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第61話 獅子と兎


「獣人を縛ったら蟲を連れてここからずらかるぞ!! それまでに奴の身ぐるみ剝がして来いや!!」


 お頭が大声で怒鳴ると、俺に背を向け獣人が捕まっている方に歩いて行く。


 それと同時に獣人を取り囲んでいた密猟者達が一斉にこっちに向かって走って来る。


 おっ? なんか良い感じに密猟者達の意識が完全にこっちに向いたぞ。


 俺が杖を持っていたからなのか、密猟者達は俺が魔法使いだと勘違いしているらしく、お頭が【魔法無効】の杖を発動させると、密猟者達はみな勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。


 なので、密猟者達から恐れをなして逃げるような感じで後ずさりると


「おらあ! 逃げんなあ!!」


「まてごらあ!!」


 密猟者達が嬉々とした表情を浮かべて走って来る。


 おっ! いいね! これなら密猟者達を獣人達から引き離せるぞ!


 にしても、魔法が使えない人でもレア装備があれば誰でも魔法攻撃が使えるようになるってのは常識だと思ってたんだが、世間的には違ったのか? 


 密猟者達をこっちに引きつけながら後ろに下がり続けていると、耳から顎にかけて斬られたような傷跡のある密猟者が


「魔法が使えないなら、その杖で殴ってこいや!」


 と言い放ち、隣にいた腹回りに肉を蓄えすぎて動きが鈍そうな密猟者が


「そりゃあムリだろ! 魔法使いは腕力がねえからな!!」


 そして、性格の悪そうな細身の密猟者が高笑いしながら


「あいつらから魔法を取ったらただの雑魚だからな!」


 ん? あっ! そっか! あの密猟者達が俺を見て「魔法使いだ」って言ったんで、他の密猟者達も勝手に俺の事を魔法使いって勘違いしてるのか!


 まあ確かに魔法使いは【魔力増加】だったり【魔力回復】といった宝玉の埋め込まれたレア装備を持ってることが多いもんな。


 だとしても、こんだけの人数がいれば俺の杖に埋め込まれた宝玉が【麻痺】だって事に気づきそうなもんなんだが……


 とりあえず、魔法使いのフリをして密猟者達を集めるか。


 武器を構えてニヤニヤしている密猟者達と一定の距離を保ちながら後ずさる。


 お頭が使ってた【魔法無効】の杖の宝玉はそれほど効果は高くはなかったので、効果時間は精々五分程度で有効範囲もそれ程広くはないはずだ。


 なので、密猟者達から五分間逃げ回るか、密猟者達と一緒に俺も杖の有効範囲から出てしまえばここにいる全員を大人しくさせることは容易なんだが、あえて杖の効果を発動させずに何度も杖を振りかざし、あたかも魔法が使えないフリをして後ろに下がる。


