔石をエリスに運びながら体を鍛える感じです」


「ふむ、なるほど……」


 すると、ヘネシ大将が一ヶ所に集められた魔物の死骸を見て


「ならば、あそこに集めた死骸から魔石を採取してもらっても構わんし、そこかしこに横たわってる死骸から魔石を採取してもらっても構わんぞ」


 と言い、こっちを見ると


「弱体化の宝玉の効果に負けることなく、頑張って体を鍛えるんじゃぞ」


 目尻の皺を更に深くして励ましてくれた。


「はい、ありがとうございます」


 軽く会釈をすると、モエシャ副将も近づいて来て


「大将。お二人の寝床ってどうします?」


「おお! そうだ! エリス殿は問題ないとしても、ケビン殿にはうちらの寝床は小さ過ぎるからなあ……」


 眉間の皺を更に深くし考え込んでしまったヘネシ大将に


「えっと、寝床に関しては自分で用意できますので、大丈夫です。気を遣って頂き、ありがとうございます」


 すると、モエシャ副将が俺の右手を見ながら


「魔物の装備品はどうせ溶かして材料にしちまうから、集めとけばこっちで買い取るぞ」


 おっ! 流石ドワーフ国で生まれ育ったノーム!


 俺がしている指輪をさりげなく鑑定したみたいだな……


「ありがとうございます。質の良い装備品は自分で使うかもしれませんが、それ以外の物は買い取ってもらうと思いますので、そん時はよろしくお願いします」


 すると、ヘネシ大将が髭を撫でながら


「もしや、ケビン殿は装備品の鑑定が出来るのか?」


「ええ、前に武器屋で働いてたんで、そん時に店主から色々と教えてもらいました」


「そかそか、まあ良い装備品があったら気にせず持って帰ってもらって構わんよ」


 と言い、一度大きく息を吸うと


「さて、すまんが、そろそろお暇させてもらうよ。何かあったら遠慮なくうちの者に言ってくれて構わんからな」


「はい、ありがとうございます」


 ヘネシ大将が片手を上げて街の方へ歩いて行くと、モエシャ副将が


「ふう~、やっと休めるぜ」


 と言い、腰に手を当てると


「流石に大将よりも先に休む訳にはいかねえからなあ」


 と言って、軽く辺りを見回し


「一応、うちの連中を交代で見張りに立たせとくから、夜は無理せず休んどけよ」


「はい、ありがとうございます」


「おう、じゃあな」


 と言い、街の方へ歩いて行くモエシャ副将を見送っていると


「おお! ありゃあ、やっぱ()()()()()()()()()()()()()じゃねえか? 懐かしいのう!」


「じゃが、あれは昔流行ったヤツよりも性能が良さそうじゃな?」


「ああ、昔のは【生命力吸収】の宝玉なんてなかったもんな?」


 などと話しながら、お爺ちゃん達が近づいて来ると


「おめえさんは英雄に憧れてるのかい?」


「今時の若者にしちゃあ、珍しいの~」


「なんでも、エリスちゃんの話しじゃあ、ついさっき、その鎧を着始めたらしいじゃねえか?」


 ん? エリスにケガの回復をしてもらったお爺ちゃん達かな?


 と思い、エリスの方を見てみると、回復待ちで並んでいるお爺ちゃん達が長い列を作り、その周りで回復済みのお爺ちゃん達がエリスを眺めながら酒盛りを始めていた。


 うわ~、あんなんされたら集中して魔力操作とかしずらそうだな……


 などと思ってエリスを見てみると、ニコニコしながらお爺ちゃん達のケガを治していた。


 ん~、なんか全然平気そうだな……


 あれ? でも既に結構な数のお爺ちゃんが元気に酒盛りをしているってことは、それだけ回復魔法を使ったってことだよな?


 エリスの魔力ってまだ大丈夫なのか?


 ちょっと、魔石の回収を急いだほうが良さそうだな……


 などと思いながら、お爺ちゃん達に


「ええ、ついさっき、カケさんからこの鎧を譲ってもらいましたが……、えっと、皆さんどうされたんですか?」


 すると、少し癖の強いウネウネした髭を胸元まで伸ばしているお爺ちゃんが


「いやね、おめえさんがエリスちゃんの為に魔石を集めるって聞いたんでな」


 と言うと、胸元まである長い髭を三つ編みにているお爺ちゃんが


「しかも、その『英雄になれるかもしれない鎧』を着始めたばかりだとも聞いてな」


 そして、普通に髭が伸び放題のお爺ちゃんが


「どうせ、まともに動けないじゃろうから、わしらも魔石を集めに来たんじゃよ」


 えっ? てっきり冷やかしに来たのかと思ったら、このお爺ちゃん達……


 スゲー良いお爺ちゃんじゃん!


 などと思っていると、若干酔っぱらった感じのお爺ちゃん達がこっちに集まり始めると


「おい! そこの英雄! はえ~とこ魔石を集めっぞ!」


「エリスちゃんが頑張ってんだ! 呑んでなんていられね~!」


「ケガは治してもらったし、酒も入って良い感じじゃから、エリスちゃんの為にもうひと頑張りしちゃうぞい!」


 お酒が入って上機嫌になったお爺ちゃん達と一緒に、俺も魔石を集め始めるのであった。


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