「ぎゃあっはっは! あいつ魔法が使えなく焦ってぞ!」


「魔法が使えない魔法使いだなんて、かわいそうだな!」


 後ろに下がりながら獣人達の方を確認すると、金髪の獅子は既に縄で拘束されていて、うさ耳が二人の密猟者に腕と足を縄で縛られている最中だった。


 残ってる密猟者はうさ耳を縛ってる二人とその作業を腕を組んで見下ろしてるお頭だけか……


 引き付けた密猟者達は皆【魔法無効】の有効範囲から外れただろうし、そろそろこいつらを大人しくさせて獣人達を助けに行くか。


「おっ! 急に立ち止まったぞ?」


「なんだあ? もう逃げるのは諦めたのか?」


 俺を取り囲もうとしていた密猟者達に杖の効果を発動させると、全員その場に倒れてピクリとも動かなくなったので、即座に獣人達の方へ走って行く。


 すると、うさ耳を縛っていた密猟者達が


「えっ!? みんなぶっ倒れたぞ?」


「お頭! 魔法は使えくしたんですよね?」


 お頭が腕を組んだままこっちを見ると


「はあ!! あいつら杖の有効範囲の外まで逃がしちまったのか!」


 腰に手を当て項垂れると


「ホント馬鹿ばっかで使えねえなあ……」


 と言い、うさ耳に近づき長い耳を掴んで顔を上げさせると


「あいつはお前らの差し金なのか?」


 うさ耳がチラッと俺を見て


「知らない! そんな事よりレオ様を解放しろ!」


 お頭がうさ耳の顔を地面に叩きつけると


「おう! おめえはこいつらを助けに来たんだろ!」


 うさ耳の頭を踏みつけると俺を睨みながら


「こいつらを痛めつけられたくなかったら、大人しくしてろ!!」


 うさ耳が痛みに耐えているのか歯を食いしばって唸っている。


 そんな状況なのに、金髪の獅子は身動きせずに地面に横たわったままだった。


 やはり深手を負ってしまってるのかもしれないな……


 今、助けるからもう少し待っててくれ。


 走りながら指輪に杖を収納すると【失認しつにん】と【気配遮断】の宝玉が縫い付けられたローブを取り出す。


 走りながら袖を通して襟元の紐を結ぶ。


「えっ??」


「消えた??」


 うさ耳を縛っていた密猟者の二人が動揺していると、お頭が辺りを見回し


「どこ行った! こいつがどうなっても良いのか!」


 うさ耳をさらに足で踏みつける。


 走りながら指輪から【麻痺】のダガーを取り出すと、まずはお頭を斬りつける。


「え?」


「お頭?」


 密猟者の二人が突然倒れたお頭に驚いているが、構わず彼らも斬りつける。


「え? え?」


 うさ耳が突然倒れ込んだ密猟者を見て声を上げるが、すぐに金髪の獅子の方に顔を向け


「レオ様! レオ様! 大丈夫ですか!」


 金髪の獅子は地面に横たわったまま荒い呼吸を繰り返すだけで返答がない。


 うさ耳が器用に体を動かし腕の縄をほどくと


「レオ様! レオ様!」


 叫びながら足の縄をほどき拘束から逃れ


「レオ様! 大丈夫ですか! しっかりして下さい!」


 レオと呼ばれる金髪の獅子の縄をほどき始めた。


 うつ伏せで地面に横たわる金髪の獅子を見た感じ、出血はしていないので負傷しているって訳ではなさそうだが、呼吸は荒く顔色も良くなかった。


 うさ耳の方は口と鼻から乾いた血の跡があり、腕や足には軽い切り傷だったり打撲なのか赤く腫れた箇所が幾つか見られた。


 なので、指輪から回復薬を取り出し


「とりあえず、これを使ってくれ」


 うさ耳に差し出すが


「レオ様! レオ様!」


 俺と回復薬の方には目もくれず


「なんで……、どうして……、こんなことに……」


 泣きながら金髪の獅子の縄をほどいている。


 あっ! ローブを着てるから俺が見えていないのか!


 ローブの襟元の紐をほどいて【失認しつにん】と【気配遮断】の効果を解くと


「えっ!?」


 うさ耳が素早い動きで金髪の獅子を守るように身構え


「何者!!」


 俺を睨む。


 回復薬をうさ耳に差し出し


「俺はケビン、人族だ。君たちを助けに来たんだが、これ回復薬だから使ってくれ」


 うさ耳が回復薬と俺を交互に見ながら


「私はラピ」


 回復薬を受け取ると


「えっ! 魔法!!」


 俺の後ろの方を見て叫ぶ。


 振り返ると両手で抱えるほどの大きな火球が三つこっちに迫って来ていた。


 即座に剣を抜き、踏み込みながら一つ目の火球を斬り下ろし、斬り上げながら二つ目の火球を斬ると、三つ目の火球は斬り払って消滅させる。


 魔法を放ったと思われる密猟者が杖を持って唖然としていたので、すぐさま指輪から【麻痺】の杖を取り出し効果を発動させる。


 ん~、あっちで倒れてる密猟者って獣人の二人に殴られるか蹴られるかしてぶっ飛ばされてた連中だよなあ?


 振り返ると、金髪の獅子に覆いかぶさっていたうさ耳が、目をパチパチさせながら


「魔法を……、斬った?」


 なぜか困惑している様子だったが


「念のため君たちが倒したあっちの方で倒れている密猟者達も大人しくさせて来るから、ちょっと行ってくるね」


「はっ、はい! よろしくお願いします」


 ん~、まさかターニャとやった修行がこんな形で役に立つとはなあ。こうして修行の成果が実感できるとやっぱ嬉しいな。


 魔法攻撃を仕掛けて来た密猟者に近づき地面に転がった杖を手に取る。


 【火属性増加】の宝玉が埋め込まれたレア装備だったので、この密猟者は魔法使いだったようだ。


 ん~、中級程度の魔法が使えるのなら、密猟なんかしないでもっと違う事に活かせば良いのになあ。


 などと思いながら、岩壁付近で横たわっている密猟者達に近づいて行くと、明らかに気を失っているフリをして様子を窺ってると思われる密猟者達が何人もいたので、すぐさま杖を発動させて麻痺させる。


 とりあえず、これでここに集まってた密猟者達を皆大人しくさせる事が出来たんで一安心だな。


 にしても、金髪の獅子もうさ耳も密猟者を余裕でぶっ飛ばせるくらい強いのに、何で捕まってたんだ?


 それと、見た感じだと二人はそれほど歳は離れていなさそうなのに、うさ耳のラピが金髪の獅子の事をレオ様って呼んでるのも気になるんだよなあ。


 ん~、後はまだ見ぬ捕らわれた蟲族の事も気になるしなあ。


 とりあえず、獣人の二人の様子を見たら次は蟲族かな。


 そんな事を考えながら獣人の方へ歩いて行くと、ラピがレオを抱きかかえて 


「レオ様、少しずつでも構いません……」


 泣きながらレオに回復薬を飲ませていた。


「レオ様、頑張って……、飲んでください」


 ラピが回復薬をレオの口に優しく注ぐが、口の横から注いだ量だけ回復薬が流れ出てしまっていた。


「えっと……、彼女はどんな状態なの?」


「分かりません! 急にこんなふうになってしまったんです!」


 ラピがかなり強い口調で答えるが


「あっ! すいません……」


 すぐに謝って来た。


 まあ、それだけ追い詰められて焦ってるんだろうな。


「さっきまで二人は密猟者と戦ってたけど、そん時に何かされたのかな?」


「違います! 彼らが集まってるこの場所を見つけたので『豪気』の増す腕輪アームレットをはめて襲撃しようとしたとたんに、レオ様の体調が悪くなってしまい捕まってしまったのです」


 レオの右腕には、色とりどりの宝玉が散りばめられた煌びやかなアームレットが装着されていた。


「そして、レオ様は私を逃がすために無理して戦ってくれていたのです……」


 確かにラピの言う通りアームレットには【気力増加】の宝玉が埋め込まれてはいるのだが、他にも【毒】【腕力低下】【体力低下】といった明らかに装備者を弱体化させる宝玉も埋め込まれていた。


 えっ!? こんなモノを装備してたのに密猟者達をぶん殴ってたのか! やっぱ獣人ってスゲーな!! 


 残りが少なくなった回復薬を手に持ちながら説明してくれたラピに


「とりあえず、そのアームレットを外せば彼女の体調は戻るから心配しなくても大丈夫だよ」


「えっ? そうなんですか!」


 頷きながら追加の回復薬を取り出し


「もう残り少ないでしょ。はい、これ渡しとくよ」


「あっ! ありがとうございます」


 よし、これで獣人達はもう大丈夫だろうから……


 岩壁に出来た洞窟に目を向け


 次は蟲族だ。


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